2020/05/04 06:30 | by Konan | コメント(4)
Vol.54: 日銀金融政策決定会合+α
昨年の10連休・改元と様変わり。昨年は連休中に海外出張していたことを懐かしく思います。緊急事態宣言も延長で、巣篭り生活が暫く続きます。
今回は日程を短縮して開催された日銀金融政策決定会合(4月27日)を紹介します。年8回開催される決定会合のうち、1月、4月、7月、10月には展望レポートも合わせて公表されます。
まず、経済・物価面から。
(現状)
全体:内外における新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、厳しさを増している
個人消費:飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している
設備投資:増勢の鈍化が明確となっている
住宅投資:横ばい圏内で推移している
公共投資:緩やかに増加している
輸出:減少している
(当面の見通し)
全体:厳しい状態が続くとみられる
国内需要:政府の経済対策が下支えとなるものの、感染症拡大の影響を受けて経済活動が抑制されるなか、個人消費を中心に落ち込んだ状態が続くとみられる
輸出(インバウンド消費を含む):低迷した状態を続けるとみられる
(やや長い目で見た見通し)
想定:きわめて不確実性が大きいが、感染症拡大の経済への影響が、世界的にみて、本年後半にかけて和らいでいくことを想定
海外経済:本年後半頃から、ペントアップ需要(抑制されていた需要)や挽回生産が押し上げに作用し、各国・地域の積極的なマクロ経済政策の効果も発現すると予想されることから、成長ペースは高まっていくとみられる
わが国経済:内外で感染症拡大の影響が和らいでいけば、改善していくと考えられる
国内需要:持ち直しに転じ、先行き、増加していくと考えられる
輸出:再び増加に向っていくと予想される
多少長い引用になりましたが、先行きを「当面」と「やや長い目でみた見通し」に分け、後者に関し比較的明るいトーンを出したことが特徴です。ただし、「下振れリスクの方が大きい」ことも正直に認めています。他方、2%の物価目標について黒田総裁は、「物価のモメンタムはいったん損なわれた状態にある」ことを認めつつも、「その実現を目指していることには変わりない」と粘り腰をみせます。
なお、総裁含め9名の政策委員の大勢見通しは以下の通りです。
・実質GDP:2020年度-5.0~-3.0%、2021年度+2.8~+3.9%、2022年度+0.8~+1.6%
・消費者物価指数:2020年度-0.7~-0.3%、2021年度0.0~+0.7%、2022年度+0.4~+1.0%
次に政策面。既に3月16日にある程度の政策を打ち出しており、また、FEDやECBの方が派手なので余り目立ちませんが、以下の点が「強化」されました(公表文のタイトルが「金融緩和の強化について」です)。
まず、以下の情勢判断が示されます。
「わが国の景気は(中略)厳しさを増している。また、金融環境も、政府や日本銀行の対応が一定の効果を発揮しているものの、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。」
このため、今回は「金融機関や企業等の資金調達の円滑確保に万全を期すとともに、金融市場の安定を維持」することに狙いを定めました。そして、以下の政策変更(強化)が決定されました。
(1) CP・社債等買入れの増額等・・・主に大企業の資金調達手段であるCPや社債の買入れの増額や柔軟化(会社毎に設けられた買入限度額の緩和や、より長期の社債の買入れ)を行います
(2) 新型コロナ対応金融支援特別オペの拡充・・・中小企業や家計の資金繰りを支えるため、金融機関がこうした先に融資する際の日銀によるバックファイナンスを拡充します
(3) 国債のさらなる積極的な買入れ・・・政府の緊急経済対策により国債発行が増加し、万一金利上昇圧力がかかる場合に備え、国債買入れを「青天井」にします
その他の政策は不変です。今回は以前このコーナーで取り上げた「資金繰り」に焦点を当てています。逆に言えば、政府の政策の決定や実行の遅れから、中小企業や一部大企業で資金繰りが厳しくなりつつある現状を正直に認めたと言えるかもしれません。
さて、新型コロナウイルス感染症についてはこのコーナーやTwitterで何度も取り上げ、その意味で「コロナ疲れ」状態です。有効な治療薬・ワクチンが無い中、感染症抑制と経済活動が二律背反の関係にならざるを得ず、こちらを立てるとあちらが立たないことで、皆の倦怠感やストレスが増しています。
そうした中コミュニケーションの難しさを改めて感じます。いくつか例を挙げると・・・
・Twitterでも書きましたが、「3密回避」「8割接触削減」「Stay home」の3つの「標語」が編み出され、政府、地公体、マスコミから繰り返し発信されます。しかし、この3つの関係や優先順位は理解されているのか?「船頭多くして船山に上る」的になっていないか?
