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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2020/11/02 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.78: 金融政策決定会合と月例経済報告


今回は日銀金融政策決定会合(10月29日)と内閣府月例経済報告(10月23日)を紹介します。

日銀の金融政策決定会合は定例で年8回開催され、うち4回(1月、4月、7月、10月)は経済・物価情勢の展望(通称「展望レポート」)も公表されます。

(現状)
・全体:内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が再開するもとで、持ち直している
・個人消費:飲食・宿泊等のサービス消費は依然として低水準となっているが、全体として徐々に持ち直している
・設備投資:減少傾向にある
・住宅投資:緩やかに減少している
・公共投資:緩やかな増加を続けている
・輸出:増加している

(見通し)
・全体:経済活動が再開し、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調を辿るとみられる。もっとも、感染症への警戒感が残るなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される
・個人消費:持ち直しを続けるとみられるが、そのペースはかなり緩やかなものにとどまると予想。その後は、新しい生活様式への適応が進み、感染症の影響が和らぐもとで、雇用者所得の改善にも支えられて、増加基調が次第に明確になっていくと考えられる
・設備投資:当面、減少傾向が続くとみられる。もっとも、グローバル金融危機時のような大規模な調整には至らず、感染症の影響が和らぐなかで、企業収益の改善に伴い、緩やかな増加基調に復していくとみられる
・公共投資:着実に増加したあと、高めの水準で推移する
・輸出:財については、当面、自動車関連を中心に増加。その後は、世界的に感染症の影響が和らぐにつれて、資本財なども含め、幅広く増加。サービス輸出であるインバウンド消費は落ち込んだ状態が続くとみられるが、その後は、入国制限が徐々に緩和されていくのに伴い、回復していくと予想

(経済のリスク要因)
・新型コロナウイルス感染症による内外経済への影響
・企業や家計の中長期的な成長期待
・金融システムの状況

現状判断は「持ち直しつつある」から「持ち直している」へと、若干ながら強めになりました。とくに、輸出に関し明確に「増加している」とされました。先行きについて大きな変化はありませんが、財の輸出とサービス輸出の書き分けなど、表現が少し丁寧になった印象です。

(実質GDPと物価の見通し)
展望レポートでは、金融政策を決定する政策委員会メンバー9人による実質GDPと物価の見通しが計数で示されます。

実質GDPについて、2020年度は前回ー4.7%からー5.5%に下方修正、2021年度は+3.3%から+3.6%に上方修正、2022年度は+1.5%から+1.6%に微修正されました。物価について、2020年度は-0.5%から-0.6%へ、2021年度は+0.3%から+0.4%へ、2022年度は+0.7%見通し不変でした。

実質GDP水準は2021年度には2019年度水準に戻らず、2022年度に漸く戻るかどうかという見通しです。物価は+2%の目標に程遠い状況が続きます。

次に月例経済報告。

(現状)
・全体:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる
・個人消費:持ち直している
・設備投資:弱い動きとなっている
・住宅建設(投資):弱含んでいる
・公共投資:堅調に推移している
・輸出:持ち直している
・輸入:このところ弱含んでいる

(先行き)
・全体:感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待される。ただし、国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある
・個人消費:持ち直しが続くことが期待される
・設備投資:当面、慎重な動きが続くと見込まれる
・住宅建設(投資):弱含みで推移していくと見込まれる
・公共投資:堅調に推移していくことが見込まれる
・輸出:持ち直しが続くことが期待される
・輸入:持ち直しに向かうことが期待される

個人消費の表現から「一部に足踏みの動きもみられるが」が削除された一方、輸入が「このところ弱含んでいる」とされましたが、全体としてほぼ不変です。

米国とユーロ圏の7~9月期のGDPが公表され、前期比年率でそれぞれ+33.1%、+61.1%と大きな伸びを示しました。しかし、4~6月期の落ち込みが余りに大きかったため(米国-31.4%、ユーロ圏-39.5%)、1~3月期の水準には戻っていません。以前何度か「5割減後の5割増では元に戻らない」と書いた現象がまさに起きています。米国を例に取ると、68.6(100-31.4)×1.331=91.3で、100に届きません。10~12月期について、米国では財政支出の停滞、欧州では感染症再拡大から、強い回復は期待薄です。冴えない状況が続きます。

さて、今週は米国大統領選挙一色になると思います。事前世論調査に沿った結果が出るのか、開票がどこまで混乱するか、仮にバイデンが勝つ場合トランプがどうするか、全く読めません。JDさんの解説の連投に期待します!

菅総理も国会の論戦に臨み始めました。日本学術会議のように、正直言って実態として余り意味があると思えないことでケチがついた印象を持ちます。手を抜いて良いところは流し(=肩に力を入れて推薦を蹴るまでもなく)、大事なことに精力を傾けてほしいという印象を持ちながら眺めています。

それとやはり気になるのは、冬を迎え感染症がどうなるかということでしょうか。北海道の動向が心配です。

それではこの辺で。

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