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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/03/04 06:30  | by Konan |  コメント(6)

Vol.15: 昨年のGDPを振り返る+月例経済報告2019年2月


今回は、2月の内閣府月例経済報告を簡単に紹介します(日銀金融政策決定会合は2月お休み)。また、先日2018年第4四半期(10~12月期)のGDP速報が出たので、昨年1年間のGDPの動きを振り返ります。

まずは月例経済報告から。

(現状評価)
・全体:緩やかに回復している(内閣府) 
・個人消費:持ち直している(内閣府)
・設備投資:増加している(内閣府)
・住宅建設(投資):おおむね横ばいとなっている(内閣府)
・公共投資:弱含んでいる(内閣府)
・輸出:このところ弱含んでいる(内閣府)
・輸入:おおむね横ばいとなっている(内閣府)

(先行き見通し)
・全体:緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある(内閣府)
・個人消費:持ち直しが続くことが期待される(内閣府)
・設備投資:増加が続くことが期待される(内閣府)
・住宅建設(投資):当面、横ばいで推移していくと見込まれる(内閣府)
・公共投資:次第に補正予算の効果の発現が期待される(内閣府)
・輸出:持ち直していくことが期待される。(内閣府)
・輸入:持ち直していくことが期待される(内閣府)

今月は、先月に比べ少し警戒感が強まる表現となりました。ひとつは、恐らくBrexitを意識してか「海外経済の動向と政策に関する不確実性」と「政策の不確実性」への言及がなされました。また、上記の需要項目の説明では省きましたが、生産や企業収益の評価に関し「生産は一部に弱さがみられる」「企業収益は、高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる」と、このところの弱さを素直に認めた表現となりました。

さてGDPです。2月14日に昨年第4四半期の1次速報が出ました。今月8日公表予定の2次速報でかなり数字が修正される可能性もありますが、一応昨年1年間のGDPの動きを振り返ることが出来るようになりました。因みにGDP四半期速報については、1次と2次の間で結構数字が変化する例があります。この点「GDPの作り方が悪い」と日銀やエコノミスト達が内閣府を批判します。内閣府は「頑張ってやっている」との立場ですが、毎月勤労統計問題を契機に政府の統計作成にメスが入ってくれば、何某か変化が起きるかもしれません。

それはさて置き、新CRUのひとり言の連載開始以降、内閣府と日銀の景気の見方を毎月紹介してきました。月により多少の変化はありましたが、内閣府は「回復」、日銀は「拡大」との表現を用い、基調として日本経済が緩やかながらも良い方向に向っているとの判断を示し続けました。

ところがGDPの動きで見ると、昨年は必ずしも順調な1年だったとは言えません。昨年の実質成長率の四半期別の増減率は、
第1四半期-0.2%、第2四半期+0.6%、第3四半期-0.7%、第4四半期+0.3%と、かなり起伏があります。とくに第4四半期について、第3四半期かなり落ち込んだ後だけに、もう少し力強い反発を期待する見方もありましたが、裏切られた格好です。

また年間の実質成長率をみると、2017年をかなり下回る成長率にとどまりました。
2014年+0.4%、2015年+1.2%、2016年+0.6%、2017年+1.9%、2018年+0.7%

昨年は夏場に災害が続き、これが第3四半期のGDPを下押しさせ、ひいては年全体の成長率を押し下げた訳で、やむを得ない面はあります。それでも厳しい言い方をすれば、内閣府、日銀とも大本営発表的な説明を続けてきたと言えなくもありません。

