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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/01/07 00:00  | by Konan |  コメント(0)

Vol.174: 新年特集(その1、経済)


新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。例年、1月は新年特集として、その年の注目点を記してきました。今年もそれを踏襲し、経済、政治、国際の3つのテーマを取り上げようと思います。

経済については、リーマン危機があった2008年以降、不安定な状況が続いています。IMFの世界経済見通しをみると、2013年は実質経済成長率で+3%台半ばと、好調時の5%台に比べかなり低い予想に止まっています。世界経済の大きな流れを振り返ると、2000年代初のITバブル崩壊後の経済の落ち込み、そこからの回復を目指した世界規模の金融緩和と中国経済の躍進を背景とした経済回復、そしてバブル経済への突入、リーマン危機に象徴されるバブル経済の崩壊、欧州危機、中国の成長率低下と、極めて大きな変動を繰り返してきました。現時点では、欧州、米国、中国経済がどうなるかが焦点です。

欧州経済は現状0%近傍の成長に止まっています。昨年は何度もユーロの崩壊が心配されましたが、欧州中央銀行による大胆な金融政策、欧州共同ファンド創設、銀行監督一元化などの努力により、何とか最悪の事態(地球最期の日)は回避され、今日に至っています。また、今年は2月のイタリア選挙、9月のドイツ選挙の2大イベントがありますが、逆に言えば、メルケルが生き残るか否かが具体的に取沙汰される秋までは、大きな波乱要因は無いとみることもできます。しかし、実体経済面をみると、昨年初頃までは、周縁国危機の中でも独などの大国はむしろユーロ安を背景に好調を続けていましたが、今ではこうした国の経済も冴えません。欧州では財政緊縮がキーワードであり、そうした中で経済が急に上向くことは期待しづらいところです。また、域内の個別国レベルでは、ユーロという統一通貨を用いることの代償として、自国通貨安を通じた経済回復も見込めません。ということで、欧州については、ユーロ崩壊は引続き回避されるが、経済は不冴えな状況が続くという見方が、やはり常識的なように思います。なお、最近ではギリシャ国債金利も大分落ち着いてきましたが、万一今後緊縮努力不足のような問題が再浮上した場合、ユーロ圏内での備えが大分出来てきただけに、逆にギリシャだけならユーロから切り離せるとの見方も出てき得る点には、注意しておく方が良いかもしれません。

米国経済についてはぐっちーに譲る方が良いですが、オバマ再選自体、景気が最悪の時期を脱しつつあることを米国民が感じ始めている証左と思います。財政の崖の問題も、越年ギリギリのタイミングで妥協が図られました。米国に関しむしろ重要なのは、数年前まで3%台と思われた潜在成長率が、2%台に低下してしまったことです。バブル経済崩壊の後遺症はそう簡単には払拭できないということと思います。日本でもバブル崩壊後、5%近くあった成長率が2%以下に落ち込みました。日本の場合少子高齢化問題の影響も大きいので、米国について日本と同じことが当て嵌まる訳ではありませんが、世界最大の経済の牽引力が1%ポイント分低下してしまったことは、意識しておくべきと思います(ただし、もう少し長い目で見ると、シェールガス革命の影響で米国経済が再び力を取り戻す可能性もあります。次々回に国際面を取り上げる際に少し触れてみます)。

中国については、日中関係の観点(これも次々回触れてみます)を除くと、2桁成長から7%台の安定成長に移行する過渡期にあるとの認識で良いと思います。国内には引続き投資の機会もあり、財政出動の余力もまだ残っているので、経済が崩壊してしまう心配はしていません(あるとすれば、新政権を巡る政治的な混乱を契機とした変調でしょうか)。ただ、さすがに2桁成長の再来を望むことは難しく、世界第2の経済についても牽引力が2%ポイント程度低下してしまったことは、やはり意識しておくべきと思います。

まとめると、2013年は、昨年に比べ波乱は少ないが、引続き力強さに欠ける展開というのが私の(平凡な)予想です。日本経済については、消費税引上げ問題とも絡むため、次回に譲ります。

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