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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/10/07 09:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.213: 消費税


安倍総理が、来年4月の消費税引き上げを決断しました。消費税については、以前このコーナーで取り上げたことがあり、長々と書くことは控え簡単に3点。

政治プロセス的にみると、野田前総理時代の3党合意が、政権交代後実行に移されたという、「特異」な事象です。その過程で2度の国政選挙がありましたが、消費税増税を支持する自公が勝利し、小沢さんのように反消費税を掲げる政党(そして反原発を掲げる政党)は完敗しました。選挙結果を見る限り、国民は消費税増税に賛成していたことになりますが、直近の世論調査などをみると、実態は、選挙結果と異なり反対の方がかなり多い(半数の方は反対している)状況ではないかと思います。

当たり前のことですが、選挙においてどの政党に投票するか、あるいは棄権するかという選択は、必ずしもある政党の政策にリンクする訳ではありません。民主党への政権交代時は「自民に飽きた」ことが勝利の主因だったと思いますし、昨年の総選挙は「民主を許せない」との雰囲気が自公勝利の主因で、この夏の参院選はアベノミクス人気に乗ったということと思います。しかし、理由はさて置き衆参両院の構成が定まると、消費税であれ、憲法改正の発議であれ、両院の多数意見が国会で通ってしまい、(憲法には国民投票手続きがありますが)それですべて定まります。結局、そうした結果があり得ることにまで想像を巡らせて、投票行動に移すことが重要な訳ですが、それがなかなか難しいことも否定できません。

第2に、以前消費税について書いた際、「期待値の問題であり、国民の判断の問題」と記しました。消費税を引き上げるケースと引き上げないケース、すなわち、

(A)引き上げると、かなりの確率で引上げ後の景気後退が生じる
(B)引き上げないと、確率は極めて低いかもしれないが、国債の信認の崩壊という極めてまずいことが生じ得る

という2つの事象について、確率と起きうる事態の深刻さを掛けて期待値を算出し、A、B2つのケースを比較するしかない、しかしどちらの期待値が大きいかよく分からないので、最後は、国民が上記2つのケースがあることを十分に認識したうえで選択するしかない、といったことを書いた訳です。

最近の論調をみると、上記の比較を行ったうえで、Bの方が心配なので消費税引上げに賛成する、との議論をみかけるようになりました。報道された黒田日銀総裁の発言も、こうした内容と思います。私も、AとBのどちらが心配かとつきつけられれば、Bの方が心配と答えたくなります。Aは予見可能である一方、Bは予見が難しい(不確実性が大きい)だけに、かえって心配という思考回路です。ただ、この点は引続き異論があり得ると思います。

第3に、そうした中、消費税引上げを円滑に行うためのばら撒き措置が決定、ないし検討されています。低所得者対策は不可欠と思いますが、法人税率引き下げを含め、かなりの規模の対策が検討されている状況です。法人税については、以前「六重苦」シリーズの中で触れたことがあり、「財界が要望する6つの政策のうち、もっとも国民の理解を得にくいのではないか」と記しました。今回も「消費税引上げで一般国民が負担を負うのに企業の税金が下がるのは、感情論として受け入れられない」との声が、政権や与党の重鎮からも聞かれ、正義論としてはその通りと思います。

他方、総理は法人税率引き下げに熱心なようで、その理由は、企業収益増を国民の所得増につなげやすくなるから、ということと理解しています。この点、ぐっちーは以前「そもそも日本企業は内部留保をため込み過ぎで有効に利用していない。法人税率はむしろ引き上げても良いくらい」とブログ等で主張したことがあり(今もそうかもしれません)、法人税率引き下げにより本当に企業の労働分配政策が変わるかどうか、異論もあるところです。

それにしても、消費税を上げるためかなりのばら撒きが必要という構図が本当に良いことなのか、疑問が残ります。消費税引上げには賛否両論ありますが、賛成の立場は、将来の社会保障負担財源を確保し、ひいては日本の財政の信認を維持することが不可欠との意見に基づくものです。この考え方とばら撒きは矛盾します。どことなく筋が通らないと感じてしまうのは、私の頭が固すぎるからでしょうか。

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2 comments on “Vol.213: 消費税
  1. ペルドン より
    私の頭が固すぎるからでしょうか

    固いか・・
    柔らかいか・・
    奥さんが・・
    一番・・知っているのでは・?
    愛人かも・・知れないが・・・(笑)

  2. ばすがすばくはつ より
    税は取るだけではなく財源となる

    消費税は税として取られることに対する拒絶反応が強すぎます。
    国民会議の結果として後期高齢への総報酬割り(これについては加入者割から安くなる団体も多いとか・・。)などで社会保険料も増額されることになるでしょうから、お財布は大変なことになる。
    医療については、このまま何もしなければ、いままでのフリーアクセスができる状態は難しいのではないでしょうか。公が準備できなければ民間から買うしかなくなるのは世の常。
    社会保障の財源を確保して助かるのは低所得者や地方の方々なんだと思います。

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