需要項目ごとにみると、以下のようなことが言えそうです。

・個人消費(民間消費支出)の前年比は+0.4%(2017年+1.1%)にとどまりました。最近、毎月勤労統計を巡り実質賃金に注目が集まっています。給与が1%上がったとしても、物価が2%上がれば懐が寒くなるという論点です。このプラスマイナスが話題になるほど、1人当たり賃金の伸びは力強さを欠きます。一方で、雇用者数は増えており、雇用者全体で見た所得は増えています。ただ、既にリタイアされた高齢者の方々には年金支給の実質引下げが見込まれ、「長生きリスク」の備えも必要です。要は、所得環境面で雇用者数増加以外に明るい材料が見られない中で、昨夏のような災害に見舞われると、たちまち個人消費は落ち込みます。昨年はこうした1年だったと思います。

・民間設備投資の前年比は+3.8%(2017年+3.9%)と昨年も力強い伸びが続きました。この需要項目については、日銀が「今余りに良いのでどこかで調整が来る」と指摘するように、流石に先行きの鈍化が予想されます。いつ鈍化が始まるか、どの程度減速するか、日本経済の先行きを占ううえで大きなポイントとなります。

・輸出の前年比は+3,1%(2017年+6.8%)と、伸びはしましたが伸び率はかなり鈍化しました。また輸入が+3.3%(2017年+3.4%)と着実に増加した結果、輸出から輸入を差し引いた純輸出の寄与度は-0.0%(2017年+0.6%)と2017年対比大きく落ち込みました。輸出について、以前このコーナーでIMFの世界経済見通しを説明したことがあります。その際は昨年10月時点の見通しでしたが、その後今年1月に見通しが更に下方修正されました。米国経済はぐっちーの言うように相変わらず元気ですが、欧州、中国、新興国全体として減速傾向です。また、最近よく「半導体サイクル」の話しを聞きます。スマートフォン等の半導体を用いる製品には流行り廃れがあり、どうしても数年に一度下方サイクルに向います。昨秋以降この下方サイクルに入っているようです。そうなると輸出には期待できず、実際、内閣府の月例経済報告はここにきてこの点を正直に認めています。

・公的需要については、全体として-0.0%(2017年+0.4%)、とくに公的固定資本形成(公共工事をイメージください)は-3.0%(2017年+0.7%)と減少しました。予算が減った訳ではないので、工事進捗の遅れのような問題でしょうか。

・金額自体が小さいので普段余り重視しませんが、民間住宅投資が-5.7%(2017年+2.1%)とかなり減少しました(寄与度も-0.2%と無視しえない数字です)。真面目に数字を追っておらず申し訳ありませんが、賃貸住宅の落ち込みが目立つようです。例のスルガ銀行問題の余波が影響しているのでしょうか。

まとめると、現状設備投資以外に明るい材料が見当たらない感じです。その設備投資も先行きに不安があります。そうした状況では、消費税率引き上げは無理とも思えてきます。他方、経済は生き物で、上下双方に動く可能性を残しています。内閣府や日銀のものの言い方を過信せず、丹念にデータを追う姿勢が一段と大切になる1年ということでしょうか。

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6 comments on “Vol.15: 昨年のGDPを振り返る+月例経済報告2019年2月
  1. ペルドン より
    konanさんの・・

    「消費税率引き上げは無理とも思えてきます」
    この言葉に分析に・・
    信心を皆賭けて・・・
    ( ^ω^)

  2. 下北のねこ より
    後継者いるのかなあ

    最近、中央省庁でのトラブルが記事になってますが、官庁は慣例的人事ルールがしっかりしてるし、毎年新人が入り、上の方が退職していく流れは半永久的に変わらないので新陳代謝で組織そのものは大丈夫ですが、その上のポスト、高齢になった大臣さんや、政権党の幹事長さん、代わりになる方いるのかなあ。
    冗談抜きで心配になるレベルです。
    次の選挙、伝家の宝刀、「消費税増税中止、先送り」をまた抜くのかな。
    安倍政権の「消費税増税」はそのためにあるような気がします。

