2019/07/01 06:30 | by Konan | コメント(3)
Vol.24: 消費税 その2
今回は消費税について2回目となります(前回6月3日のVol.21です)。1回目では、この10月の引上げに反対である、ただ未来永劫財政再建が不要とまで言う自信は無い、と書きました。2回目の今回は、何らかの財政再建が必要との前提に立ち、そのあり方を考えたいと思います。今回は異論を持つ方が多々おられると思います。10月引上げの是非は経済と政治の問題、財政再建の必要性は神学的問題、そして今回は価値観の問題と考えます。更に言えば世代により大きく考えが異なり得る問題と思います。
前置きはさて置き、2019年度予算をみると、総歳出額は101.5兆円、うち社会保障費34.1兆円、国債費23.5兆円(うち債務償還費14.7兆円、利払費等8.9兆円)、地方交付税交付金等16.0兆円、公共事業費6.9兆円、文教及び科学振興費5.6兆円、防衛費5.3兆円が主な項目です。なお、日本の予算は「現金主義」なので国債債務償還費(満期到来時に支払われる国債の元本分)も予算に計上されますが、これは1回目で書いたように当面間違いなく借り換え可能なので、無視して構いません。こうしてみると、社会保障費が他の項目を圧倒していることが分かります。
財政再建の際最初に考えるべきは歳出削減です。ぐっちーが良く書くように、国も地方も無駄な支出が多々あります。知人の某官庁最高幹部は「補助金を頭を下げてもらって頂くのが実態」と嘆きます。こうした無駄は公共事業費に多く含まれると思います。ただ、今回は消費税との関係で話しを社会保障費に絞りたいと思います。消費税率引上げの理由が社会保障財源の安定確保とされるからです。
社会保障費は医療(約12兆円)、年金(約12兆円)、介護(約3兆円)、福祉・その他(約6.5兆円)に大別され、高齢化に伴い更なる増加が見込まれています。例えば今年1月30日の経済財政諮問会議に提出された内閣府の中長期の経済財政の試算によると、ベースラインケースで2028年度の社会保障関係費は41.2兆円と試算されています。
理屈上、これらを「民営化」することも考えられます。既に積み立てられた年金基金等を「公平に」分配したうえで、後は年金も医療も介護も自力で、例えば自らの貯蓄を使いながら、あるいは民間保険を活用しながら対応するやり方です。オバマケア以前の米国はこれに近かったのかもしれません(自信ありませんが)。仮にそう出来れば、消費税率引上げの必要は解消します。
恐らく、少しはこの方向に踏み込むことが必要と思います。しかし2000万円問題への反応にもみられたように「ふざけるな!」と思う方も多々おられると思います。今の選挙や政治の仕組みを前提にする限り(日本が非民主的な独裁国家とならない限り)、あるいは官に頼りがちな日本人のこれまでの傾向が変わらない限り、こうした方向に抜本的に踏み込むことは難しいと思います。そうであるとして、かつ「未来永劫財政再建が不要とは言えない」と考えるとすると、何らかの「増税」が必要になります。これは不可避です。誤解ないよう繰り返します。「社会保障費削減が難しい」かつ「財政再建がいつかは必要」と考えると「増税が不可避」が必然の答えです。「削減できる」ないし「MMTが主張するように財政再建不要」と考える方は、当然にして私の意見に反対となります。
増税を考える場合、直接税(法人税、所得税)か間接税(消費税)か次の論点になります。よく言われるように、消費税の最大の問題は「逆進性」です。かつて絶頂だった英国のサッチャー首相の人気が急落した契機は(因みに私はその頃英国に留学中で実体験しました)「人頭税」案です。所得や資産に関わらず、国民は皆同額の負担を負うべきとの徹底したサッチャリズムの発現でしたが、流石に貧しい層からの極めて強い反発を食い、ついにあの首相が退陣に追い込まれました。消費税にも似た問題があります。共産党が消費税に強く反対する理由はここにありますし、公明党が軽減税率を主張したのもこのためです(両党とも「庶民の党」なので)。他方、消費税の最大の魅力は歳入が景気に左右されにくいことです。景気が悪いから食べる量を半減する訳にいかないからです。また収入の増やしやすさも魅力と言われますが、日本の経験を踏まえると必ずしもそうとは思えません。
