プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/03/18 06:30  | by Konan |  コメント(3)

Vol.16: 政治のこと…


新CRUのひとり言を書き始めて以降、もう役人ではなくインサイダー的付加価値を提供できないことから、金融・経済の動きに話題を限ってきました。ただ、政治への興味を失った訳でなく、今でも時々現役当局者やマスコミ関係者と政治の話しをします。その際の大きな話題は「7月28日の参議院選挙は衆参同時選挙となるか」と「安倍総理の悲願である憲法改正はどうなるか」の2点です。なお、つい最近二階幹事長の「安倍総裁4期目」発言が話題を呼びました。安倍総理・総裁がいつまで今の地位にとどまるかも大きな論点ですが、今のところ世論調査でも4期目の支持は低水準です。10年を超える在任は流石に日本人の気質に合わない気がします。最終的には権力を握ることが目標である他の政治家にとっても受け入れ難いのではないでしょうか。

さて、衆参同時選挙に関し、安倍総理は「頭の片隅にも無い」と一蹴します。ただ、これまでも「無い」と言いつつ同日選挙に打って出て大勝利した実績があります。

「無い」との見方の主な背景は3つです。まず与党公明党の反対。これは4月に統一地方選挙が予定され(春の統一地方選挙と夏の参議院選挙が重なる12年(4年と3年の最小公倍数ですね)に1度の亥年と言われます)、公明党が双方に力を割くことが
難しいことに起因します。次に大義名分の無さ。消費税率引き上げ延期は既に過去の選挙で口実に使いましたし、北方領土問題は大義名分になり得ますが、ロシアの姿勢を踏まえると、都合よく7月の選挙の口実に使えそうもありません。更に、安倍総理は「最長」総理として無事東京オリンピック・パラリンピックを迎えたいだろうから、流石に賭けには出ないだろうとの見方もあります。

他方、「同時選挙あり」との見方も根強くあります。野党は参議院選挙の準備は始めていますが、衆議院選挙を準備するゆとりがありません。この状況で同時選挙に打って出ればまた勝てるというのが、この見方の最大の理由です。大義名分もでっち上げることは不可能でないでしょう。安倍総理はこのままではレームダック化のリスクがあり(だからこそ「4期目」話しが出てきたのだと思います)、その回避のため賭けに出るかもしれません。

7月までまだ時間があり、その時点での景気や国際情勢にも左右されると思いますが、私はどちらかと言えば「ある」方にかけています。

次に憲法改正。ご案内のように衆参それぞれ2/3以上の賛成を経て発議されます。ご存知の方も多いと思いますが、国民投票法によると、国民投票は「憲法全文改正」のような形でなく、「関連する事項」ごとに投票を行うこととされています。「関連する事項」は「1つの条文」の場合もあれば、「関連する複数の条文」のこともありますが、いずれにしても具体的な事項ごとに国民の賛否を問います。事項により賛否が分かれる可能性もあります。現在自民党は4項目を考えているようですが、これはこの国民投票法の仕組みに基づく発想です。

衆参同時選挙があるかどうかさて置き、参議院選挙で与党が2/3を確保する保証はありません。むしろ、流石に今回の選挙では与党が少し議席を減らすだろう(=6年前に勝ち過ぎたので)と言われます。そうなると、安倍総理悲願の憲法改正の前提が崩れます。どうするのでしょうか?

大きく2つの説があります。ひとつは、仮に自公で2/3を割ったとしても、改憲に積極的な維新の会など他の党を加えれば2/3を維持できるので、7月以降も憲法改正発議は十分可能との見方です。これは確かに一理あり、秋以降、憲法改正が本格的に諮られていくことになります。

もうひとつは、7月参議院選挙時に、衆議院選挙の代わりに(ないし衆参同日選挙と同時に)国民投票を行うとの見方です。選挙前なら問題なく2/3は維持されているので発議が可能です。公明党は渋るでしょう。また9条改正も発議するので、選挙に不利に働く恐れもあります。何と言っても、現時点での改正議論の詰まり具合、審議日程の不足(10連休もありますね)、5月1日の天皇譲位を考えると、日程が余りに苦しいのは事実です。しかし不可能とまで言い切れません。

