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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/07/15 06:30  | by Konan |  コメント(5)

Vol.25: 月例経済報告と金融政策決定会合 2019年6月+G20


今回は平常モードに戻り、公表から大分時間が経ちましたが、6月の内閣府月例経済報告(18日)と日銀金融政策決定会合(20日)を紹介します。また、6月末に行われたG20大阪サミットについて簡単に触れたいと思います。

まずは、月例経済報告と金融政策決定会合の紹介です。

(現状)
全体:輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している(内閣府)輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している(日銀)
個人消費:持ち直している(内閣府)振れを伴いながらも、緩やかに増加している(日銀)
設備投資:このところ機械投資に弱さもみられるが、緩やかな増加傾向にある(内閣府)増加傾向を続けている(日銀)
住宅建設(投資):おおむね横ばいになっている(内閣府)横ばい圏内で推移している(日銀)
公共投資:このところ底堅い動きとなっている(内閣府)高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している(日銀)
輸出:弱含んでいる(内閣府)弱めの動きとなっている(日銀)
輸入:おおむね横ばいとなっている(内閣府)記述無し(日銀)

(先行き)
全体:当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響に一層注意するとともに、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある(内閣府)当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる(日銀)
個人消費:持ち直しが続くことが期待される(内閣府)国内需要をまとめて:増加基調をたどると考えられる(日銀)
設備投資:緩やかに増加していくことが期待される(内閣府)
住宅建設(投資):当面、横ばいで推移していくと見込まれる(内閣府)
公共投資:関連予算の執行により、底堅く推移することが見込まれる(内閣府)
輸出:持ち直していくことが期待される(内閣府)基調としては緩やかに増加していくとみられる(日銀)
輸入:持ち直していくことが期待される(内閣府)記述無し(日銀)

内閣府、日銀ともに微妙な字句修正はありますが、基本的に前回(内閣府5月、日銀4月)からの変化はありません。双方とも、海外経済の減速を理由に足もとでの、とくに輸出・生産面の弱さを認めていますが、国内需要は緩やかに増加しており、先行きについても、回復(拡大)基調に変化はないとの見方です。

因みに、その後7月5日に5月分の景気動向指数速報が出ました。何度か書いたように私はこの指数のファンではありませんが、ここ数か月、この指数についての「下方への局面変化」「悪化」との判断が話題を呼びました。しかし、5月分は「下げ止まりを示している」とされました。この指数に基づく判断は予め定まったルールに基づき機械的に行われ、統計の改ざんや誤りが無い限り恣意性はありません。また、本当に景気が回復を続けているのか、それとも下降局面に入ったかの判断は、かなり時間が経った後に行われます。そのうえで、内閣府や日銀の上記の文章上の表現と逆に、生産指数や出荷指数が持ち直しに転じたことを受け「下げ止まり」と判断されました。

因みに、G20大阪サミットの首脳宣言にも世界経済を巡る表現があります。行ったり来たりの文章で分かり難いのですが、

「世界経済の成長は、足元で安定化の兆しを示しており、総じて、本年後半及び2020年に向けて、緩やかに上向く見通しである」というポジティブな評価がなされる一方、

「成長は低位であり続けており、リスクは依然として下方に傾いている。何よりも、貿易と地政を巡る緊張は増大してきた」との警戒感も示され、そのうえで、

「我々は、このリスクに対処し続けるとともに、更なる行動を取る用意がある」との決意表明がなされています。

昨年秋頃から今年春頃にかけ、日本を含む世界経済はおかしな方向に向いました。その後、最近の株価上昇にも助けられ、足もとでは少し不安感が遠のいた感じもあります。ただ、中国経済がどうなるか、日本に関して言えば予定通り実施されそうな消費税率引上げ以降何が起きるかなど、かなりの不確実性が残っており予断を持てないというのが、現状でのフェアな評価でしょうか。

なお、次回執筆時(8月5日予定)には参議院選挙が終わっています。私の予想が外れ衆参同日選挙になりませんでした(恥)が、次回はその感想を記そうと思っています。選挙は最後まで何が起きるか分かりません。ただ、今のところ消費税率引上げ断行という自公政権の判断(そして2000万円問題)が、与党に大きな逆風となっているようには見えません。野党に対する信頼の無さが理由と言えばそれまでですが、この問題が余り気にならない、ないしやむを得ないと受け止められる程度には、日本の景気も安定しているということなのでしょうか。

