2016/01/19 03:17 | 米国 | コメント(4)
オバマ大統領の一般教書演説
■State of the Union(1月12日付ホワイトハウスHP)
■「未来に焦点を」 オバマ米大統領が一般教書演説(1月13日付BBC記事)
ちょっと遅れてしまいましたが、オバマ大統領最後の一般教書演説。
内容については報道で述べられているとおりなので詳しく述べませんが、最後の演説ということで、これから通す法案などの話は控えめにして、米国民に対して米国の未来を語ることを意識し、レガシーと大統領選(特に反トランプ)に重点を置いたものになっています。
それにしても、オバマの演説は、何回も聞いているので皆さんもう慣れてしまったかもしれませんが、本当に凄いです。米国の大統領で演説の名手といわれるのはビル・クリントンで、これはもう今なお伝説レベルと評価されていますが、オバマの演説力はこれに勝るとも劣りません。歴史上のリーダーの中でも突出したレベルといって良いでしょう。
振り返ると、オバマが全国レベルで名を挙げたのは2004年の大統領選(ブッシュ対ケリー)における民主党大会でした。ここでオバマは連邦上院議員としては新人に過ぎなかった(その前にはイリノイ州上院議員を8年務めたのみ)にもかかわらず、2日目の基調演説という大役を任されます。ここで聴衆を魅了する圧倒的な演説を披露したことが、わずか4年後に大統領に就任するという劇的なサクセス・ストーリーにつながりました。私は当時ワシントンDCにいて演説に接しましたが、このときの彗星のごとくスーパースターが現れた衝撃は、今でもおぼえています。
そんなわけで、オバマをこれだけ短期間に大統領にまで押し上げたのは、何と言っても演説の力だったと私は思います。演説は民主政治において最も重視される要素ですが、特に米国では、スピーチを大切にする文化があり、非常に高く評価されます。
『スミス都に行く』という映画を見ると、ジェームズ・スチュワート演じる田舎の若者が突然に連邦上院議員になり、ベルトウェイで右往左往した後、素朴さを失うことなく、最後に大演説を披露して終わるのですが、これが米国政治家の一つの理想像なのでしょう。
大統領に就任した後も、オバマの演説はどれをとっても素晴らしいものでした。英語やスピーチを勉強したい人にとっては良い素材になるでしょう。これがあと1年で聞けなくなるというのはさびしいことですね。
この演説のうまさに代表されるように、オバマ政権の特徴は、表面的な完璧さ、失点の少なさだと思います。これだけスキャンダルやはっきりした失策がなかった政権はめずらしいです。もちろん外交政策(特にシリア)は破たんしているとか、政策論を語ると色々な評価はありますが、誰の目から見ても失敗だったと言い切れるような問題は少ないです。
これはオバマのスマートさ、弁護士出身ならではの守りの堅さに起因しているのでしょう。オバマはとにかく不人気な大統領で、特に議会での評判は惨憺たるものですが、このサイボーグのような完璧さが多くの人たちにとってはなじみにくかったのではないかと個人的には思います。クリントンも頭脳明晰、スマートさではまったく劣りませんが、人間味というか、南部出身の暖かみのようなものがありました。セックス・スキャンダルも愛嬌といっては言い過ぎでしょうが(笑)。
いずれにしても、オバマの時代は終わり、米国政治の焦点は大統領選にシフトしつつあります。大統領予備選は2週間後の2月1日からいよいよスタートします。予備選については見所などを来週詳しく解説したいと思います。
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4 comments on “オバマ大統領の一般教書演説”
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に大統領選(反トランプ)持ち込んだのは・・オバマが初めてと言われている。
これは毀誉褒貶あるだろう・・格を下げたとみられる。
