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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/11/12 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.166: 米国大統領選挙


至る所で書き尽くされた感はありますが、米国大統領選挙の感想を書こうと思います。

昨年の秋、まだ共和党の大統領候補も決まっていなかった頃、また、米国経済に関し何ら良い兆しが見えなかった頃、偶々米国で留学時代の友人に会う機会がありました。彼は米軍の対イラク戦争にも参加した、現在軍事関係のシンクタンクに勤める人物です。そのシンクタンクは民主党系なので明らかにバイアスがかかっていますが、その時彼は、「共和党の候補は間違いなくロムニーになり、オバマと争う。最後はオバマが勝つ。なぜならロムニーのようなタイプは米国人に好かれないから。米国の選挙は好かれるか好かれないかで決まるもの」と話していました。その予言が見事に的中しました。また、ぐっちーも早くからオバマ勝利、更には僅差ではなく大勝を予想していたので、改めて彼の洞察力のすごさに感服しました。上院と下院のねじれは解消されませんが、州知事選を含め、全体として民主党の方に分があった選挙の印象です。

選挙戦を振り返ると、オバマ大統領の最大の弱みは、景気問題でした。失業率、住宅など少しずつ良くなってきている感じはありましたが、それを実感できるまでには至らず、父ブッシュ大統領がクリントンに敗れた選挙の再来もあり得たところです。また、米国の報道番組をみていると、よく「オバマが今後4年間で何をやりたいか、見えない」との発言が出演者から聞かれました。それほど、4年前に比べ勢いがなくなっていたことも事実と思います。

ロムニーについては、財界での活動の経験、州知事時代の財政再建の実績などを売り物にしていましたが、そうした実績はまやかしではないか(例えば州知事時代の失業率改善は、実は公的セクターの雇用を増やしたからではないか)といった批判が常に付きまとい、民主党から多数の個人攻撃を受けました。また、減税等の主要政策に関し、数字の裏付けが無い(日本の民主党のマニフェストのように!)との批判も受けました。

ロムニーが最終盤で主張を穏健な方向に切り替えたため焦点はぼけましたが、最終的に両者の違いは富裕層に対し増税をするかしないかに絞られたように思います。そして、選挙民は「増税せよ」に傾いたということと思います。

米国の報道番組では、議会の機能不全や二極化についての深刻な懸念が聞かれます。実際、今回の選挙戦も、政策論議というより個人攻撃合戦の様相が強かった感じがします。このように政治が混迷した状況で、本当に財政の崖と呼ばれる事態(単純に言えば、減税の終了や財政支出カットが合成の誤謬のように同時に起きてしまい、GDPが数パーセント落ち込むリスクのことを指します)が避けられるのか、不安も隠せません。また、得票率で50対48と僅差なのに、選挙人の獲得数にこれだけ差が開いたことは、共和党を支持する各州の不満が一段と強まる可能性を予感させます。日本でも例えば都市部と地方では支持政党に違いがありますが、そうした違いとは比べものにならない多様性、そして分裂の可能性を感じます。

このような米国の政治ですが、素人目には、それでも日本より機能しているように見えてしまいます。また、中国の首脳決定プロセスに比べ極めて健全です。これは、単に隣の芝は青いということに過ぎないのでしょうか。それとも、大統領制や一院制(英国のように実質的に一院制の国を含め)下の議院内閣制と、二院制の下の議院内閣制との間では、やはり物事を動かす力に違いがあるからなのでしょうか?あるいは、政治家の人材の層に違いがあるのでしょうか。そのうち今回も予想を当てたぐっちーと酒でも飲みながら話してみたいと思います(もうすぐ忘年会シーズンですね!)。

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One comment on “Vol.166: 米国大統領選挙
  1. ペルドン より
    大統領選挙

    一口で・・
    無理強い・・
    今まで・・米国を・・良いにつけ悪いにつけ・・支配してきた・・白人クラス・・少数派に転じた・!?
    それが・・顕著・・
    もしくは・・その兆候・・台頭・・

    移民政策・・維持すれば・・する程・・
    白人クラスは・・少数派にならざるを得ない・・宿命・・

    隣の芝・・常に青く・・
    その隣から見た・・隣の芝も・・常に青い・・
    隣人は・・常に豊かに・・幸せそうに・・見える・・・(笑)

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