2019/05/27 06:30 | by Konan | コメント(2)
Vol.21: 景気動向指数、GDP、月例経済報告2019年5月
最近、景気動向指数(3月速報)、2019年1~3月期GDP速報、月例経済報告(5月)と内閣府から続けて経済指標等が公表され、内閣府のものとしては珍しく注目を集めました。このコーナー再開後、月2回(第1、第3月曜日)ペースを守ってきましたが、余り時間が経つと気が抜けてしまうので、執筆を早め今回この3つを紹介します。なお、来月は珍しく仕事が忙しく月2回書けるかどうか心配でした。今月3回、来月1回と執筆ペースをこの2か月変則的にします。次回6月第1月曜日には消費税を取り上げる予定です。
今回は公表順に説明します。5月13日、景気動向指数3月分速報が公表され、「景気動向指数(一致指数)は悪化を示している」との判断が示されました。2013年1月分以来、6年2か月振りの「悪化」との判断です。以前も何度か紹介しましたが、景気動向指数は経済企画庁が存在した古い時代から、景気の山谷を判断するため作成されてきた指標です。先行、一致、遅行の3つの指数があり、景気の現状を示す一致指数は、鉱工業生産指数、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数、投資財出荷指数、商業販売額(小売業)、商業販売額(卸売業)、営業利益(全産業)、有効求人倍率の9つのデータ系列に基づき作成されます。その変化により「改善」「足踏み」「上方への局面変化」「下方への局面変化」「悪化」「下げ止まり」のいずれかと判断されることになっていて、予め定められた基準に基づき機械的に判定されます。
「悪化」の意味合いは「景気後退の可能性が高いことを示す」とされています。ただ、実際に景気後退期入りしたか否かの本格的な(機械的でない)判断は、2年近く後に行われます。景気動向指数の短期的な動きに惑わされることなく、トレンドを事後的に確りみて、景気の山谷を判断したいとの思想です。要は、内閣府は「景気動向指数の変化に一喜一憂しない」とのスタンスを取っている訳です。
次に、5月20日に2019年1~3月期のGDP速報値が公表されました。同時に2018年度の速報値も判明した訳です。この速報値、事前予想と異なり実質経済成長率前期比+0.5%(年率+2.1%)と比較的高い伸びを示し、皆を驚かせました。ちなみに、前期比は1~3月期の数字を昨年10~12月期と比較したもの、年率はその勢いが1年間続いたらどうなるか示したもの、実質は物価変動の影響を除いたもの(名目の対語)を示します。
ところがその内容を子細に見ると「輸入が減ったのでGDPが増えた」のが実態です。このこと自体が分かり難いので、当日のNHKニュースでも「なぜ輸入が減るとGDPが増えるか」一所懸命解説していました。このコーナーの読者の方には既に常識かもしれませんが、あらためて説明すると、GDP(Gross Domestic Product)はある一定期間(例えば3か月間、1年間)の間に国内で生産された富(付加価値)を示す指数です。生産されたものは必ず使われます=余ったものも「在庫」の形で需要されると考えます=ので、生産と需要は必ず一致します。国内で作られた富のうち海外で需要されるものが輸出です。他方、国内で需要される富のうち「輸入」は国外で生産された富を示します。そうすると、「国内で生産された富(GDP)=国内で需要された富+国外で需要された富(輸出)−国外で生産された富(輸入)」との式が成り立ちます。輸入が減ると、マイナスされるものが減るのでGDPは増えるという構図です。
今回、そもそも個人消費は前期比-0.1%と減少しました。設備投資も前期比-0.3%と減少しました。輸出も前期比-2,4%と減少しました。しかし公共投資が前期比+1.5%と増えたうえ、輸入が-4.6%と大きく減少したことが、上記の理屈でGDPの伸びを支えました。輸入減少と公共投資頼みの格好悪い成長だった訳です。
なお、2018年度速報は+0.6%となり、2017年度の+1.9%を大きく下回りました。2015年度以降4年連続の増加ですが、余り冴えた数字ではありません。
そして、5月24日に月例経済報告が公表されました。
(現状)
全体:輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している
個人消費:持ち直している
設備投資:このところ機械投資に弱さもみられるが、緩やかな増加傾向にある
住宅建設(投資):おおむね横ばいになっている
公共投資:このところ底堅い動きとなっている
輸出:弱含んでいる
輸入:おおむね横ばいとなっている
(先行き)
全体:当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響に一層注意するとともに、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある
