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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/07/29 09:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.203: 参議院選挙を振り返る


参議院選挙は、「自公圧勝」と総括されています。確かにこれに尽きますが、とても簡単に、自分なりに気付いたことを記そうと思います。なお、議席数は先週月曜時点の報道から拾ったもので、拾い間違い、計算間違い、その後の修正などがあるとすれば、ご容赦下さい。

第1に、自公について。圧勝であり、衆参ねじれも解消されました。ただ、微細にみると、少し違う観点もあると思いました。自民単独過半数には届かなかったこと、一人区でも全勝ではなかったこと、自公で今回の改選議席中2/3には達しなかったことです。

(a)自民は非改選を合わせて115議席。242議席の過半数には達していません。
(b)全勝を狙った一人区ですが、岩手と沖縄で敗北を喫しました。
(C)自公の今回の当選者は76議席。改選議席の2/3は越えませんでした。

(a)は、公明党を無視し得ない状況が続く点で、大きな意味があります。(b)は、今後の選挙で一人区で野党が何をなすべきか、示唆を与えます。(c)は、中選挙区を含むなど選挙制度の違いがあるため、単純な比較は危険ですが、自公で2/3を超えた昨年の総選挙に比べれば、勢いがピークアウトしてきた可能性を示します。

第2に、自民、公明、維新、みんなを足すと、162議席。丁度参議院の2/3です(小数点までみれば、越えていると思います)。これは、公明党も賛成できるような内容に限ったうえでの憲法改正案であれば、96条の改正無しでも、衆参両院で改憲の発議ができることを意味します。とても大きなことと思いますし、近々改めて取り上げようとも思います。

第3に、全く別の観点ですが、「最近の選挙予測はよく当たる」という感想です。今回、安倍総理が「1998年の参議院選挙敗北の二の轍を踏まない」と発言されていましたが、かつては選挙予想と実績がかなり異なることもありました。しかし、昨年の総選挙やその前の民主党政権奪取時の総選挙を含め、最近は予想がほぼ当たる印象です。

この点、あるマスコミの方に「予測手法が高度化されたためか」と聞いたところ、「否」との答えでした。勝ち馬に乗る、長いものに巻かれる方向に、国民の行動様式が変わってきているというのが彼の仮説でした。因みに、今回の投票率は史上3位の低さでした。ネット選挙導入にかかわらずのこの結果は、「無関心」と「勝ち馬に乗る」の双方が進んでいることを示しているように思えます。ますます、現在の国民投票法の「投票者の過半数の賛成で改憲」との仕組みが怖くなってきました。

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2 comments on “Vol.203: 参議院選挙を振り返る
  1. ペルドン より
    国民投票法の「投票者の過半数の賛成で改憲」との仕組みが怖くなってきました

    はい・・
    怖くなって下さい・・
    愛用・・国産尿漏れパンツ・・進呈しましょうか・・・?

  2. Audley End より
    東日本大震災という

    あれほどの大惨事があったにもかかわらず、日本を未来へと導くための変革への歩みは、その速度が緩慢であるようにも見えますが、変化は間違いなく起こっているようにも感じています。

    しばらく前にNHKで再放映された『ライオン 空前の王交代劇』という番組を見て、考えさせられるものがありました。 タンザニアのセレンゲティ国立公園の中に、他の群れと比較にならない大きなライオンの群れがあり、その王が死んだことにより、群れが大混乱に陥ります。 そこから、新しい王が誕生するまでの紆余曲折が克明に映し出された映像で、30年以上に及ぶ研究者たちのフィールドワークの中でも、初めてとらえることのできた、とても貴重な映像であることも紹介されていました。

    弱肉強食の厳しい自然の中で種を存続させるために、ライオンの世界にも「鉄の掟」があり、それによってライオンの社会が成立していることがよく伝わってきました。

    では、人間はどうなのか? 世界が密接に結びついている現代は、あらゆるものが同時進行的に起こります。 地球という「閉鎖系社会」の中で、憎しみをあおるようなやり方は、未来を拓くよりも、閉じる方へとベクトルが進みかねません。 復活したサザンオールスターズの『ピースとハイライト』にも、そのことへの危惧が表われているように感じました。

    選挙の投票へ行くことは、もっとも重要な意思表示の一つです。 「無関心」や「勝ち馬に乗る」のはそれぞれの自由ですし、これまでは、それでもやってこれたと思いますが、日本が今、直面しつつある現実を乗り越えていくためには、別の投票行動が必要になっているような気がします。 もし政治に無関心でいると、大変な事態を招く可能性がありますし、その結果は、好むと好まざるとに関わらず、ひとりひとりに返ってくることも避けらないのではないでしょうか。

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