ところでG20。私は以前この財務・金融トラックに関わっていたこともあり、結構思い入れがあります。リーマン危機に対処するため、従来のG20財務大臣・中央銀行総裁会議を首脳会議に格上げし、2008年11月にワシントンで初回首脳会合が開催されたのが、このG20サミットの始まりです。その後、毎年議長国が交代する度に新たな議題が追加されることもあり、今では本当に幅広い議題が取り上げられ、それに連れて会議も儀式的になっていると思います。今回も、G20そのものより、その裏で開かれた米中首脳会談が最大の注目を集めました。また、大体のことは首脳会議の前段階の大臣レベル会合で片が付きます。そうした意味でもセレモニーと思います。ただ、とくに財務・金融トラック(日本では財務省、金融庁、日銀が関与)ではこのG20を目標に国際的な議論が進み、場合により新たな規制作りなどにもつながります。その意味で大事な会議と個人的に思っています(この点、JDさんと少し異なるのかもしれません)。

今回の首脳宣言の項目だけ下記に書きます。如何に多くのことが議論されているか(拡散しているか)お分かり頂けると思います。

・前文

・世界経済

・強固な世界経済の成長の醸成:貿易と投資、過剰生産能力、イノベーション(データ、信頼性のある自由なデータ流通)、質の高いインフラ投資

・グローバル金融:グローバル金融セーフティネット、債務の透明性、国際課税システム、技術革新、マネーロンダリング等、金融規制改革

・腐敗対策

・不平等に対処することによる成長の好循環の創出:労働及び雇用、女性のエンパワーメント、観光、農業

・包括的かつ持続可能な成長の実現:開発、国際保健、地球環境問題と課題、気候変動、エネルギー、環境、避難と移住

それぞれに関係者の様々な思いが込められており、とても説明しきれません。報道等を見ていると、日本政府は今回の大阪に向け、「信頼性のある自由なデータ流通」と、「環境」に含まれる海洋プラスチックごみ・マイクロプラスチック問題を日本(大阪)発の重要課題として取り上げようとしたように見えます。

米国トランプ政権と他国の対立が前回に続き鮮明になったのは以下の2点と言われます。ひとつは貿易に関し「保護主義と闘う」との表現が今回も無かったこと。しかし今回の宣言では「自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、我々の市場を開放的に保つよう努力する」との表現や、「対外収支を評価するに当たっては、サービス貿易・所得収支を含む経常収支の全ての構成要素に着目する必要性に留意する」との表現も盛り込まれ、ある種の牽制効果を持たせています。もうひとつはパリ協定。とくにパラグラフ35において米国がパリ協定を脱退したこと、しかし米国は環境問題に無関心でないことが記されています。

今回はこの辺で終わりにします。何だかとりとめのない無い回になっていました。旧CRUのひとり言では、ひとつの話題だけで持たないとき、「三題話し」と称して1回に3つの短いテーマを盛り込みました。今後この復活も考えたいと思います。

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5 comments on “Vol.25: 月例経済報告と金融政策決定会合 2019年6月+G20
  1. JD より
    コメント

    コメント、ありがとうございます。大変恐縮です。
    ご指摘をみて、私の目線には、外務省的な偏りがあったように思いました。財務・金融分野の議論が、今後の世界的な規制の流れを作るところは、たしかに大きな役割を果たしていると思います。
    また、首脳宣言の文言の中から、米国への牽制と米国の立場を読み取れる部分は、まったく同感です。
    私は、これまでの仕事の経験から、多国間会議にシニカルになってしまう傾向があるのですが、それが高じて極端な物言いになったり、言葉足らずになることに気づきました。大変参考になりました。
    これからも、分野を横断した、自在の考察を期待しております。

  2. Konan より
    コメントありがとうございました

    JDさん、コメントありがとうございました。トランプ政権になり、多国間会合は一段と難しくなったように思います。そうした中、財務・金融トラックについては、民主党政権時代、大手米銀に国際合意を上回る厳しい規制を導入した経緯があり、それを少しでも緩和するためには、国際合意尊重の立場を取る方が得策と現政権が考え、多国間枠組みに残っているとの話を聞いたことがあります。
    ところで最近チベットに旅行した知人から、首脳会合の準備を担うシェルパの名前はチベット近くに住むネパール人の名称から取ったとの話を聞きました。山登りを助けてくれる人達のようです。本当でしょうか?

