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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/06/18 00:00  | by Konan |  コメント(5)

Vol.145: 消費税(その4)


消費税についての最終回です。現実の世界では与野党合意が成立し、衆院で議決されるか、会期が延長されるか、今週大きな山場を迎えますが、このコーナーではそうした現実を離れ、初回に「大事な問題。しかし同時にどうでも良い問題」と書いた真意を説明します。

よく統計学で「期待値」という言葉を用います。ある事象が起きる確率をα、ある事象が起きた場合に生じる事態の大きさをAとすると、α×Aが期待値です。例えばサイコロを振ると、1から6の目がそれぞれ1/6の確率で出るので、「サイコロを振った際出る目の期待値は(1+2+3+4+5+6)×1/6=3.5」となります。

消費税引上げ行う場合に生じ得る事態の期待値と、引上げを行わない場合に生じ得る事態の期待値は以下の通りです。

(消費税引上げの場合)
極めて高い確率αで消費や景気全般の後退というマイナスの事態が生じます。シリーズ初回に書いたように「期待」を織り込むと多少マイナスの大きさが緩和されるかもしれませんが、それにしても相応の大きさのマイナスが生じるはずで、それをAと記します。そうすると、消費税引上げにより生じ得る事態の期待値はα×Aとなります。

(消費税を引き上げない場合)
最悪のケースでは国債が暴落し、金融システムが危機に瀕し、円も暴落し、悪性インフレも発生します。このマイナスの大きさは絶大で、明らかにAより大きなものになるはずです。しかし、本当にこうした事象が生じるかどうかという確率はαよりかなり低いはずです。これをβ×Bと表します。α>β、A<Bの関係があります。

私は、この2つの期待値には余り差が無い(α×A=β×B)と思っています。つまり、「消費税引上げによりほぼ確実に発生する悪いこと」と「消費税引上げを避ける結果もしかすると発生するかもしれない悪いこと」を比べると、ほぼ同じとの考え方です。直感的に言えば、例えばα×A>β×Bが明らかであれば、誰も消費税引上げを考えませんし、α×A<β×Bが明らかであれば、誰も消費税引上げに反対しないはずなので、両者はほぼ拮抗した裏腹の関係にあるだろうとの考え方になります。

α×Aにしてもβ×Bにしてもいずれも悪い事態で、悪さ比べをしている訳ですが、
(1)「確実に起きる」と割り切って毎年相対的に小さなマイナスを我慢することと、
(2)「起きないでほしい」と祈りつつ運悪く起きてしまった場合極めて大きいマイナスを甘受すること、
このいずれが良いか選択を求められていることになります。

官公に代表されるリスク回避的な主体は前者を選び、そうでないリスク愛好家は後者を選ぶことが普通です。消費税問題は重大な問題です。しかし、結局のところ国民の「選好、リスク回避度」を問うていることになります。アリとキリギリス、うさぎとかめの童話では、アリやかめが勝つのが常識です。しかし、童話が常に正しいわけでもありません。「キリギリスでもうさぎでも構わない」というのが国民の選択なら、それはそれで良いのではないでしょうか。この意味で「どうでも良い問題」と書きました。そのうえで大事なことは、引上げにより確実に起きるマイナスの大きさと、引き上げないことにより確率は低いが起きるかもしれない大変なこと、その2つをしっかり理解したうえで、「どちらを好むか、どちらに賭けるか」判断することに尽きると思います。

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5 comments on “Vol.145: 消費税(その4)
  1. ペルドン より
    その・・

    心情的・・
    消費増税・・
    消極派記事・・

    消費税10%・・
    賛成派数と比例するか・・・?

  2. パードゥン より
    財政として同じでも、国体の視点が欠けてません?

     財政としては変わりがなくても、国体(国民体育大会ではありませんよ。どういう主体を支配層とし、被支配層とするか)は大きく変化します。 消費税の導入と橋本さんによる1回目の増税がされた状態で、サラ金負荷が最大化し社会は中の中が厚かった時代から、中の下の世界になっています。 配達読者の減少により、新聞が構造不況に陥っている事、デパート・ストアからコンビニ・ドンキーに移っている事、ホンダが上から2段階の車種を廃止した事など、事例の枚挙に暇はありません。

     今回2度目の消費増税が計画されていますが、これで、日本は時間をかけて自然に支配層(上の上)と被支配層(下の上)の世界に分化していきます。上下は人格的な意味ではありません。メカニズムは現金でなければいけない事情が生じる度にアンフェアートレード(シュガーベービーは金色夜叉の親の能力不足版?)の連鎖が起きる事です。貧乏人はリスク率が高いという竹中理論に従い高金利借金が増えます。シャークスピアは金銭で返済を認めず、本人の肉で返済する契約の履行話を書いていますね。こんな時は親なら家を、恋人ならわかりますね、相手の希望するものを献上する事になり、階層を落としていく事になりますね。オートパイロットは壊れ、アルゼンチン、ギリシャ型になっていきます。

     民主党がそれを意図しているのか、社会経験が少なく、偏差値が低く、文学もあまり読む人がいない為に、無知の涙を流す事になるのかは判りません。

     どちらでも同じではなく、あくまで一つの視点では同じという事なのに、大変なミスリードを犯しかねないという危惧を持ちます。

  3. j-trade より
    期待値はイコールではない

    消費税引き上げの場合でも、最悪のケースが発生する確率は(あまり変わらず)残るので、その可能性も織り込むべきでしょ。

  4. Token より
    時間軸ではどうでしょう?

    1年後に起こる悪いことと、10年後に起こる悪いこと、とは同値でしょうか?

    「今日やらなくてよいことは、今日やらなくてよい」というのは、一方の真実では?

  5. ブンソン より
    リスク回避というが

    それは金融システムのリスクであって、日本人の生存リスクではないでしょう。良識のある日本人はお米と漬物とみそ汁で生きていく覚悟が出来ていると思います。いまアメリカで細々と続けられているように金融システムを規制してソフトランディングさせる、それに成功したら金融システムそのものを改変再構成していく(真の日本独立の一環)ことだと思いますが。

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