個人消費:持ち直していくことが期待される
設備投資:緩やかに増加していくことが期待される
住宅建設(投資):当面、横ばいで推移していくと見込まれる
公共投資:関連予算の執行により、底堅く推移していくことが見込まれる
輸出:持ち直していくことが期待される
輸入:持ち直していくことが期待される
4月の全体判断は「輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やかに回復している」でした。今回5月では「一部に弱さ」という言葉がなくなり、ストレートに輸出や生産の弱さが表現されました。また4月まで「増加している」だった設備投資の判断が「緩やかな増加傾向」と弱くなりました。しかし、「緩やかに回復」との評価は維持されました。
以上をまとめると、日本経済の現状は良くありません。また、肝心の雇用・所得環境を示す毎月勤労統計の信頼性が欠けた状況が続き、この点の確度にも自信を持てません。ただ、その他の様々なデータを見る限り、労働市場の引き締まりは続いており、所得環境が急に悪化することまで心配する必要はなさそうです。そうなると、結局のところ中国をはじめとする海外経済の行方に左右されていくことが予想されます。
内閣府が「緩やかに回復」との判断を変えなかった背景に、「アベノミクス失敗」のような情報を選挙前に流したくないとの配慮があったことは間違いないと思います。ただ、国内雇用・所得環境が維持される中、海外経済の動きが読み難いので、判断を変えにくいという事情もあったと思います。海外経済について、ぐっちーが毎週書くように米国は独り勝ちです。恐らく以前は米国が強ければ世界も強いという常識があったと思います。今は、世界には米国を核とする動きと中国を核とする動きがあり、前者だけ良くても世界全体が良くならない構図が出来てきているように感じます。この辺をもう少し掘り下げることが出来ると良いのですが…
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6 憲法第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
(参考)「公の支配」の意味
○ 「公の支配に属するといいますのは、その会計、人事等につきまして国あるいは地方公共団体の特別の監督関係のもとに置かれているということを意味するわけでございます。」
(平成5年2月23日参議院文教委員会 内閣法制局長官答弁)
○ 「この意味でございますが、これまで私学助成をめぐりまして過去いろいろ国会でも相当な議論が行われました。その結果、現在では、第一に、学校教育法による学校の設置や廃止の認可、そして閉鎖命令。第二に、私立学校法によります学校法人の解散命令。第三に、これが大事なわけですけれども、私立学校振興助成法によります収容定員是正命令、それから予算変更勧告、役員解職勧告などの規定がございまして、これらの規定を総合的に勘案いたしますと、こうした特別の監督関係にあれば公の支配に属しているというふうに解しているというのが現在の状況でございます。」
(平成15年5月29日参議院内閣委員会 内閣法制局第二部長答弁)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/02/dl/s0217-7j.pdf
その昔、憲法をまあ読んだ。その時は憲法とは株式会社の定款のようなもんだとはしらなかった。あくまで物好きで読んだ。またイギリスには成文憲法がない事もしらなかった。その後大陸法と欧米法の違いについて少し勉強したが、事は慣習法か、理念法の違いに過ぎないと理解した。また背後にある哲学が経験論か観念論かの違いだと四苦八苦してしった。
それらをしらないときに憲法を読んだとき、これは一体なんだろう。之を理解することはできるだろうか?司法試験を通過する人々はいかなる理解をするのか?ぽかんとした印象が残った。
さて89条についてだが、89条だけを読むと私立学校への税金の投与は明快に憲法違反だと思う。普通のそれこそ新井女史の言う読解力で読めばそのようにしか読めない。また私立学校は大都市にしかなく地方はない。一応近代国家は平等な行政を理念としているから、なおさらでしょう。そもそも普通の庶民の理解からなる公と私の違いとの落差が大きい。
ごく常識で読めばスポーツにも税金を投与することは憲法違反に過ぎないが、現在其れがなされている。
貸借対照表において仕訳帳と振替伝票という操作がある、驚くべきことにわれわれは中学で、木工、農園 板金加工、そして貸借対照表の書き方まで習った世代です。貸借対照表はやり方だけ学んでそれが何を意味するか、50過ぎてまで関心がなかった。 教育関係のgdpの計算方法は何かはわからないが、この89条どおりに予算を構成して、即座に実行したら、どのようなGDPができるのか?
