ブログ記者によるオンライン新聞 グッチーポスト

The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2019/10/28 06:30  | by Konan |  コメント(6)

Vol.33: 年金の話し

今回は、2か月前、8月27日に公表された年金の財政検証を紹介します。報道でもかなり取り上げられ、読者の皆さんにとり馴染みのあるテーマと思います。因みにこれが参議院選挙前に公表されなかったことに野党や一部マスコミから強い批判が向けられたことも、今となっては遠い昔のことに感じます。財政検証を公表した根本大臣も、内閣改造で交代(更迭?)しました。

正直に言って、本件を取り上げることに余り乗り気ではありません。理由は3つあります。ひとつは年金の仕組みは難しく、理解できている自信が全く持てないこと。内容を正確に知っているのは、厚労省年金局、財務省主計局の役人と、本件をずっと追うシンクタンクの方達くらいではないでしょうか。ふたつ目は、それぞれの方の受け止め方が大きく異なり得ること。既に年金を受給されている方と今後の方、自営業者と会社員の間で事情が大きく異なり、コンセンサスが得にくいテーマです。みっつ目は、結局のところ、少子高齢化や人口減少を迎える日本がどのような世の中になるのか、財政の持続可能性の問題が日本の信認崩壊に結び付くほど深刻な状況を引き起こすかなど、とても大きなテーマにつながってしまい、私一人ではとても手に負えないこと。なので、今回は普段以上に期待しないでください(笑)。

ところで、年金を理解する前提として、以下の2点をまず解説します。なお、厚労省ホームページの「公的年金のこと、どのくらい知っていますか?」というマンガ図解コーナーのURLを掲げます。社会保険労務士・年金子(としかねこ)さんが主役の力作(笑)です。

(年金は4階建て?)
上記で、自営業者と会社員は立場が異なると書きました。これは、日本の年金制度が実質「4階建て」であることに起因します。ざっくりと言えば、1階と2階は公的年金、3階と4階は私的年金(税制上の優遇措置を捨象すれば)。会社員は4階全てを得る可能性がありますが、自営業者は厚生年金、企業年金とは無縁です。厚労省の財政検証は公的年金(1階と2階)を対象にしています。

1階・・・国民年金(基礎年金)・・・全ての国民が対象で、保険料を支払う義務あり
2階・・・厚生年金・・・会社員のみが対象で、企業と会社員が折半して保険料を支払う。なお自営業者向けの国民年金基金も2階に該当
3階・・・企業年金・・・諸説あるが、退職金の分割払いと位置付ける説が有力。これを設けるか否か企業の判断。以前は予め定まった金額の支給を受ける確定給付型が主流だったが、低金利下の運用難に直面し、確定拠出型に移行しつつある
4階・・・個人年金・・・個人が若いうちからお金を積み立て、退職後それを取り崩す形で支給を受ける。最近は税制上の優遇を受けられるイデコ(iDeCo)が人気に

(賦課方式と積立方式)
上記の4階建てをご存じの方は少なくないと思いますが、この賦課方式と積立方式のことは意外に知られていません。私も良く分かっていませんでした(恥)。上記の通り公的年金では保険料を支払います。これが積み立てられ、将来の自分の年金として受け取る仕組みが積立方式です。日本はそうではなく、賦課方式が主体です。言い換えると、今年金を受給されている方の原資は、今の若い世代が支払う保険料により基本的に賄われます。これだけ書くと今年金を受給されている方の「貰い得」にみえますが、当然、今年金を受給されている方が若い頃は、その当時の高齢層を支えておられました。

なお、日本の場合純粋な賦課方式ではなく(それだけでは賄えないので)、公的年金のうち基礎年金部分の支払い原資の一部(半分)に税金が用いられます(消費税議論の源泉はここにあります)。また、過去に支払われた保険料のうち保険金支払いに用いられなかった部分を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人が正式名称)が存在し、運用益の一部も財源として用いられます。この限りでは部分的に積立方式が組み込まれていると言えないではありません。

さて、公的年金の財政検証。これは5年ごとに行われることとされ、前回は2014年に行われ、次回は2024年に行われます。この財政検証を理解するキーワードはマクロ経済スライド、所得代替率と、安倍総理が言う「100年安心」の意味合いです。

(マクロ経済スライド)
現役世代の収入は、全体を括れば日本経済全体の成長と物価上昇に比例することが想定されます。年金支給水準も、この現役世代の収入に比例することが公平です。しかし、少子高齢化が進み、かつ賦課方式を前提にすると、より少ない現役世代で多くの年金世代を支える必要が生じ、現役世代が負担する保険料が増えてしまいます。これは持ちません。逆に言えば、現役世代の保険料負担を一定程度に抑えるためには、年金支給を抑制する必要があります。このための仕組みがマクロ経済スライドです。詳細な説明は難しいのですが、単純にコアな部分だけ説明すると、仮に日本経済が成長し物価が上がり現役世代の収入が増えたとしても、年金支給を増やさない(ただし絶対額を減らすことは避ける)というのが、マクロ経済スライドの発想です。

