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The Gucci Post [国際政治・経済・金融 × プロフェッショナル]

2020/06/22 06:30  | by Konan |  コメント(1)

Vol.61: 日銀決定会合+気候変動問題(4)


今回は、15、16日に開催された日銀金融政策会合と気候変動問題(4回目)を取り上げます。

日銀は最近臨時会合が増え、定例会合の有り難味が失せた気もします。そのうえで、例によって景気判断と政策について簡単に紹介します。

(現状)
全体:内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にある
個人消費:飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している
設備投資:増勢の鈍化が明確となっている
住宅投資:緩やかに減少している
公共投資:緩やかに増加している
輸出:大幅に減少している

(当面の見通し)
経済活動が徐々に再開していくとみられるが、当面、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続くと考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、ペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくとみられる

(リスク要因)
・新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点についてのきわめて大きい不確実性
・企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないか
・金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるか

印象として、当面の景気に関し厳しくみる一方、先行きについて少し期待感が込められ過ぎた気がします。他方、リスク要因については納得感があります。とくに金融システム面への言及に注目しています。今回の危機は、リーマン危機のような金融発の危機ではなく、感染症を契機とした実体経済の落ち込みが特徴で、今のところ金融セクターが痛んでいる訳ではありません。しかし、銀行融資焦げ付きなどの問題が生じ金融システムが痛んでくると、金融が経済を支えられない悪循環に陥ります。この可能性について注意が必要です。

政策面では、長短金利操作、ETFなど資産買入れ、企業等の資金繰り支援、金融市場安定のための円・外貨供給などの枠組みは維持されました。このうち、企業等の資金繰り支援について、従来の75兆円から110兆円に総枠が拡大されました。企業等の資金繰り支援の大事さについては、このコーナーでも何度か指摘しました。その意味で正しい政策です。ただ、上記のように金融システム安定の観点から悩ましい面があることも否定できません。今後、難しいかじ取りが続くと思います。

さて気候変動問題の4回目。今回は先進国に焦点を絞りその政治的側面について触れます。

気候変動問題では明らかに欧州が先行しています。昨年末発足したEUの新体制も、「Green Deal」と銘打って政策の中核に据えています。日米から見ると?という感じもあります。欧州はなぜここまで前のめっているのか?理由は2つあると思います。

気候変動問題は宗教と似た面があります。キリスト教徒やイスラム教徒に「なぜキリスト教、イスラム教を信じるのか」と聞いても、その答えは非キリスト・イスラム教徒の腑に落ちません。これと同様です。欧州の多くの人は気候変動問題を深刻に思い、対応の必要性を信じています。とくに若い層、学歴が高い層はそうです。グレタさんが金曜日に学校を休んで活動を行ったことに関し、日本人の私は「学校を休んでも怒られないのか」などと思いました。しかし、欧州の大人たちは「とても良いこと」と受け止めます。

この「思い」は投票行動に反映されます。昨年の欧州議会選挙に関し日本では極右政党の動向に注目が集りました。しかし、実際に起きたのは極右政党の躍進と言うよりグリーン派の大躍進でした。これは欧州の中核に位置するメルケルやマクロンにとり心地良いことです。EUは2つの世界大戦への反省から生まれました。とくに第2次大戦の契機となったファシズムの躍進は最も避けたいところです。その躍進を抑えてくれたグリーン派に感謝していると思います。

しかし政治では、感謝だけでは足りず実利が必要です。グリーン派のモメンタムを維持し高めるための政策が必要です。単純に言えば、欧州の極右化・ポピュリスト化を防ぐため、グリーン・ディールが必要とされる訳です。これが第1の理由です。

第2の理由は欧州経済や産業が冴えないこと。日本も五十歩百歩の面はありますが、欧州にはGAFAM等世界を席巻する企業が殆どありません。グリーンを起爆剤に欧州産業を復興できないか?気候変動問題対応を他国に先んじて進め、欧州の制度や規制を世界標準にすることが出来れば、欧州企業に有利に働きます。例えば、トヨタが得意(不得意)でベンツが不得意(得意)なものをブラウン(グリーン)と定義するなど。この点で、欧州が先行するタクソノミー(グリーンの定義)作りは、日本にとって油断大敵です。

このように、気候変動問題は綺麗ごとではなく、極めて政治的な話しです。トランプ大統領は、この点をよく理解したうえでパリ協定を離脱したのかもしれません。では、日本はどう立ち回るべきか?