・よく「3月の3連休中に緩んだ」と言われます。2月末に学校休校を決めた際言われた「この2週間が正念場」との言葉がその原因では?根拠の無い楽観論は却ってまずい?
・「4日間家で寝て待て」。このため亡くなられた方もおられます。最近では東京都を皮切りにホテル滞在も導入され、少しずつ検査数も増えています。しかし、もう少し別のメッセージは無かったのか?「軽症者」。この言葉が、初期のうちは「大したことが無いなら自分は罹っても構わない」と受け止められ、軽症者も実は深刻と報道されると、病院に人が殺到する引き金になったのではないか?
・私も時間を経て漸く医療崩壊が最大の問題であることを理解してきました。仮にそうなら、新規感染者数の情報も大事ですが、「患者残高=累積感染者数-累積回復者数-累積死亡者数」を都道府県ごとに示す方が有用ではないか?
・「補償」。総理や西村大臣は「補償は出来ない」とよく発言します。恐らく法律用語的厳密さのレベルでは「命令の代償として、命令により生じた損失をそっくり埋め合わす」ことにならない限り「補償」の用語は使えないのだと思います。しかし、求められているのはそのような言葉使いの厳密さを巡る争いではなく、「すぐ助けてくれる」とのメッセージなのでは?
・そして何より、「どうなれば緊急事態宣言が緩和、解除されるか」「どのような順序で経済活動や学校などが再開されるか」など、余りに情報が不足していないか?これが閉塞感や不安の大きな理由では?
やや憂さ晴らし的な愚痴の羅列になってきたので、この辺で終わりにします。連休明けの次週は久し振りにお休みを頂きます。JDさん、Saltさん、よろしくお願いします!
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4 comments on “Vol.54: 日銀金融政策決定会合+α”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
以前書いたように、コロナ騒ぎも一旦6月くらいで一時的に収束しそうな目処が立ってきましたね。欧米韓国台湾中国オセアニアそして日本など主要国で、Social distanceingのトーンが下がって落ち着きどころを探すフェーズに入ってきました。
日銀の見通しはキチンと根拠がありますが、実際に出てくる数字はそこからabsolute numberで1から2%低い成長率になるでしょう。これはここ15年くらい、物価統計と金融庁の融資点検の方針が明かにおかしいからです。前者は統計上の歪み、後者は実体経済の足枷になっています。
物価統計は明らかにサンプリングがおかしい。また比べるものがapple to appleでないから非常に歪んでいます。10年部品を保持し24時間修理対応してくれるダスキンの業務用エアコンと、売ったら最後決して面倒など見てくれない上にすぐ壊れて丸ごと交換のパチモノエアコンでも同じエアコンになってしまいますから、これはガラパゴス日本としては適切な物価統計は諦めるしかないのかも知れません。
金融庁の金検マニュアルとその運用は明らかに狂っています。スルガとか西武信金も道義的にはともかく、あれを問題にしていたら、不味いラーメン屋に融資して貸し倒れても、ラーメンが不味いことを見抜けない銀行の責任と言われかねません。日銀がどんなに緩和しようが、ラーメンの味まで見抜く事を要求されたら貸出が増えるはずがありません。
コロナ対策は、実は世界中で日本が一番戦略的に取組み、成功しています。無駄な検査をせず気持ちばかりの水際対策の後に、緩やかなSocial distancing を行ってピークカットをすると言うのはまさに2009年の新型インフルエンザの時に策定された方針通りであり、推移もその時のデータの通りに進んでいます。最も政治家もそれを理解していないし、官僚が過去のマニュアル通りにしたらそうなっただけですので、日本も諸外国も誤解するのはやむを得ないですが。
なので今後も同じように進みます。夏には対策の効果が出て一旦収束しますが、それは一時的な感染抑制と気候のお陰なので、冬までには第二波が来ます。そして最終的に集団免疫に達するまで繰り返します。違うのは、インフルエンザと比べると感染力が弱いのに、何故か日本を除く西側諸国でだけ死者が多い事です。日本では実効再生産数が0.7から1.7くらいなので人口の1〜3割感染で集団免疫に達する上に、実際の感染者数は統計の100倍くらいですから割合早期に収束します。
