2018/12/17 06:30 | by Konan | コメント(4)
Vol.10: 内閣府月例経済報告2018年11月と早目の年末ご挨拶
今年もあと2週間。今回は公表から少し時間が経ちましたが、11月の内閣府月例経済報告(11月22日公表)を簡単に紹介します。日銀の金融政策決定会合は11月は開催されていません(年8回開催の頻度なので)。
(現状評価)
・全体:緩やかに回復している
・個人消費:持ち直している
・設備投資:増加している
・住宅建設(投資):おおむね横ばいとなっている
・公共投資:底堅く推移している
・輸出:おおむね横ばいとなっている
・輸入:持ち直しの動きに足踏みがみられる
(先行き見通し)
・全体:緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響等に留意する必要がある
・個人消費:持ち直しが続くことが期待されるが、当面、自然災害による下押しの影響には留意が必要である
・設備投資:増加が続くことが期待される
・住宅建設(投資):横ばいで推移していくと見込まれる
・公共投資:補正予算の効果もあって、底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:持ち直していくことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響には留意する必要がある
・輸入:持ち直していくことが期待される
今回は表現の微修正はありますが、基本的に10月の判断をそのまま維持しています。
さて、経済指標の見方の続きです。本当は個人消費関連が最も面白いのですが、来年に回し、設備投資について簡単に説明します。設備投資には様々な形がありますが、最もイメージしやすいのは、製造業の企業が工場を建てることと思います。工場を建てる際、工場の建物を建てる必要がありますし、設備機械を導入する必要があります。要は設備投資の基本形は、建設と機械です。この2つの指標を追います。また、先行きを見通すには、企業アンケート調査も有用です。日銀短観のような企業アンケート調査が活用されます。
内閣府も日銀もほぼ同じ数字をみます。内閣府のURLのほか、日銀資料のURLも載せます。日銀の方は資料の19、20頁をご覧下さい。
まずトータルの実績をみるには、数字が出るのに時間はかかりますが、GDP統計のほか、財務省が所掌する法人企業統計が有用です。
次に、一致指標(設備投資の現状を把握するのに有用な指標)として、資本財総供給、建設工事出来高(民間非居住用)が用いられます。資本財は単純に言えば工場に設置され、物を作るため用いられる機械類を指し、民間非居住用の建設は、工場やオフィス、ショッピングモールなどの建物の建設を指します。
先行指標(設備投資の先行きを占うのに有用な指標)としては、機械受注と建築着工(民間非居住用)の2つの指標が用いられます。工場で用いるような機械の注文がどの程度入ったか、工場等の建物の建設がどの程度始まるか、これらを理解するのに役立ちます。
さらに、先行きを占うとともに、設備投資のモメンタム(当初計画通り進んでいるか、上振れ・下振れしているか)を見る指標として、日銀短観が用いられます。日銀短観では、ある年度の設備投資に関し6回調査を行います。例えば2018年度を例にとると、年度直前の2018年3月調査で翌2018年度の計画を初めて聞きます。その後、6月、9月、12月、翌3月とフォローし、最終的には2019年6月調査で前2018年度の実績値が固まります。内閣府資料2頁目右下にその動きが載っています(日銀資料の19頁図表21も全く同じです)。
さて、どの指標をみても、現在日本の設備投資は好調です。大企業が溜め込む巨額の収益や内部留保対比でみると物足りないのは事実ですが、それでも間違いなく設備投資は増えています。東京を始めとする大都市圏でのオフィスビル建築、オリンピック関連投資、人手不足に対応した省力化投資、国内外の需要増加に対応するための能力増強投資、円安を背景とした海外生産から国内生産へのシフトバックなどが背景と思います。
日銀資料20頁図表23を見て頂くと、設備投資の額がGDP対比の比率で急激に高まっていることが見て取れます。これほどの投資が何年も続くとは考え難いので、日銀では2020年にかけて設備投資が減速するとみています。この減速の動きがいつからどの程度起きるか、上記の先行指標や日銀短観をみながら見極めていくことになります。
CRUのひとり言を再開し5か月過ぎました。旧の際は役人だったので、政治に関する話しも書きました。また海外ネタも時々拾いました。今は民間人となり、政治に関する内部情報を持ち合わせなくなりました。また、JDさんの超素晴らしいメルマガも始まり、海外ネタに関する付加価値もありません。このため、日本の金融経済にテーマを絞り、執筆頻度も毎週から月2回に落とし、今回で10回目となりました。
頻度を落としテーマも絞ったことで楽になる一方、旧に比べ一段と面白くなくなった気もします。暫く今のやり方を維持しつつ、どんな書き方が良いか考えてみたいと思います。
まだ2週間ありますが、これで今年最後の執筆です。大変お世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。皆さん、良い年末年始をお迎えください。来年は天皇譲位、参議院選挙、消費税率引き上げ、ラグビーワールドカップと、見えているだけでもいくつか大きなイベントがあります。衆参同日選挙、憲法改正国民投票、北方領土問題などの動きもあるかもしれません。ぐっちーやJDさんがカバーする海外の動きも目が離せません。どのような年になるか楽しみですね。
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4 comments on “Vol.10: 内閣府月例経済報告2018年11月と早目の年末ご挨拶”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
マヤ人なら・・
まだ今年は終わっていないと・・
言うかもしれない。
天体の動きとは別の経済暦が・・必要かもしれない。
その方が把握し易いかもしれない。
いずれにせよ・・
来年は・・春の海ひねもすのたりのたりかな・・と行くでしょうか・???・・・
( ^ω^)
「超素晴らしいメルマガ」、CRUさんからこのようなお言葉をお聞きできて光栄です。ありがとうございます。
私からはぜひ海外ネタもお願いしたいです。刺激になりますので。自在のご健筆を期待しております。
毎回、楽しく拝読させて頂いております。
”旧に比べ一段と面白くなくなった気もします”
とは御謙遜。
現場に関わった方と投資家との目線の違いが大変参考になります。
寒さ厳しき折り、お体をご自愛ください。
>天体の動きとは別の経済暦が・・必要かもしれない。
その昔、高麗尺について書いた本を読んだ。コマ尺と読む。それは奈良時代に建てられた建築はどのような単位で作られたかを追求したもので、学説では高麗尺というものがあったということだった。興福寺を作る単位と法隆寺を作る単位は同じかという疑問です。ことは最小公倍数を求めることですがこれが意外と難しいようだった。
学校教育でメートル法を習ったが幼少期は尺貫法だった。400グラムと400匁を違えて、母親に怒られたことを覚えている。
今も昔も学校教育は単位系を教えられる先生がいないのでは?
これは新井女史たちの直面する問題だと予測している。
時間についても同じ現象がある。太陰暦と太陽暦で、明治の時太陰暦から太陽暦に変わったというが江戸時代の実生活は太陰太陽暦だった。生活は不定時法で太陰暦、農事は24節季で太陽暦だった。
相場において天体の運行をもとにいろいろ予測しているものがあるが、確かに経済歴というものがあればいいですねえ。
それいま設備投資(種植え)だといえる。
お金においても量が質に転嫁する。つまり十進法では対応できず、各部門でそれなりの単位があると思うが下っ端で過ごしたから、わからない。
一円が集まったものが一億円であるがそれは違うなあと理解したのはずいぶん後で、今回予算が100兆超えたというがさっぱりわからない。