(所得代替率)
所得代替率は、これも詳細を割愛しコアな部分だけ説明すると、平均的な家庭(以前会社員だった夫と専業主婦だった妻2人の世帯)が受け取る年金の額と、平均的な現役世代の家庭(年金受給世帯が専業主婦だったとの想定との均衡上、今の時代に合いませんが専業主婦家庭)の収入の比率を表します。会社員だったので厚生年金(2階)も得ています。これが現状61.7%とされ、そのうえで、6つのシナリオに即し、今後数十年間の見通しが示されます。

(100年安心)
2000万円問題の際、安倍総理は「年金は100年安心」とすれ違った答弁を繰り返しました。2000万円問題の核心は、公的年金だけでは足りないので自助努力(個人年金を含む資産形成)が必要と言う点でした。他方、100年安心は全く意味が異なります。まず、上記の所得代替率について「50%を切らない」ことを目標にします。これを確保しつつ、年金の支払いを続けていったうえで、100年後にも「残った積立金が年金支払い1年分を賄える」のであれば、公的年金は持続可能であり「安心」と定義します。

さて、6つのシナリオ(シナリオの詳細は省略します)のうち、3つのより楽観的なシナリオでは、現行制度のままでも100年安心が保たれます。所得代替率50%以上が維持され、100年後の積立金も残ります。残る3つのより悲観的なシナリオのうち、やや軽めの2つでは、所得代替率は45%前後にまで落ちます。ただ積立金は枯渇しません。最も悲観的なシナリオでは、所得代替率は37%前後にまで落ち込み、かつ、途中で積立金が枯渇します。100年安心が守られないケースも示されたという意味では、意外に正直な検証となっています。

次に、100年安心をより確実にするためにいくつかの提言が行われています。単純に言えば、より長く働くこと(保険料支払い期間が延び、受給開始が遅れる)と、厚生年金の対象を非正規雇用者にも幅広く広げること(保険料収入が増えるとともに、こうした層が老後受け取る年金が増える)です。これらは、ある意味で単純な分かりやすい対応で、中小企業中心に企業側の反発は予想されますが、年金の持続可能性を増すとの観点からは不可避な施策と思います。

ここまで淡々と書きましたが、改めての感想を2つ。冒頭本件を取り上げることに余り乗り気でないと書いたことにも関連します。

まず、所得代替率は比率ですが、現状61.7%の前提となる絶対額を紹介します。現役世代(専業主婦世帯を前提)の手取り収入は月平均(ボーナスを含む総手取り収入を12で割ったもの)35.7万円、年金支給は月平均22.0万円が現状です。この絶対額で足りないと思うのであれば、自助が不可避です。その自助への一助として、今は亡きぐっちーがGucci Postを立ち上げたと考えることも出来るかもしれません。

次に、より楽観的な3つのシナリオを実現するため何が出来るのか。明らかに袋小路に入った金融政策に頼れないとすると、企業や各都市(まち)の自助努力か、あるいはMMT(Modern Monetary Theory)が提唱する積極的な財政政策か。

今回はここで終えます。政府は9月20日、全世代型社会保障検討会議を立ち上げました。その検討内容もフォローしつつ、考え続けたいと思います。

6 comments on “Vol.33: 年金の話し
  1. 年金と附属のこと より:
    Magnolia

    こんにちは!「旧」の頃から拝読しています。今回は年金という身近なテーマであるだけに、初めてコメントさせていただきます。

    私は会社員として働いた後に個人事業主(フリーランス)になったため、厚生年金1号被保険者を経て現在は国民年金の1号被保険者です。会社員時代は保険料が天引きされていたこともあり、年金について考えたことはほとんどなかったのですが、フリーになってからは年金保険料の支払いも確定申告も自分でするようになり、いろいろと思うことは増えました。特に2000年代前半に国民年金保険料の未納問題で自営業者が叩かれた時は、年金問題の諸悪の根源は自営業者であるかのような論調(「保険料を払わない自営業者のせいでサラリーマンが割を食っている!」など)もあり、まさにCRUさんの書かれている「立場の違い」を痛感しました。

    働き方や収入を得る方法、家族構成が多様化するなか、年金制度をシンプルにするのは難しいとは思いますが、私の立場から見て特に大きな歪みだと思える点が2つあります。それは、①国民年金保険料を満額支払っても、もらえる年金額は生活保護費をかなり下回る、②サラリーマンの妻が専業主婦の場合、保険料を支払わなくても年金を受け取れる(ちなみに自営業者の妻は専業主婦であっても保険料納付義務がある)です。

