2020/05/11 06:30 | by Konan | コメント(3)
Vol.55: 振り返って
2月10日のVol.42で新型コロナウイルス感染症に初めて触れて以降、ほぼ毎週関連した内容を書いてきました。今週は休載(元々このコーナーは月2回掲載です。還暦も近いので、若いJDさん、Saltさん、編集部さんのようにはいきません…)予定でしたが、これまで書いてきたことを少し振り返ろうと思い直しました。景気、感染症対策、経済対策の3点に分けて記します。
景気について、当初の短期終息・V字回復期待は消えました。IMF世界経済見通しに代表されるように、
・今年は、年後半から回復が見込まれるものの、リーマン危機時を上回るマイナス成長
・来年はプラス成長だが、下振れリスクも大きい
・感染症の終息が遅れること、あるいは第二波が襲うことがリスク要因
との見方がコンセンサスになりつつあります。
他方で、株式市場を見ると、大幅な下落の後、米国で半分、日本でも4割ほど回復し、感染症より米中摩擦のような問題に反応し、経済活動再開への期待も高まりつつあります。
経済はSaltさんに全幅の信頼を置きお任せしていますが、以下の点は大事に思います。
(プラス面)
・全ての業種が感染症で打撃を受ける訳ではない。旅行、外食、エネルギー関連業種とその他では様相が異なる。恩恵を受けている業種すらある。個別銘柄への投資を行われる方には、良い局面も期待できます。
・中央銀行の政策対応は、リーマン危機時をも上回り盤石。市場流動性枯渇への心配は不要です。
・ワクチン開発や治療薬承認も進展。オックスフォード大学での研究の進展など、期待は膨らみます。
・中国では、V字に程遠いと言えどもそれなりに回復。予断は持てませんが、「先達」の動向を観察できるのは良いことです。
・在宅勤務など新たな生活形態がビジネスチャンスを生む余地も大きい。
(マイナス面)
・第二波の恐れはなかなか消えない。この週末も、韓国のクラブを介したクラスター発生が話題になりました。日本でも、(第一波より低い)第二波到来がむしろメインシナリオになりつつある雰囲気です。
・一国内での活動が復活しても、国を跨ぐ動きはなかなか戻らない。「入国制限」完全撤廃にはかなりの時間と勇気が必要です。ニュージーランドの対応が象徴的。
・影響を受けた企業はかなり追い詰められている。借入れで何とか凌いだとしても、その返済負担が残る間は新規投資など儘ならない。
・個人も貯蓄を失い、感染症終息後も消費を元に戻すには時間を要する。
次に感染症対策。このコーナーでも、Xさんと朝ゆでたさんが激論を戦わせました。
いろいろと考えることはありますが、
・各国や地域の広義の「医療体制」(「病院」のキャパシティに加え、人材、院内感染防止態勢、ホテル等病院以外の隔離施設、保健所など関連行政、検査などを含めて)の崩壊が起きると致命的な事態を迎えること
・医療体制が強靭であればあるほど、経済活動を緩める余地があること
・どうも日本の医療体制は強靭とまでは言えなそうであること
・このため、(他方でロックダウンのような強制的措置を取れないこともあり)自粛という微妙な対策を長く続けることにより閾値を超えない戦略で臨んでいること
などが認識されてきたのでしょうか。医療体制を短期間で強靭化することは難しく、当面は体制の限界を前提に経済活動を制約する必要があります。他方で、以前も書いたように「新たな形での大きな政府」の発想に基づき、医療体制強化を図っていくことが求められます。
さて、感染症対策と経済活動の自由の間にはトレードオフの関係があります。逆の言い方をすれば、経済活動を制約することが感染症対策になります。経済を安心して止めるには「補償」(失業保険なども含めて)が必須で、後でも触れます。ところで、この点に関連して、パチンコが良く話題になります。多数決を取れば、多数が開業を続けるパチンコ店や店に通う人を非難する構図と思いますが、私は2つの(正反対の)感想を持ちます。
まず、パチンコ店が問題であれば、風営法を改正し「特措法上の指示に従わないパチンコ店の営業免許を停止する」ことを可能にすべきと思います。風営法と特措法の目的は異なり法体系的に成り立たないと批判されるでしょうし、人権派の法律家には暴論でしょうが、やってやれない話でもないように思います。
他方、パチンコ店で感染症が広がった(クラスターが発生した)例を私は知りません。少し似た例として、学校休校後も暫く学習塾は開校され、現に私の子供は通いました。塾で感染が広がった例を知りません。更に言えば、私は今でも週2、3回通勤していますが、通勤電車で感染が広がった例を知りません。映画館も同様です。こうした例から、真に感染が広がりやすい条件を絞り込むことが出来ないものでしょうか?学校と塾の大きな違いは、塾では先生以外喋らないことです。通勤電車での会話も(感染症以前から)殆どありません。パチンコ店も(私はパチンコをしませんが)声は出さないのではないでしょうか?