    話題として、関係ないですが、私も谷垣禎一さんの東京都知事に賛成です。
    参議院選挙に使うのはもったいないと思います。
    理由は何より、財務大臣経験者ということに尽きます。
    東京オリンピック・パラリンピックも大切ですが、その後の施設の有効活用始め、オリンピック後の財政の立て直し、通常の生活中心への転換はもっと大切です。それには財務大臣としての評価も高かった谷垣氏は適任だと思います。

    ちなみに官僚出身者だったら、わが岩手県知事だった増田寛也さんもある意味適任なんですが・・・・、なんというかやるまでだったら最適任なんですが・・・オリンピックも築地市場移転問題もうまくやれたと思うんですが・・・・祭りのあとが怖い方です。財政の蛇口がどこにどうあるかがわかってる方で、この方の場合、開け方は巧かったのですが、引き締めが超強烈でした。
    岩手県の建設業者である、おかちゃんさん辺り詳しいかもしれません。

    ソフトランディングを考えるなら谷垣禎一さんが、本当に最適任だと個人的には思います。

  3. ペルドン より
    そつじながら・・下北のねこさん

    都知事の職は激務です。
    真面目にすれば・・!!!
    週の半分も週出勤しなかった太陽族もいたけれど。

    回復されたと言えども・・脊髄の損傷・・激務に耐えうるのかな・??
    参議院なら・・投票行動を除て・高所からの視点で済ませられる。しかし・・

    永田町も人材不足なのはわかるにしても・・御本人の健康が第一。
    次・・負傷の形が気に入らない。同じ形の自転車事故二度目。一回目も重症だったが脚で済んだ。天の警告と悟らず・・二度目を起こした。
    案外・・気になるのです・・こんな形の事故・・・  ( ^ω^)

  4. 下北のねこ より
    森蘭丸

    一般職と特別職は違いますぜ。自分で書類を作るような仕事ではないです。
    自分で仕事量、仕事の形をコントロールできるのが、上に立つものの特権です。
    石原慎太郎氏は、週の半分しか登庁しませんでしたが、ディーゼルエンジン規制や、猪瀬副知事をうまく使い、東日本大震災では見事な対応を見せました。

    谷垣禎一氏の場合、体は動かないけれど知力、体力は十分にあるように見えます。となると必要なのは、それこそ手足です。イケメンで秘書役も決裁もできる「加判奉行」を常時近侍に侍らせておくことが大切でしょう。本当は下の世話までといきたいとこですが、介護的業務は近親者を雇用していいと思います。
    しっかりしたチームさえできれば、能力的にはピカイチですので、心配することないと思います。

    今の知事さん、せっかく二階さんととっても近いんだから、うまく国会に乗り換えて、それこそ五輪担当相狙えばいいんじゃないかなあ。

  5. ペルドン より
    そうか・・・

    下北のねこさん・・
    今の知事お嫌いなのだ・・・
    下北沢のねこになる気だな・・・
    ( ^ω^)

  6. 健太 より
    変な妄想

     今の金融界はゆっくりした恐慌へと進んでいるという見方はいかがだろうか?
    1997の時はコール市場で不渡りが起きたそうで、それは昭和の初めの恐慌時においても起きなかったことだという。
     資産をどんどん、組み替えているがさてどうなることやら。
    戦前満州貿易ないし支那貿易でアメリカと対抗できるという主張があったそうだが、満州開発ですらアメリカ資本が必要だったのが実情だったという。 
     現代文明は西洋キリスト教が作り出したもんだから、いくら支那が頑張っても根本が異なるから、だめだと思う。
     金融資産を蓄えても、つまり飢饉の時小判を持っていても意味がないようなことが起きるのではないか。

     それと東京に大地震が来たとき何ができるか?

    木と土でできた家は燃えればそれでおしまいだがコンクリートはかたずけるに金が必要で、復興費は大幅に増える。簡単なことですけれどもね。

     儒者のような態度で見ているときはもう終わった、江戸時代以来の伝統でその見本は海軍大臣だった及川古志郎だそうですよ。

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