社会や国を構成する経済要素、要するに皆が生きられる最低の経済物だけに限ってのGDPという考えはありうるのか。
之までわれわれは無駄を元に皆が食べてきた。ケインズもそれをたとえ話で奨励した。これからは其れができないのでは。
戦前の歴史を素人勉強から書くと。どのように考えても、当時の国民が戦争を支持した、問題はその支持と言う行為である。
色々調べると、ラジオと新聞など、メディアが普及しはじメタことによる熱狂があった。内実を見ると、国民は二重の感覚を持っていたように思う。表では戦争支持、裏では反対と言うより、うっとうしいと言う感覚ではないかと思う。しかもきわめて正確な情報を持っていた。
日本政府は気が弱いので、国民に及ぼすこと重大なことに関して、政府は奇妙に、ぽろっと奇妙な表現で、実情を示して、国民が自分で対処せよという。之は歴史的な資質。
さてそれらの多くを含めて、当時の普通の国民は当時の国家政府に対して、何かわるい事をしたのかと設問すると、ない。大きな暴動、政府転覆などサボタージュなどをしたかというとない。
それでも戦争を起こして国民が苦しんだ。この戦争を起こしたのは当時の普通の国民だろうかと考えると違う。政府が起こしたに過ぎない。しかも政府の一部分でしょう。この事実はきわめて重要でしょう。
では現代における財政赤字は国民が起こしたのか?
ただし財政赤字の経済的意味はここでは問わない。必要なものだからです。
現象面では国民が要求したとされているが、それは国民の真の要求か?
違う。
文教予算を見ればいい。生徒が減り、生徒数が大体半分になった、ならば同じレベルのものをするなら文教予算は半分でいいはずですが、違う?
何をしたかというと私立大学を設立して、それに援助をした。ではできた私立大学は国民に益したか?失礼だが違う。そのような現象の歯止めをする仕組みが一応議会としてあるが、それには議員の意識がものをいうが、其れが把握できない。野党も与党もわからない。何を考えているかわからない。実際にそうです。
それですむから これほど上層部が楽な政府はないと思う。
消費税を上げるというが、何をするためにあげるかの前にこれは社会的に何を意味するかを考えるとまずは所得税の免税点が高いことによる税収不足でしょう。
もともと近代生活を営む近代国家は税金が多いのが当たり前だと私は思っているが、其れがどの程度かはわからない。またそのような基本的認識を国民は共有していない。学校教育でもしていない。つまり税金の教育をしていない。異常に尽きると思う。
では消費税の意味はなにか?
その昔。税金はモラルが必要で、何でもかければいいと言うものではない。その例として、当時あった、トルコ風呂の従業員に対して所得税をかけようとした税務署を批判してた。確かに税法はそのようだが其処ははっきり違うと言うモラルが必要だと書いてあった。然し法的には税務署が正しい。ここに法とモラルの衝突点が生じる。わが国は宗教的視点がないからこの方面からの攻撃に実に弱い。そのため命取りになる要素がある。その昔は確か王法と仏法と言った。西洋ではたぶん世俗法と宗教法というだろうが、手には負えなかったものです。
そうか、税金はそれを取るモラルが必要かと電撃のごとく響いた、そして税金があるところの背後にはモラルが必要で、それは何かを最初に考えて、財政がどうのこうのはその先のことだと納得した。
そこで消費税を考えるとこれは消費を抑えるためにする税で、何故消費を抑えるのか。贅沢があるからだということでしょう。ところが消費税はそのようには作用しない。その機能としては消費を抑える働きをして、経済を縮小させる。
ところが税は金のあるところしか取れない。ない袖が触れない。
税金をたくさんほしいのにそれをする消費税は逆に減らす機能を持っている。
この矛盾はわが国経済を根本的に変えるものでしょう。そのくらいのことはわからないだろうか?
対米戦争をしたわが国上層部です。