上記は単なる素人発想で、根拠はありません。ただ、経済活動を早期に再開するためには、マスク着用の慣習化・通年化に加え、「3密」「接触」と単純化せず、真にリスクが高い行為を絞り込むことも必要な気がしています。
最後に経済対策。かつて白川総裁時代の日銀が”Too little, too late”(小さ過ぎ、遅過ぎる)と批判されたことが重なってきます。連休中に普段みないワイドショーをみていた際、安倍政権を最も支持するはずのフジテレビ(フジサンケイグループ)で、坂上忍とヒロミが「安倍総理にスピード感という言葉を二度と使って欲しくない」と吐き捨てるように語った姿に少し驚きましたが、私も同感です。
令和2年度予算成立前に補正予算を組めないということで一次補正案が遅れ、一人10万円への方針変更で更に遅れたことは、既にこのコーナーでも批判しました。そして、多くの人が気付き、野党が法案まで出している「家賃」「学生」「地方自治体支援」に関し、漸く二次補正で取り上げようとする政権の動きは、余りに遅く鈍感に過ぎます。この間、唯一評価するのは、国税庁が行った「飲食店に酒類の持ち帰り販売を認める短期免許付与」です。偶々知っている国税庁高官は「既に酒販免許を持つ業態から反対されたが、何とか調整した」と話していました。当初免許交付に手間取りましたが、10日間ほどで実際に免許が出たようです。これでもスピード感があるとは言えないかもしれません。ただ、安倍政権の標準と比べ、世の中のニーズを汲み上げ対応を実現した点で、良い話しと思いました。付け加えるとすれば、税務署が好きな人はいません。しかし国家の根幹のひとつである徴税機能維持のため、税務署の態勢が他の行政機関対比維持されていることが功を奏しています。行政改革が大事な一方で、何某か「中庸」を探る努力も必要なことの好例と思います。
話しを元に戻すと、予算には常に財務省が壁となります。5月6日までの緊急事態宣言対応が一次補正、延長対応が二次補正と屁理屈をつけようとするかもしれません。また、良い提案はしてもその実現に無力な野党も褒められません。ただ、森友・加計問題以降、安倍内閣が国民の声を無視し続け、野党を軽視し続けてきたことが、この段階で如実に表れてしまったと受け止めます。「補償」という言葉の厳密な定義に拘り過ぎて思考停止になっていることは、前回批判しました。
こうした政策立案の遅さに加え、実行の遅さも致命的です。IT化の遅れに加え、無謬を重んじる日本のやり方、これは日本らしさでもあり強さの源泉にもなり得ますが、流石に過度に丁寧だったということと思います。企業倒産や廃業は既に増え始めており、6月までにかなりの数に上ると予想します。
次回以降は、感染症以外の話題に広げていければと思い、今回振り帰ってみた次第です。最後にTwitterでも紹介したお気に入りのフレーズをふたつ。
Be strong, be kind. (ニュージーランド・アーダーン首相)
Stay at home, stay in touch. (英国医療関係者)
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3 comments on “Vol.55: 振り返って”
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朝ゆでたさんのコメントは最初の1、2回くらいでやり取りをしても意味が無いと思ったので、後は全く読んでいません。他の方からの質問やWebでのニュースやTwitterなど興味のあるものがあった時にコメントしていただけで激論をした気持は特に無いです・・・もしそれで議論が成立していたならば、それは全て朝ゆでたさんの功績です。
