2019/09/30 06:30 | by Konan | コメント(2)
Vol.31: 月例経済報告と金融政策決定会合2019年9月
ぐっちーのこと本当に驚きました。未だに信じられません。高校同期の間でも物凄い喪失感です。ご冥福を心よりお祈りします。
その穴埋めには全くなりませんが、通常第1、第3月曜日の執筆を1週間早めました。今回は、9月の内閣府月例経済報告と日銀金融政策決定会合を紹介します。いずれも19日公表でした。ECBやFEDが金融緩和策を打ち出す中、日銀も政策変更を行うのではないかとの予想が結構なされました。結果的には今回は政策変更に踏み切りませんでしたが、この点にも触れたいと思います。こうしたbusiness as usualがぐっちーの望みとも思います。
まずは恒例の景気判断の紹介から。
(現状)
全体:輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復している(内閣府)輸出・生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している(日銀)
個人消費:持ち直している(内閣府)緩やかに増加している(日銀)
設備投資:機械投資に弱さもみられるが、緩やかな増加傾向にある(内閣府)増加傾向を続けている(日銀)
住宅建設(投資):このところ弱含んでいる(内閣府)横ばい圏内で推移している(日銀)
公共投資:底堅さが増している(内閣府)横ばい圏内で推移している(日銀)
輸出:弱含んでいる(内閣府)弱めの動きとなっている(日銀)
輸入:おおむね横ばいとなっている(内閣府)記述無し(日銀)
(先行き)
全体:当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題を巡る緊張の増大が世界経済に与える影響に注意するとともに、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、原油価格の上昇や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある(内閣府)当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる(日銀)
個人消費:持ち直しが続くことが期待される(内閣府)(国内需要をまとめて)消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、(中略)増加基調をたどると考えられる(日銀)
設備投資:緩やかに増加していくことが期待される(内閣府)
住宅建設(投資):当面、弱含みで推移していくと見込まれる(内閣府)
公共投資:関連予算の執行により、底堅く推移することが見込まれる(内閣府)
輸出:持ち直していくことが期待される(内閣府)当面、弱めの動きとなるものの、基調としては緩やかに増加していくとみられる(日銀)
輸入:持ち直していくことが期待される(内閣府)記述無し(日銀)
内閣府については、住宅建設の判断が8月の「おおむね横ばい」から「このところ弱含んでいる」に下方修正されました。また全体判断の先行き部分で「原油価格の上昇」が留意点に加わりました。さらに、上記と別途書かれる「政策態度」の部分で、8月までの「10月に予定されている消費税率の引上げを控え」との表現が、「10月の消費税率の引上げが、経済の回復基調に影響を及ぼさないよう」と書き改められました。
日銀の方は、展望レポート公表月(1、4、7、10月)とその他月(3、6、9、12月)で書き方が異なるので比較が難しい面はありますし、微妙に判断が弱くなった(とくに輸出の先行き見通し)気もしますが、大きくは変わっていないと思います。ただ、リスク要因として、
・米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響
・保護主義的な動きの帰趨とその影響
・それらも含めた中国を始めとする新興国・資源国経済の動向
・IT関連財のグローバルな調整の進捗状況
・英国のEU離脱交渉の展開やその影響
・地政学的リスク
が掲げられ、「こうした海外経済を巡る下振れリスクは高まりつつあるとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響にも注意していく必要がある」とされました。
さて、日銀は前回7月の金融政策決定会合で「先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」との決意表明を新たに行いました。また、その後円高が進み、さらにECBとFEDが追加金融緩和を行う中、日銀も追加緩和措置を講じるのではないかとの予想もみられました。
結果的には、今回具体的な追加緩和は実施されませんでした。しかし、公表文に新たに以下のパラグラフが挿入され、次回10月会合での追加緩和の可能性が強く示唆されました。少し長いですが、パラグラフは下記のとおりです。
6.このところ、海外経済の減速の動きが続き、その下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、日本銀行は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあると判断している。こうした情勢にあることを念頭に置きながら、日本銀行としては、経済・物価見通しを作成する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検していく考えである。
黒田総裁の記者会見もみると、
・海外経済の減速が続いていて、それを通じて輸出や生産、更には製造業の業況判断が悪化している
・一方で、消費や設備投資あるいは住宅投資、公共投資を含めて内需は比較的堅調に推移している
・このため、今の時点で経済の先行きが後退する、あるいは「物価安定の目標」に向けたモメンタムが失われる状況にはない
・しかしながら、海外経済中心に下振れリスクが高まっていることは事実で、10月会合で十分点検したい
との説明振りとなっています。因みに、この「輸出・製造業」と「内需・非製造業」の格差は欧米経済についても最近よく指摘される論点で、覚えておかれると良いかもしれません。
2点付記します。
まず、今回追加緩和を行わなかったことへの公式説明は、上記の黒田総裁会見の通りです。ただ、8月に一旦進行しかけた急速な円高がこのところ一服してきたことで、追加緩和の札を今回切る必要はないと考えたように推測(憶測)します。一旦進んだ円高の背景には、米国における行き過ぎた逆イールド化がありますが、米国内でも様々な不確実性が少し収まる中で金融市場がやや落ち着いてきており、FED利下げ後も円相場はむしろ円安方向に反応しました。因みにユーロについても、ECB追加緩和で逆に過剰な緩和期待が消え、むしろユーロ高・円安に作用しました。
次に、日銀が追加緩和を行うとしたら何が出来るのか。総裁会見ではこの質問に対し、
・短期政策金利の引き下げ
・長期金利操作目標の引き下げ
・資産買入れの拡大
・マネタリーベースの拡大ペースの加速
の4つのオプションが掲げられています。このうちの「短期政策金利の引き下げ」は即ちマイナス金利の深堀です。最近大手金融機関トップから「仮にこのオプションが取られる場合、まじめに預金口座維持手数料導入を考えざるを得ない」との発言が出始めました。景気そのものについても、10月1日の消費税率引上げ後の状況が心配されますし、日銀が指摘する海外経済動向も気掛かりです。そうした中10月30、31日に実施される10月の金融政策決定会合は要注目となりそうです。
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2 comments on “Vol.31: 月例経済報告と金融政策決定会合2019年9月”
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西村元銀行局長は、役所を止めて早稲田に行って、一番変わったのは、役所時代は
オブラートに包んだ話し方だったが、早稲田に行ってから、ストレートにモノをいう様になったと自壊。
konanさんも徐々になってきたのではありませんか・?!
消費税は消費を抑える仕組みがある。なぜ之をあげるか理解できない。
知恵がもう浮かばないのでは。
いっそ、警察、軍事、裁判所、消防署、いわゆる夜警国家にして、そのほかの物は、幕末や終戦後のように。廃止をするのがいいのではとこの頃思う。
問題は通貨だが、これがわからない。
そのうえで、順次作っていけばいい。外国の侵略が生じるがとにかく必要が無いもんがおおい。日本人の自治の力が試される世界が近いのでは?