2013/07/08 09:00 | by Konan | コメント(1)
Vol.200: デモ
国際的には、エジプトの政変が大きな話題になっています。本件については近々感想を書きたいと思いますが、今回は、その少し前、トルコやブラジルで起きたデモ(暴動)について記そうと思います。トルコに関しては「これでオリンピック誘致が有利になる」と内心ほくそ笑んでいる方も少なくないと思いますし、イスタンブール市長の「これではオリンピック誘致の夢が断たれる」との発言も報道されています。ブラジルの暴動も、コンフェデレーションズ杯開催を機にしたワールドカップ開催反対運動と結び付いていて、要はデモとスポーツの巨大イベント開催問題がリンクする構図になっています。因みに、エジプトの2年前の政変時には、エジプトでの開催が予定されていたIMF・世銀総会の場所が東京に変更され、スポーツではありませんが、巨大イベント開催地に大きな影響を与えました。
以前このコーナーで東京オリンピック誘致について書いたことがあります(個人的には「反対でない」との意見でした)。その際、英国BBCのロンドン五輪に関する「経済的にみればそう大きな効果はない(ただオリンピック自体に反対ではない)」旨の報道も紹介しました。今回、ある米国の番組で、ブラジルのデモを支持しワールドカップ開催に反対する方の声を耳にしました。彼女の発言の骨子は、「ワールドカップは国民に益をもたらすと言われる。しかし、現実には会場建設のため長年住み慣れた住居を追われる貧しい人たちも多い。また、そもそもワールドカップの収益はFIFAに行ってしまうし、ホテル建設等で潤うのは、既に富を持っている人たちばかりである。無論、ビーチでアイスクリームを売る本数が増えるといった恩恵が全くないとは言わない。しかし、ワールドカップ開催に数十億ドルの金をつぎ込むのであれば、それをすぐに貧困層の支援に回すべきである。サッカーは好きだが、今のブラジルはワールドカップを主催する段階にはない」とのもので、とても説得的に聞こえました。
ブラジルとトルコでは状況の違いも大きいと思います。トルコでは政権に対する独裁批判がデモの根底にあるのに対し、ブラジルは直截に「経済・貧困」がテーマのように思います。また、ブラジルはBRICSの一員として大きく躍進した後、最近経済が急速に不安定化したいわばジェットコースター状態にあるのに対し、大国トルコは、もう少し以前からIMF借入問題が起きるなど、経済がなかなか飛翔しない状態にあります。トルコに関しては、そのEU加盟問題を巡るメルケル独首相のコメントが報道されるなど、一国、あるいは五輪開催に止まらぬ、国際政治的な含意も強く持ちます。
ただ、大きく考えると、2000年代における「新興市場国経済発展」という手放しに喜べる状況から、リーマン・欧州危機を経て、2010年代以降、新興市場国経済に関し楽観視できない状況に入ってきたと考えることもできます。ワールドカップやオリンピックのような大イベントは、構想にも時間を要し、発案は経済が順調だった2000年代に起きたはずです。その環境が大きく変わる中で、引き続きイベント開催を追い求めるのか、もう少し違う方向を目指すのかということが、今回の2国のデモの背景にあるのかもしれません。また、そうした中でこうした大イベントをどこかの国が主催しなければならないとすれば、日本や東京にもそれなりの存在意義があるということかもしれません。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
One comment on “Vol.200: デモ”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
どうも”政治リードのあり方”を皆さん取り違えたようです。 最も誤解したのは政治家で原発が爆発してからでは、政治トップでも首相一人では何もできなかったし、今も何もできない。 もし政治主導を正しく理解して爆発前から”原爆被災国である事を考えると、エネルギー価格低減の道は厳しくても日本の総力をあげて脱原発の技術開発で克服しましょう”とか4年前の政権奪取から言ってくれていればと思います。 もう少し国民合意がとれるロードマップが今頃できていたでしょう。 検証された技術の数も多かったでしょう。 マンデラさん、スーチーさん、古くはガンジーさん、無理と思えることを時間をかけて主張しつづけて、味方だけでなく反対者からも賛同者がでて山が動きました。 理念もなく、法律をいじくるように憲法をいじくっても、人の心が動いていなければ、自民党の郵政民営化で同士を追い出しようなことが国内でおこるだけ。 トルコもブラジルも不満は政治と庶民の心が離れていることで、目標が実現されていない為ではないと思いますよ。
次の誤解したのが公務員さんで”政治家、貴方考える人、私実行する人”で政治家につき従えばいいだけではないでしょう? 自分の考えを確かに持ちながら、課題・問題を政治にぶつけて、その上で最終選択を政治家に委ねるようでないと。 政治家は、思いつき的で、大数とか全体調和とか過去との整合性とか苦手でこれは勉強で選抜されてきた公務員さんが得意の分野でしょうに!!
日本は社長もトイレの掃除婦さんに敬意を表して”使って良いですか”と声をかけ、技師長も職工さんに頼る形で実現性を確認するなど職務の異なる人への信頼と敬意を大切にしてきました。 公務員さんが、もっと自信を持って自立してくれないと庶民は困ります。 特に国立大学にはその為に沢山、庶民の税金が投入されていると理解してます。