法人税について言えば、民主党政権の頃財界が「六重苦」と主張し、その一環で法人税率の国際的に見た高さが指弾されました。安倍政権になり、景気回復に加え円安により海外現法からの収益還元が円建てて増加したこともあって、日本の大企業は空前の収益を上げています。それを背景として企業の設備投資も着実に増加しています。しかし雇用者への還元が不十分なままであることは皆さん承知の通りです。無駄に内部留保を積み上げるだけなのであれば、一定程度税金として吸い上げても良い気がしてきます。
所得税か消費税か、恐らく最も価値観が問われる論点と思います。逆進性に苦しむ方は「金持ちから取れ」と思い、逆に「所得税を上げると頑張って稼ぐインセンティブが失せる」と金持ちの方は反対されます。この逆進性は、ある一時点において所得の多い人と少ない人の公平性の問題ですが、これとは別に、世代間の公平性の問題があります。より少ない若い世代がより多い高齢世代を支える構図が強まることが見込まれますが、若い世代からみると、若い世代と高齢層の間でより「近い」もの(若くても高齢でも違いが出にくいもの)をベースにした課税を増やして欲しいと思うはずです。それはどちらかと言えば、所得税でなく消費税です。
いろいろ書いてきました。増税が必要と考える場合、今の大企業の体たらくを考えると、やや懲罰的な発想ですが法人税率について引上げ余地はあるように思います。また、社会保障費を賄うため増税を行うケースを考えるとすれば、既に勤労者層にかなりの負担がかかった状況のはずで、個人に更に負担を求めることは難しいと考える方が自然かもしれません。
所得税と消費税について、自信を持った答えは出せません。この10月の10%への引上げには反対しますが、将来的に消費税率を10%まで引き上げることはやむを得ないと思います。その後について、高所得者への所得税引き上げには反対が出難いと思いますが、それを超えた財源確保が必要な場合、消費税率の更なる引上げか所得税引上げか、価値観が大きく割れる問題と思います。
政治には、2000万円問題への対応のように問題の存在に目を瞑るのではなく、こうした問題を真剣に議論して欲しいと思います。
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3 comments on “Vol.24: 消費税 その2”
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今はネットで古い映画を見ることができる、その登場人物を見ると現代の人とはことなる。戦前の映画となるとまた違うという気がするが、登場人物を見ると理解できないことはない。その映画に登場する人の公益に対する感覚と現代人のそれとを比べると大きな違いがあると思う。
人の風情や行動は異なる。特に人と人との関係は違う。先日、修理にいった人と話したとき、同年会の話がでて<同年でだれか落ちぶてたら、金を出すことになっている>と話すと、お客は驚いて、<そんな風なの><いや一人30万で、合計300万ばかりだよ。>と答えると、<いいなあ>という。<その時が来たら、わからないよ。俺はそれを決めた時、払ったことにしているから、もう関係ないよ。現金にするかほかにするかはかんがえたがなあ>
我が国における、社会不安の大本は上記のようなことが全くないことにある。われわれもいざとなったらわからない。それほど担保がない。世界で保険が一番多いのは我が国だという。大東亜戦争の結果に過ぎないことと資本主義が進んだことと我が国に宗教的要素がないことです。明治以降生じた新興宗教はみなそれに過ぎないとみている。
それは明治以降の我が国社会の崩壊の過程が進んでいることをしめしているが、それとは別に、個人的には日本人は薄情な人が多いとみている。
そのような背景があるなかで、財政再建といっても確かに経済的な計算は可能だろうがその背後を考えると、再建へと進む要素はなく、別な形になると予測している。子供のころ夏になると外から家の中が見えた、もちろん蚊帳の中で人が寝ている、しかし今は違う。
この落差は経済運営に現れている。知人で商売が成功した人が言うには、<今はかすりをとるような行動するひとがふえた、要するに抜く行為で銭を得るという人が増えた。これからそれをする人はつぶれていくと俺はいている>
寄付金が集まらない。以前奉加帳をまわして、集めてはというと市の役人が<そのようなことを言う人がいるにはありがたいが、今はだめです、>と言われた。
小学校の校舎などはそれをして、立てた。今の社会保障はそのような要素はない。したがって、必要なお金は税金かそれに似た方法で集めなければならないがそれができるか、できるような社会経済がありうるか?
