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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/11/05 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.165: 日銀展望レポート


今回は、先日公表された日銀展望レポートの紹介です。このコーナーで展望レポートを採り上げるのは、もう7回目でしょうか。展望レポートは、半年に一度公表される日銀の最も重要なレポートで、先々2年程の景気や物価の見通しが、具体的な数字で示されるほか、日銀の金融政策運営の基本的考え方も明示されます。今回は、このレポート公表とともに更なる金融緩和政策が打ち出されるとの報道が早くから流れ、それを受け円相場が円安に振れたこともあり、とくにその内容に注目が集まっていました。

結果は皆さんご存知の通りです(今回は重要な公表物が3つもあるので、それぞれのURLを掲げることはしません。興味がある方は、日銀のHPにアクセスし、10月30日の新着情報をご覧ください)が、まとめると以下の通りです。

(1)景気や物価の見通しが下方修正されたこと。具体的には、実質経済成長率の見通しは、2012年度が従来の+2.2%から+1.5%へ、13年度が+1.7%から+1.6%へ、そして新たに示された14年度見通しは消費税引き上げの反動から+0.6%とされました。物価上昇率見通しは、12年度が従来の+0.2%から-0.1%へ、13年度が+0.7%から+0.4%へ、そして14年度は+0.8%とされました。海外経済の不調や日中関係の影響などが背景とされています。

(2)この見通しを背景として、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく軌道を踏みはずさないようにするため、2つの政策が打ち出されたこと。ひとつは、これまで今回の金融緩和の軸となってきた国債やREITなどを買い上げるための特別な基金を80兆円から91兆円まで引き上げたこと。もうひとつは、金融機関による貸出増加を支援するため、3年間金利0.1%の低利支援融資の導入を決めたこと。

(3)さらに、日銀総裁と2人の大臣の連名で、デフレ脱却に向け、日銀と政府がそれぞれ行うべきことについて、共通の理解をまとめた紙を公表したこと。

結果的には、91兆円への増額については物足りないとの受け止め方が多い一方、貸出増加支援策や政府との共通理解の公表に意外感があったため、市場に対しては中立的(一段と円安や株高になることも、失望で円高や株安になることもあまりない)な決定内容だったと感じます。貸出支援策については、3年間0.1%で日銀からお金を借りられるわけなので、金融機関としてはかなり美味しい施策です。それを元手に、企業への貸出が増加することが期待される訳ですが、総裁会見等でも「円建貸出や国内向け貸出に限らず、外貨建て貸出、海外向け貸出でも構わない」と強調されていて、数年前にあった円キャリートレードが復活し、円安方向に振れていくのではないかとの見方もあるところです。

共通理解の方は、ぐっちーが逸早くブログで取り上げたように、よく読むと日銀の方は従来の主張を繰り返す一方、むしろ政府の方が経済構造改革に向けた努力を約束する、日銀にとって有利な文書となっています。別な言い方をすると、デフレは日銀の単独犯ではなく、政府と日銀の共犯であるとの文書で、よく政府側がこの紙で譲歩したな、というのが私の感想です。

金融政策については、次期総理の最有力候補である安倍自民党総裁が日銀法改正に踏み込む発言を行い、また、偶々白川総裁の任期が来年4月に迫るなど、政治化の要素が一段と強まっています。ぐっちーのような少数派を除き日本人の多くが嫌う円高について、日銀の緩和不足が原因との批判が根強いことも事実です(あるラジオ番組で、「シャープの人員整理は円高のせい、円高は日銀のせい、従ってシャープの従業員は社長ではなく白川総裁を恨むべき」といった論評を聞いたこともありました)。

私は、円高問題についてもともとぐっちー派ですし、日本経済の問題の責任を全て日銀に求める考え方は、行き過ぎないし自分が本来やるべきことをやらない言い訳に過ぎないと思う場面も、少なくありません。他方で、金融の更なる緩和が具体的にどのような問題を引き起こすのか、余りピンとこない面があることも否めません(以前、日本を再びバブルが襲うことがあるのだろうかと、このコーナーで書いたこともありました)。

このように、自分の立場が定まらないのが正直なところですが、来年春に向けての様々な動きについて、引き続き注目していきたいと思います。

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One comment on “Vol.165: 日銀展望レポート
  1. ペルドン より
    4月までに・・

    総選挙があるか・?
    あれば・・
    どの党・・実行支配するか・?
    総裁留任の可能性・・零でもなく・・

    選挙なければ・・
    内閣・・既に・・判断力が失せ・・永田町遭難・・
    救助の名目・・総裁のイス・・財務省の手に・・も有り得る・・・

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