問題なのはインフルエンザなどの既存の病気とどう違うのか、と言う事が正確に理解されず、パニックになる人が多くて無駄な検査や自粛で医療崩壊や経済崩壊が起きる事です。インフルエンザより、感染力や致死率はむしろ低いのに、一方で医療崩壊を起こしやすい特徴があり、これが情報の混乱を生んでいるのです。
今、政府が暫定値でも良いから示さないといけないのは、1人の死者が出るまでに消費する医療リソースの比較です。ワクチンも薬もない状態でインフルエンザと比べると致死率は低くなりますが、死者1人出るまでの重症者が比較的多く、一方でほとんどは軽症者無症状者で元気なため院内感染を防ぐために労力を使います。重症者の治療も非常にリソースを割かれるため、同じ1人の死者が出るまでの医療リソースの消費具合はインフルエンザと全く違うはずです。それがわかれば、例えばインフルエンザの死者の半分でも医療崩壊を起こす可能性が高いから自粛が必要であるとか、非常事態宣言がされていても病気の直接の被害はインフルエンザより少ないから過剰に恐れる必要はないなど判断できます。
ここが数値で示されないので、インフルエンザ以下の死者なのに自粛で経済崩壊させるのかと言う不満と、一つでもウイルスに触れたら感電するかの様に瞬時に全身に広がって死ぬ位の恐れを抱く人が同時に存在して混乱を招いています。
ダスキン→ダイキン
色々調べたがさほど怖い病気ではないと思った。健康で、若い人は問題ないとみている。薬局で<コロナは騒ぎすぎではないか>というと、すぐに皆がこちらを見た。
<あなた方は情報がはいっているから、しっているだろうが>といった。
ちょっと慌てているような感じで薬を渡してくれた。
政府は何か、大きく間違えてなと思っている。
>違うのは、インフルエンザと比べると感染力が弱いのに、何故か日本を除く西側諸国でだけ死者が多い事です
なぜでしょうか?
> なぜでしょうか?
年単位でのデータを元にして検証した論文が出ないと、確たる事は言えないでしょうね。それが出揃っても、この種の事は非常に多くの変数が絡みますので、これが定説になったと思ったら覆される、と言う事が何度も続いて決着はつかないでしょう。
ましてや現時点では何を言っても与太話にしかならないのですが、それを承知であえて言うならば、免疫の問題だと思います免疫は働かなくても働きすぎても駄目で、適度に調整される必要があり、その調整機能は人類が進化の過程で共存してきた多くの細菌ウイルス寄生虫に適切な時期にさらされる事で獲得される、と言うのが免疫の「衛生仮説」です。クローン病、アレルギーなど免疫に起因するトラブルが先進国で猖獗を極めているのは、環境が無菌状態になり過ぎて、本来晒されるべき細菌や寄生虫に接しなかった為に免疫調整能力が未発達になった為であるという説です。
この仮説自体は多くの研究により支持されていますが、どの様な細菌や寄生虫がどう作用するのか?適切な時期とは?どの程度の違いが出るのか?後から人為的に調整能力を獲得する方法はあるのか?など具体的詳細に入ると百家争鳴状態です。多くのコロナウイルスは基本的に宿主と共生する無害な存在であり、この新型コロナも大半は無症状で、ごく一部の人の免疫が何故か過剰反応を起こし、サイトカインバーストにより死亡に至ります。これを鑑みると、何故一部の人の免疫が過剰反応するのか?そして西欧北米で多いのはなぜか?を考えると、衛生仮説で説明がつきます。
新コロナによる死者の90%は70歳以上の高齢者であり、それは欧米でも変わりません。西欧や北米では既に19世紀に寄生虫が激減し、戦後にはほぼ現在に近いレベルの衛生状態が達成されています。それに対して日本では水洗便所と化学肥料の普及は昭和30年代から、団塊の世代までは人口の大半も農村で育っていたので、今の高齢者の子供の頃の衛生環境は、江戸時代と大差ありません。日本以外の大半の国はさらに最近まで同様の状況でした。この違いが、免疫の過剰反応の起こし易さの違いに繋がり、死者数の違いに繋がっているのでは無いでしょうか?
欧州でも東欧やロシアは死亡率が低く、同じドイツでも旧東ドイツ側が低いのは、この仮説とピタリ一致します。BCGや結核との逆相関もあるようですが、それも同様の理由でしょう。
「どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんのかわいそうなロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ!」と言う事で、文明のあり方を考えさせられますね。