既に現時点ではある程度結果が出ていますので、何が正しかったかは明らかでしょう。武漢では昨年11月ごろより感染が始まっていたので、中国が公式に認めた1/22以降に入国禁止しても余り意味は無い、PCR検査は人口当たりの件数が多いほど感染者数、死亡者数が多いので、疫学的状況把握以上の意味は無い(韓国などあれだけ検査や人権無視の施策をして人口当たり死亡者数は日本以上ですから、ほぼ無意味な検査能力です)、非常事態宣言は、宣言及び解除の時期の遅い早いの議論は有るにせよ概ね適切に事態をコントロールできている、と言うのが事実です。
日本の方針で唯一大きなミスを挙げるならば、欧州からの入国者を3月上旬に、法律を無視してでも、即時全面強制隔離対象にすべきでした。日本の3月下旬から4月前半の感染ピークは明かに欧州帰国者から持ち込まれたもので、ウイルスの系統分析からも明らかです。イタリアで感染爆発した際に即時強制隔離対象にしていれば、有名芸能人の何名かも亡くならずに済んだかもしれません。世界の問題の発生源は18世紀から変わらず、中国でもロシアでもなく、欧州なんですよ。変化が激しいので、良いものも数多く発生しますが、99%は外れの害悪です。電気自動車、太陽電池、ポリティカルコレクトネス・・・欧州が飛びついている間は、99%の確率で害悪と見做して距離を置くのが正解で、時間を置いて結果を見てから受け入れるのが吉です。
ただ日本の対策で理想論を言うなら、自粛や渡航制限、非常事態宣言はせず、60歳以上を全員自主自粛及び隔離にするのが最適解でした。それで死者は現状以上に最小化でき、経済的ダメージは飛躍的に小さくなります。もちろん、今の日本では未成年を隔離できても、60歳以上の行動制限はまず無理でしょう。それは迅速な予算措置や補償、マイナンバー制度による給付金の効率的配布や、欧州帰国者の隔離措置や夜のお店の営業停止などができない事と原因は全て同根です。60歳以上の世代の方は、よく胸に手を当てて考えるべき事です。それより下の世代もそのまま行けばそっくりコピーしてしまうので、同様によく考えた方が良い事です。
肥満者と高齢者と持病持ちと手術をした人が大体死ぬに過ぎなかった。
それと感染者の外国人割合を把握すればもっとちがたっ対応ができた。
これを発表すれば内閣はたぶん倒れる。その発表できないない、ないし、しないという精神が問題であって、武漢ウイルスが問題ではない。
トリアージを考えることと、タイ費用効果、ないし利益と損害の比較、戦争で言うと支払う犠牲と戦果の比較といった問題に過ぎない。
これから自殺者が多く出ると予測するが、それは非常事態宣言によって生じたものでしょう。
財政再建をしても我が国経済が壊れれば、それはいみがないことと同じ。
敵の戦艦を10隻沈めた万歳万歳といっているようなもので、味方の戦艦が15隻沈んでいては、それは負けでしょう。そのような思考ができない。
今秋は其れです。つけがこれから来る、払いきれるかな。
今回、検察総長を歴任した人が、改正に反対しているが、尖閣事件の時、唯唯と政府の方針に従っている、その事実を見つめれば、、今回の反対の理屈は通らないと考えるのが普通の人でしょう、そして普通の人が考えると総長歴任者は思わないことが問題です。こいつ気がくるっていると思いますがそれよりもその頭の中がわからない。
今回の武漢ウイルスにおいてもそのような人が多くいて、いろいろ言ったに過ぎない、早くから風邪に等しいから騒ぐ必要はないという意見を見た。
医療関係者は実情を知っていたとみている。
独立していないことは悲しいことです。
国が何で説明しないのか不思議なんですが、短時間でドア開閉して空気が入れ代わる満員の通勤電車と完全密閉型の観光バスや屋形船では、医学的にカテゴリーが別なんだそうです。前者は後者の感染リスク1/10位だそうです。