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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/03/21 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.80: 農産物価格を巡って


大地震、原発以外のテーマは、何を取り上げても切迫感が無く見えてしまいますが、もともと地味なこのコーナーなので、今回は、先月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議でも話題になった農産物価格について取り上げます。本件、日銀の中曽理事が研究グループのヘッドに就任されました。日本人がG20のような場で中核的な役割を果たすことは極めて稀で、成功を祈りたいと思います。

農産物価格は、2年ほど前天候不順を主因に大きく値上りした後、暫く落ち着いていましたが、最近再び急激に値上がりし、2年前を上回る品目もみられる状況です。この結果、食料品を中心とした物価上昇(インフレ)の問題に加え、最貧国において生命にすら関わる問題が生じており、今年のG20議長国であるフランスが、大変熱心にこの話題を取り上げています。

農産物価格の値上がりの背景として、よく以下の3点が指摘されます。

1つは循環要因。天候に大きく左右されるのが農産物価格の宿命でもあり、今年の収穫期を越えないことには値下がりは見込めないというのが、大方の見方です。地球温暖化の影響かどうか判然とはしませんが、素人目には最近の気候はとてもヴォラタイル(振れが大きい)に感じます。

2つ目は構造要因。その1つは新興国がどんどん裕福になるため、需要が増加し価格が上がるというメカニズム。もうひとつは、農産物の生産や流通・在庫の効率がなかなか上昇しないこと。例えばインドでは農産物の何割かが流通の過程で腐ってしまうそうです(裏を取っていない話しなので、間違いかもしれませんが、インド人でもそう話している方がいました)。

そして3つ目が農産物価格の金融商品化。投機マネーの流入により、農産物価格が思うように操られるという問題意識で、フランスはとくにそうした思いを強く持っているようです。

この問題について感想を2つ。

1つは、ここでも「金融商品化」が悪のように語られています。しかし、金融や投機は先行きの価格を見通したり、上昇・下落といったリスクをヘッジしたりするうえで、本来重要な役割を果たすはずです。金融化が悪者という見方は一方的に過ぎると思います。丁度数年前ヘッジファンドが全ての問題の根源と言われたのと同じ過ち、即ち却って問題の本当の姿を見失う恐れを感じます。

2つめは、構造問題のうち、生産や流通に関する点において、日本の技術をもっと活かせないのだろうか、という点です。日本復活の鍵が農業というのは流石に過大評価かもしれませんが、このような構造問題に対する日本のノウハウは大変優れているように思います。そして、それを外交にしっかり活かせていけるといいのですが。こうした発想は、外務省と農水省の縦割り(縦割りと言えば、今回の大震災対応でもこの問題が露呈しています)の中では埋没してしまうのでしょうか。あるいは、商社を中心に民間の力による貢献を進めていくことが正道なのでしょうか。いずれにしてもとても大事な観点と思えます。

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One comment on “Vol.80: 農産物価格を巡って
  1. ベルドン より
    復活

    日本復活の鍵が農業・・・
    案外・・的を射ている・・のでは・?・・
    但し
    カン内閣に・・出来るだろうか・・??・・・

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