因みに、実務的な観点から「国政選挙+国民投票の同時実施は難しいのでは」との見方をある方から聞きました。「投票箱や投票所や開票の作業員を確保できない」との理由です。憲法改正は事項ごとです。1枚の投票用紙に4項目並べ賛成か反対か記入することも考えられますが、開票時の数え間違えリスクが高まります。4枚の投票用紙に例えば参議院の選挙区、全国(比例)区を加えることが可能かとの指摘です。面白いですね。

私は流石に前者(秋以降に持ち越し)と思いますが、油断せず見ておきたいとも思います。

さて、憲法改正の内容に踏み込むと炎上するので(笑)やめます。ただ、以前から感じていて、英国のEU離脱国民投票以降思いを強めたことがあります。現在のように衆参2/3以上で発議、国民投票の過半数の賛成(投票率が低くとも投票総数の過半で決します)という仕組みが本当に良いのかとの思いです。EU離脱のような重大事を52対48の僅差で決することは、今の英国を見ても分かるように極めて大きな禍根を残し、国の分断を招きます。

私は所謂自主憲法制定論者ではありませんが、現行憲法があたかも「不磨の大典」であり改正すべきでないとの立場にも与しません。改正すべき事項があれば改正すればよく、発議はもっと頻繁にあって良いと思います。しかし、繰り返しになりますが、過半数を僅かに超える程度の賛成で改正されることには違和感を覚えています。

より具体的に言えば、発議は衆参双方の過半数、国民投票は2/3以上(3/5でも良いです)が良いのではないかとの考えです。こうした意見をみることは余りありませんし、Gucci Postを炎上させたくもありませんが、感じていることを書かせて頂きました。

いずれにしても、今年も政治からも目が離せないですね。

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3 comments on “Vol.16: 政治のこと…
  1. KB より
    これからもお願いいたします

    いつも丁寧な解説をありがとうございます。
    特に、日米の金融政策について、正しい目線と読み解き方の基本について、学ばせていただいております。
    また、今日のような、金融から離れた話題についてもとても興味深く拝読いたしました。
    ぜひ、CRUさんの視点からご覧になった、様々な分野の問題点やポイントを共有していただけたらとても勉強になると思っておりますので、宜しくお願いいたします。

  2. ペルドン より
    憲法改正

    施行以来72年・・
    改正するにしても・・
    改正不可能と言える程・・厳しい条件を付けた。
    GHQは満足し・・歴史の中に・消えて行ったが・・
    残された日本人は右往左往するばかり・・

    やっと憲法改正出来る数を得られた関白殿は・・
    バイアグラ服用しても効果がない状態で・・ただ無意味な時を垂れ流し・・
    憲法改正出来なければ・・
    何故・椅子取りゲームのロングランを続けているのか・・
    皆目・・存在理由がない・・
    レーゾンテールの無さは幽霊並・・
    長州には祟られるか・・・
    ( ^ω^)

  3. 健太 より
    憲法というが

     帝国憲法もまもられなかった。ことは簡単で国民が憲法とは何かをしらなかったに過ぎない。まともな法律家においては常識に過ぎないことだと思う

    わが国を庶民段階で動かしているのは憲法を作り出した精神ではない。あれは飾りに過ぎない。手段に過ぎない。
     大体憲法と膾炙の定款が同じ発想のもとにできたものだとは国民にはない。依然として、幕府方式で動いているに過ぎない。幕府の統治方式を今一度よく調べることではないか?
     今きている外交経済の変化はこれまでのものとは質的に大きく異なる。
    今その準備を情けない頭でしている。物事を理解することと、その解決方法を考えることとは別の資質が必要だとはわが杭の学校教育では具体例を挙げておしえていない。これにつきる。
    山本五十六は現状を確かに理解していたがその解決方法を考えるには別の頭が(軍事について)必要だとは考えられなかった。
     そのまえに我が国はその方針に向かっていたが、国民がそれを理解していなかった。我が国には確かにその様な人々がいるが不思議とその道に進み始めると邪魔が生じる。それは自然災害も含めて生じる。
     北海道から沖縄までお客を持つ知人がきて。来る不景気は普通ではないぞといて帰っていった。よく当たる予測をする人です。
     お化けについて考える習慣がない我が国において、みえない事を考えることは
    無理でしょうね。うぬぼれか?

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