他方・・
オバマは演説だけだ・・と言う批判は根強い・・
オバマの流麗な演説には魔力があるが・・人々が求めたのは・・理想の実行だった。
オバマには・・多くの期待・・改革がかかっていて・・弁護士としてではなく・・大統領として・・それに応えられたか・・そつのなさだけが評価とすれば・・
評価は後世にゆだねるにしても・・
「黒人初の大統領」という固定評価だけが・・勲章になってしまう・・
弁証法(術)はギリシャで発祥し・・ローマに受け継がれ・・支配層はまず・・この弁論術を学んだ。当然欧米にも・・この伝統は引き継がれているが・・日本にはこの思想は根付いていない・・
ソクラテスの弁論術は名高いが・・ギリシャ人ならこの程度の弁論術は出来た。
ある男が弁論術を師について学んだ。上達したら報酬を支払う条件だった。上達とたので・・師が求めたが・・弟子は支払わなかった。裁判になった。
師・・『私が勝訴すれば、報酬は当然支払らわれる。もし私が敗訴したら・・師を負かせられ程・・弁論が上達しているのだから・・報酬は支払われるべきだ』
弟子・・『私が勝訴すれば、当然支払わなくてもよい。もし私が敗訴すれば・・まだ弁論術が上達していない証拠となる故・・支払わなくてもよい』
オバマの演説には・・この師弟の弁論を胎児されている。
どうもお久しぶりです。こっちは九州なのにやたらと寒いので往生してます…。何で仙台より寒いんだよ…。まあそれはともかくも個人的な意見としては表題の通りですかね。まあ言ってる事と実際の現実とはかなり乖離しているのがすべてじゃないですかね…、政治は結果がすべてと言われている通り、何を言ったかではなく何をやってきて実現できたかが問われるものではないかと。まあこれはアメリカだけでなく日本の政治家にも言えることなんですが。今年の夏に選挙が行われますが、何を言ってきたかではなく何をやってきたかで見るべきかと考えて投票します。
ゲーツ国防長官でしたか
「オバマには自分の戦争だという認識がない」
と辞任したのは。
教授のようなレトリックを使いリベラルを演出する演説。庶民、労働者の味方、理想主義を演説するが、実はpragmatic。冷酷、打算的、自分の政治的利益しか計算してない。金持ちの味方。大企業、金融産業、ヘッジファンド、投資銀行、プライベート・エクイティ・ファンドの味方。金融産業に手厚い政策をしてる。ヘッジファンドはブッシュ時代より遥かに儲けてる。アメリカ人は
「この人って本当に計算高いな。この人って冷たい人なんじゃないか」
頭がいいんで、ドジを踏まない。ボロを出さない。逃げ足が速い。アメリカはGDPの18%を医療に使いながら、バカ高い医療。5000万人が医者に行けない。国保のような医療改革するようなこと言って逃げる。政治家に、「本当にやらなくていいから」。保険業界に「損させないから」。あまりにズルくて逃げ方が上手いんで
「この人、何?理想主義なんて、何処にあるの?」
皆に好かれなくなってきた。speechがカッコよく理性的に見えるだけで、大局観も責任もない。因みに、金融産業、保険業界の献金の70%が民主党に流れる。
日本のメディアがトンチンカンなコメントを出している中で唯一のJDさんだけがまともなコメントで安心しました。解説を加えてないのも原文を読めばわかるだろという意味だと理解しました。自分の偉業を誇ることなく、民主主義の根幹を問うたオバマ大統領の本音にも、そこまで言っていいものかと驚きました。1年目でこの演説をしていたら本当に抹殺されていたかもしれません。私はここまでやったよ、次はあなたの番だよ、ともとれるメッセージは(間違った理解かもしれませんが)本当に感動的でした。米国民に受け入れられるか受け入れられないかは別にして、国のトップが至極まともなことを言っていることに米国の底力を感じました(他国のエリートは一部反発するものの、こういうメッセージで安心するのではと妄想しました)。
まあ、素直にとってしまう私も青いだけなのかもしれませんが。