  3. JD より
    シェルパ

    >CRUさん
    どうもありがとうございます。
    興味深いお話ですね。ドッド・フランク法の規制については、米国内でも様々な評価を聞きますから、なるほどと思いました。

    シェルパについては、おっしゃるとおりです。
    シェルパはネパールの山岳地帯の少数民族で、山登りやトレッキングを助けることを得意としています。サミットという「山頂」を登るのを手助けするという比喩から、その名前が使われました。

    ちなみに、シェルパには(サミットがもともと経済問題を扱う場だったので)各国の経済担当の高官(日本であれば経済担当の外務審議官)が就きますが、サミットの場では政治・安保も取り上げられるので、Political Director(PD)という役職がシェルパを補佐します。
    日本の場合、PDは政務担当の外務審議官が務めます。
    シェルパと比べると、PDはほとんど知られていないと思いますが、最近のサミットは政治が重みを増していますし、また政務外審という重量級が務めることからも分かるとおり、重要な役割を果たしています。

    脱線しましたが、私はPDのサポートをしたことがあったので、思い出しました。

  4. Konan より
    PD初めて知りました

    PDの存在初めて知りました。会議の仕組みどんどん変化するんですね。PDでなく経済担当の外務審議官では、ご挨拶させて頂いたこともある西宮さんが、駐中国大使に任命された直後に亡くなられた衝撃を今でも思い出します。他省庁の年次が下の連中にも、とても丁寧に接して頂きました。

  5. 健太 より
    G20よりも

     我が国の秋の消費税の引き上げは大きな影響を与える。これまで三回上げたがその都度税収が減っている。普通に考えれば次も減るとみることだと思う。何を根拠に財務省は減らないとみているのか。学習能力がないのか?それとも難しすぎて、これまでにある手立てに頼っているのか?
     我が国の税収構造はモラルも原理もなく、取れるところから取るのが原則としか思われない。
     大東亜戦争の時、同じような作戦を何度もする日本軍を見て、アメリカは日本軍の行動の予測ができたという。ようやくそれをかえたのはぺりリュウ島攻防戦からで、その後硫黄島、沖縄戦と続いたが、あれだけ犠牲を出して戦っても,戦争そのものの構想が悪かったために、それが報いられなかった、その作戦を実行した人は軍の中枢部にいた人ではない。
     昭和天皇が国がつぶれては天皇など意味が無いといわれたようです。
    財政再建のために(彼らは経済の状況ではなく財政ばかり見ている。損が立つとき、その損をいかに少なくするのが腕の見せ所です)消費税を上げるというがかえって財政再建を遠のかせるとみている。消費税を上げることは常識を働かせれば、収入が同じなら購買分が減る。では何ができるか?消費を減らすしか生きる道はない。 
     財務省の人は日本国はつぶれないと心底思ているにではないか?国内の消費構造すら把握していないのでは?大蔵大臣の器量が最終的にものをいうが、賀屋オキノブとにた人が必要か?それとも高橋是清か?
    それは倒産が先にある小企業の経営者がこの会社はつぶれると思っていることとは違う思考による<思っている>でしょう。

     まあ内心では皆出来ないと思ていると思うけれどもね。ふざけた人々だと思うが私も別の領域でしたことがある。

    インパール作戦の時、当時の兵隊が他と比べれば優れていると思われる参謀に<なぜ勝てないのか>と聞くとその答えは<教えられた事はすべてしたが、勝てない>と答えたという記録を読んだ。
     またインドネシアで負けていくとき,少将が<私が軍隊に入って少将にしてもらった>といって苦境にある現状に対して何ら対策を考えられなかった人を記述している。その記述に昭和18年に作戦方針を陸軍上層部はかえた。<これからは対米戦闘を主とする>と命令が来て、それから変更したという。18年ですよ。
     財政再建ははじめからできないことに過ぎないとみて、私は生きている。
     

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