気候変動の問題設定(温室効果ガスが増えると気温が上昇し、とんでもないことが起きる)が正しければ、グリーンを促進しブラウンを無くす方向での行動が合理的です。ただ、この問題設定が正しい保証はなく、仮に正しいとしても、別の事情(例えば太陽の黒点の動き、火山の大噴火など)で気温は上昇しないかもしれません。しかし、現実には先進国の中でこの問題設定を信じる人(国)が増えています。米国でも民主党の基盤である西海岸・東海岸の人たちや企業はこの方向を向いています。こうした状況下、ブラウンを促進する方向で動くコストが極めて高くなりつつあります。石炭火力発電に融資する銀行はNPOから抗議を受け、その対応コストやレピュテーションリスクを考えると、最早算盤に合いません。従って、経済合理的に考えても、気候変動の問題設定に乗って動くことが正解です。そうであれば、タクソノミー作りに日本も入り込み、日本に不利な内容を削ることも大事になってきます。読者の方には納得のいかない方も多いと思いますが、事態はここまで進んでいると考えた方が良いと思います。そして、ぐっちーもそう思い生前この問題に警鐘を鳴らしていたと思います。

今回はこの辺で終えます。

先週は北朝鮮の動き、中国とインドの衝突、国内では河井夫妻の逮捕(安倍総理は求心力を維持するため解散風を吹かせ始めましたね)など、様々なことが起きました。BLMの勢いも増しています。そうした中で都知事選挙も告示されました。全てが新型コロナウイルス感染症に起因すると言えないにしても、2020年が大きな転換点になりつつある気がしています。

そうした中、JDさん、Saltさんの二枚看板を持つこのGucci Postの存在意義も増しているように思います。私の連載は付録のようなものですが、細々と書き継いでいこうと思います。

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One comment on “Vol.61: 日銀決定会合+気候変動問題(4)
  1. X より:
    慧眼の至り

    > 気候変動問題は宗教と似た面があります
    なるほど、と膝を打ちました。100%同意致します。
    長期的な結果も同様になると思います。放っておくと、宗教戦争、共産革命に次ぐ第3の大愚行になります。後世、スターリン 毛沢東 ポルポト Green dealと並び称されるでしょう。
    対策として、日本も問題設定に乗って動くと言うのも賛成です。推奨したい対応策は下記の二つです。

    1.中国を巻き込む。本当に環境を思うなら絶対必須ですが、何故か活動家は嫌がりますね。
    まず中国をタクソノミー作り等、全てにに巻き込みます。もし中国が真面目に乗ってくれば、Green Dealが中国に乗っ取られる事になるので、欧米環境派vs中国環境派の醜い内ゲバが始まります。不真面目に乗ってくればGreen dealが骨抜きになるので、害が無くなります。
    もし欧州がが中国を排除した場合、日本が中国と組んでタクソノミーを作れば良いです。こちらをEU以外で標準化すれば(マイルドにしかならないので)よほどマシなものになるでしょう。
    もし中国と作ったタクソノミーなぞ一切認めない、排除すると言う態度に欧米が出たら、日本はさっさと寝返れば宜しい。欧米が政治経済軍事で全面的に中国と対決する事になるので、日本は不利なタクソノミーに縛られますが、(中国と単独で対峙する)コスト節約が不利益を上回ります。
    2.問題設定に乗った上で、欧州と同じ手法によって対策の重点をずらす。具体的には、狂気の破壊活動や恫喝まで伴う執拗かつヒステリック(しかし欧州の同様の活動家の活動の範囲を超えない程度の)な抗議、企業の意思決定への介入運動により、太陽光風力電気自動車を悪魔化する。科学的裏付けはGreen Deal自体より豊富なので、活動のノウハウさえあれば難しくはありません。これだけでGreen Dealはだいぶ解毒されるでしょう(彼らが別のものにフォーカスし出したら、そっちを悪魔化します)

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