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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/12/09 09:00  | by Konan |  コメント(4)

Vol.222: 原発再び


小泉元総理の発言で再び脚光を浴びつつある原発問題。この発言の他にも、福島第一で廃炉作業が開始されたこと、電気事業法が改正されたこと、経産省が新たなエネルギー基本計画の原案(原発を重要なエネルギー源と位置付け)をまとめたと報じられていることなど、原発や電力会社の話題に事欠きません。

このコーナーでも何度か原発問題を取り上げ、また、東電問題に関する意見を書いたこともありました。前者については「自信を持って依存度ゼロとは言えない」「選挙結果を見る限り、原発問題は最早争点ではない」と書き、後者については「電力供給能力の維持と会社の維持は別の問題であり、かつての金融機関破たん処理同様、現在の東京電力株式会社は解体されるべき」と書きました。後者についての意見は変わっていませんが、小泉元総理が問うている前者について、改めて考えてみようと思います。

原発問題が最早争点ではないと書いたのは、昨年の衆議院選挙、今年の参議院選挙を通じ、反・脱原発を掲げた政党が票を伸ばすことができず、親原発の自民が圧勝したことが理由です。そうした状況下、小泉発言ひとつで雰囲気が変わりつつあること自体、彼の存在感を改めて感じさせます。彼の主張はシンプルです。

「原発の稼働を続けると、使用済み核燃料が増えていく」
「わが国には、使用済み核燃料を処理する能力も、能力を高めようという政治的な強さもない」
「そうであるならば、原発を止め、これ以上使用済み核燃料が増えることを防ぐ以外に道はない」

という論法です。当然、「経済に大きな負担を及ぼすではないか」「代替エネルギーに頼ることが出来るのか」「原発を持つことによる軍事上の抑止効果が失われるではないか」といった反論が出ますが、小泉さんらしく「割り切れ」と相手にしません。使用済み核燃料の対応には、単純に言えば、埋めてしまうか再処理を行い再び核燃料として用いるか、2つの選択肢しかありませんが、前者は各原発での対応に限界があり、後者は全く軌道に乗っていないので、小泉さんの主張に一理も二理もあることは否定できません。

ずるい言い方ですが、私は原発を抱えるそれぞれの地域の住民の意思で決めるしかないと感じています。大きな方向感として、(1)原発依存度を引き下げること、(2)代替エネルギー開発や火力発電の環境負荷引き下げに官民挙げて取り組むこと(それが新たな事業機会の拡大につながる可能性もあること)、(3)資源外交力を高め輸入燃料のコストダウンを進めること、の重要性に異存はありません。しかし、それでは例えば伊方や女川をすぐ廃炉するかとなると、そこには個別性があってもよいという気持ちを捨て切れないでいます。

廃炉や使用済み核燃料の処理(例えば地下貯蔵)まで含めた長いプロセスを考えたとしても、原発を持ち続けたいという地域があるのであれば、それを否定する必要はないと思います。原発の問題は、最後は原発を抱える地域に大きな負担を及ぼします。その地域の方が原発の安全性についてどう判断されるか。具体的な住民投票の仕方(例えばどのエリアを対象にするか)には工夫が必要ですが、ストレステストを通過できない、あるいは住民の理解が得られない原発は、再稼働を認めず廃炉へ進んでいく、ストレステストを通過し、かつ住民の理解が得られれば再稼働し存続させるイメージです。結果的には1つも残らないかもしれませんが、プロセス論としてこうした方向しかないように思います。

ただし。1点付け加えるとすれば、住民の理解を得るためには、情報の透明性が不可欠です。しかし、特定秘密保護法の審議過程やその報道により、この点に対する国民の不信感は高まったかもしれません。そうなると、「結果的には1つも残らない」可能性が強まったようにも思いますし、この意味で、私の意見は実際は小泉さんに近付いているのかもしれません。

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4 comments on “Vol.222: 原発再び
  1. ペルドン より
    原発again

    癌に例えれば・・
    全身移転・・
    最早・・手遅れ・・
    癌と違うのは・・毒素だけではなく・・
    電力供給・・プラスもある・・

    あるが・・
    何処かの国・・
    ミサイルの標的・・絶対間違いない・・
    そんな外的要因もある・・

    やはり・・癌には違いない・・
    違いないが・・
    手術・・摘出となれば・・国民保健適用しても・・天文学的費用・・最大難病・・
    手術成功しても・・体力喪失にも・・なりかねない・・

    故に・・
    決断・・
    政治家の問題になる・・
    国民の覚悟になる・・

    で・・
    小泉発言・・その前の小沢発言・・
    いずれも・・本質・・貫いている・・明日を貫いている・・

    貫いているが・・
    現政権・・自民党政権では・・
    決断出来得る・・とは・・到底思えない・・
    さりとて・・
    次の手・・打てる程・・頭脳明晰でもない・・我等も・・

    このメビュウスの輪・・
    ゴルディオスの結び目・・
    解けるとは・・到底思えない・・
    大王が要る・・・(笑)

  2. Audley End より
    アメリカの

    シェール革命によって、ぐっちーさんもおっしゃっているように、世界の地図が塗り替えられようとしていると思います。 いつの時代も「エネルギー」が世界を動かす重要なファクターのひとつになっていることの証で、日本は今まで以上に、真剣に長期的な視野を持つことが必要なのではないでしょうか。 まだ技術が確立されていませんが、日本にとって本命のエネルギーがあると思いますので、そこに資金と人材を投入することが喫緊の課題かと。。。

    私の印象では、オバマ大統領はものすごくスマートな人で、これまでの大統領と思考回路がかなり違うと感じます。 それだけに敵も多いわけで、ケネディ大統領のようなことにならないように、細心の注意を払っているのかもしれません。 アメリカがアジアに軸足を移そうとしているのは間違いないような気がしますが、サウジやイスラエルにとっては、この上なく面白くないことでしょうね。

    日本は、いろいろなしがらみや、立場もあり、何事も中途半端になりがちなところがありますが、原子力政策についても、合理的な視点を持たないと、将来に払いきれないツケを残す可能性もあります。 更に日本は、中央集権から地方分権へと移行する必要があるように思いますが、東京オリンピックの開催が決まったことにより、東京への一極集中が益々進むという、逆のベクトルが生じています。 サイアクの場合を想定しての備えが必要なのかもしれませんね。

  3. パードゥン より
    小泉さんも今度は自民党を追放される

     北、粛清された張成沢氏を処刑なんでしょ。 権力闘争というのは凄まじいですね。  かって、小泉さんは、亀井さんを自民党から追放し、今度は、小泉さんの番という事でしょう。  因果応報、自分の創ったルールに自分がひっかかる。

     今の日本の政治は、自民党の派閥政治が各政党とも同じようになってきたという事でしょう。  当然に本家本元の自民党はこれから親分間の闘争が始まり、それには特定秘密法に違反したが、違反の内容は公開できないというような事がおき得ないとは限らないという事でしょう。

  4. パードゥン より
    グッチーを都知事候補として解析してみませんか?

     資金は問題ないとして、政治人脈は不足ですので、それは目をつぶってください

    CRUさんの、得意の分析、分類分析で地方政治家としての、グッチーの可能性について論じてみてください。   彼がこれからやりたいといっている事は、投資家よりも地方行政の長のほうがやりやすそうに思いますし、稼げる地方は大バブル崩壊後の
    日本を復元するのに有用そうです。

    CRUさんは政治家を見、また、公務員として政治家はこうあってほしいという観点の思いも溜まっているでしょ(笑)  その目から、朋をCRUさんの得意の冷静な目で見て何か最後に書いてください

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