経済学など、ないし経済についていろいろ考えたがこれほど面白くて難しいものはないと思った。うまくいって、金を得られれば、妙ににやにやする。
社会保障費は軍事費と同じ機能をするとみている、軍事費は勝ち負けが決まればそれで終わりです、社会保障費もにたような勝ちまけがあって、それで決まるのではと予測している。それは何か?外国との比較で、外国の社会構造が社会保障費を継続していく経済なら、その国は社会保障という軍事費がつずき、勝ちて、それができない国は負ける。そして負けた国からかねをとって(具体的な金ではなく交易条件を有利に進めて利益を得るという形)社会保障がつずく。
簡単に考えるとグッチー氏が言うようにアメリカ株に投資をして、5パーセントの配当を得れば仮に2000萬投資をするとして、年80万。この落差を制度で埋めることは不可能でしょう。 財政再建という言葉をはずして、毎年のありうる政府の金の出し入れのみを考え、それによって動く我が国社会経済を認識して、各個人は生きていくしか道はないでしょう。
先日証券会社へいって、孫の口座(子供の出来が全く悪いから)を開こうとしたら、社としてそれはしていないとのことだった。法律上はできるとのことだった。これが日本の社会です。法が機能していない。そのとき社員が言うには2000年ころから差が付き始めて、もう今は完全についているとのことだった。
税務署へいって贈与税について、いろいろ聞いたが即座に答えられなかった。しばらくして上の人が来たが答えられなかった。つまりそのような考えの人が相談に来ていないということで、実際は知らないが孫に株をあたえるという選択をしている人は、わが税務署管内ではないことです。
もっとも知人が言うには<別のルートがあり、お前の金なんかあいてにしていない、金持ちは別だ。いくらでもあると思うぞ。脱税というが聞こえが悪いが節税ということだな>
また昨年の税収が最高だということにたいして、知人の事業者は電子納税がふえて、税務職員に時間ができて、飛び回っているからだという。
つまり徴税漏れが多いといいうことでしょう。
これまで、ちょっとした人に株を買うこと進めたがただの一人もはなっしを聞こうという人はいなかった。胡散臭い目で見られた。上がり下がりと為替があるが5パーセントはあるよといったが見向きもしない。
資本主義は株と先物相場だと思っているが依然とそて我が国は<株屋>扱いで、社会の合理的な機能を担う仕組みとは思っている人は少ない。またそれであるから多分、現状で済んでいる。ある種の扇動をして。日本人に行動を起こさせれば多分日銀の行動は一気に崩壊するとおもうし、世界経済も大変動を起こさせることも可能だと思う。日本人は自信をもって行動するときが来たと思う。
3年前スペインのスーパーでビールを買おうとしたら、段ボールに平積みされた物は1ユーロ、冷蔵庫で冷やされた物は1.1ユーロだったと思います。なるほどこれが付加価値税か❗と合点がいきました。(単にスーパーが電気代を上乗せしてるだけかも┐(‘~`;)┌)
海外の間接税は消費者に届く最終段階でのみ掛かると聞きます。それなら10パーセント以上とうのも理解できます。
一方日本はすべての消費段階、例えば自動車製造なら1台当たり3万点以上のすべての部品ぞれぞれに、さらにネジ1本の製造に必要な鋼材、電力、倉庫の家賃等それぞれすべての段階にかかります。
国内製造の輸出品目にまで消費税がかかるので競争力も失われえると思います
消費者に届くまでの無限の段階で間接税<消費税>を懸ける制度設計は無理があると思います。
間接税の存在自体は非生産年齢人口の増大を考えると必要だと思いますが。