    ①は、実際にそのような人がどれだけいるかは別として、保険料を支払わずにいていざとなったら生活保護を受ければよいという、インセンティブ上の問題をはらむように思います。②はあまり表面化していないようにも思いますが、働く女性どうしで年金の話をすると必ずといってよいほど話題に上る問題です。

    解を見出すのは簡単ではないかもしれませんが、全世代型社会保障検討会議でこれらの点も議論の俎上に載ればよいなと思っています。

    私のコメントは財政検証とはやや焦点がずれてしまいましたが、今後とも折に触れて年金問題を取り上げていただけると嬉しいです。

    ここから急に話題が変わりますが、私も附属の出身です(CRUさんと同じ「高校外部」です。この言葉、久しぶりに思い出しました……)。ぐっちーさんの旧ブログを2006年ごろから読んでいて、あるエントリーがきっかけで「この人は先輩なんだな」と知り、CRUさんもプロフィールから附属の方なのだなと思っていたのですが、vol.32を拝読して、ハルキさんを含む附属のOBネットワークがグッチーポストでとても大きな役割を果たしていることを改めて知りました。

    まだ名前も顔も公表していないころからぐっちーさんのブログを愛読し、メルマガを第1号から購読し、講演会も何回も聴きに行った身としては(でも、直接お話したことはありませんでした……)、ぐっちーさんが亡くなられたのはいまもとても悲しく感じていますが、ぐっちーさんのよき旧友である附属出身の方々がグッチーポストを支えてくださっていることには感無量です。

    ご自身も書かれているようにぐっちーさんの供養のためにも、読者のためにも、CRUさんにはぜひ今後とも末永く「ひとり言」を書き続けていただければと願っております。

  2. Magnolia より:
    名前とタイトルが逆でした

    先ほどのコメント、名前とタイトルが逆でした。
    おっちょこちょいですみません……

  3. 筆者です より:
    ありがとうございます

    年金について正直に言えば自信が無く、書こうかどうか迷っていました。大切な補足を頂きお礼申し上げます。
    また、高校も同窓のようで、嬉しいです。良い友達を多く作れた学校でした。

  4. 健太 より:
    はじめから

     この年金の仕組みを考えた人ないし、機関ははじめからうまくいくとは考えていなかったと思う。そもそも人が働けなくなって、どのようにしてお金を稼ぐがということです。それは働ける間にお金をためて、それを使う。動物はエサが取れなくなったとき、死ぬ。そして亡骸はほかの動物に食われる。
     なぜ国民年金と厚生年金と二つあるか?それは自営業者とサラリーマンとの違いを制度上に表したにすぎず、お金の流れだけを見ると、自営業者は事業を息子に継がせて、あとは隠居して、小遣い程度の年金をもらい、息子に食わせてもらう。それによって生活を維持する。サラリーマンのほうは説明の必要はないでしょう。
     ところが自営業者も閉鎖するところが増え、また厚生年金を払えない企業がでてきて、普通の人が国民年金へはいることになった。

     この時点でただでさえ、うまくいかないものがもっとうまくいかなくなった。
    制度そのものが続こうか、つづかなくなろうが、お金を稼げなくなったとき(失業も同じ)どのようにして各人は生きるか。この回答として、社会制度として、現在の仕組みをつくった。それが合理的で妥当かはまた別の問題に過ぎない。

     この制度はつぎはぎで維持していくことになる。具体的には保険料の増大、受給額の減少です。これ以外の未来はない。
     したがって各人はどのようにして老後の金を作るかを考えて、実行する以外にない。
     国会議員は能力がないから、実質何もできない。又たぶん官僚も手を付けない。それは悪いことではなく。できないものはできない。
     もう現状は自分で作れと政府は言っており、若い人はそれをしていく以外に道はない。
     ではどのような方法があるか?私は株しかないとみている。
    したがって、我々のような普通の日本人はどのような株を持つかに尽きる。
    グッチー氏が言っていたように、アメリカ株がいい。

     田舎の高校から慶応へいったひとがおり(事業者の息子)、彼と話した知人は、彼が言うには、慶応の学生は二つにわかれており、ずばりお金持ちのむすこたちと、そうでない息子の二つで、田舎の会社の息子でも付き合いきれなかったと話したという。
     私自身は全く知らない。

    しかし日本はどの高校を出たかがその後の人生に大きな影響がでますから、どこを選ぶかは、人生の一大事です。早く知っておくべきことの一つ、
     私個人としては私立学校への補助金はぜろにして、政府は公立学校へおかねをつぎこんでほしい。

    >第八十九条
    公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

    明快にこの条文に違反していると思うからです。

  5. ぺルドン より:
    PC故障

    かなりかかります>>>
    治ればコメント入れます!

  6. ベルドン より:
    PC新調

    岡場所も楽天に・・野球が強いからアヤカル為・!
    でも年金、もうMMTに縋りつく以外残されていないのでは・?
    30代の連中、年金はもらえないと覚悟している様子・・・
    ( ^ω^)

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