2010/10/25 00:00 | by Konan | コメント(2)
Vol.59: 為替介入と人民元
今回は「為替相場」について。9月半ば以降の日本の介入、人民元問題等について触れたいと思います。本来はcurrency warと呼ばれるもっと広い問題として捉えるべきですが、今回は部分的な話しにとどめ、大きな話しは数回後にとりあげます。
為替について復習すると、「市場」においては、2つの国の間の「金利」「期待インフレ率」「その他の心理的要因(気分、雰囲気のようなもの)」の違いにより、為替相場の方向が決まります。金利が高いほどその通貨に投資すれば儲かるので、魅力が高まり強くなります。期待インフレ率が低いほどその通貨に投資しても損をしないので、魅力が高まり強くなります。心理的に「大丈夫」「安心」と思えるほど、その通貨の魅力は高まり強くなります。心理的要因の背景は様々ですが、「圧倒的な軍事力」「市場の厚み、市場機能の大事にされ方」「政治の安定」など、金利・物価以外の全ての要因が反映されます。
ちなみに、「金利が高く期待インフレ率が低い」ほどその通貨は強くなる訳ですが、そうした状況が実現するのは、「実質」期待成長率が高い国ですので、そうした国の通貨は切り上がる宿命にあります(「心理」面で余程の問題を抱えない限り)。
市場で取引される通貨については、上記の要因で為替相場は決まってしまうので、いくら介入でそれを変えようとしても、一時的な効果しか持ち得ません。それなのにわが国で介入信奉者が多いのは、以前も書いた通り、今50歳以上で事業の中核にいる人たちが、「ニクソンショック後の円切り上げ」「プラザ合意後の円高」という原体験を持ち、「為替は政治の意志で動かせる」と信じているからだと思います。しかし、振り替えれば、そうした70年代、80年代には、ドル−円でみると米国経済が衰退を始め、逆に日本経済が隆盛を極め、「1ドル360円」のような円安相場を人為的に維持することは最早出来ないタイミングに来ていました。だからこそ、「米国経済はもう駄目」という米国を含む政治の意思表示を受け、為替が経済の実態に合わせ急激に動いた訳です。そうした実態無しで為替を動かそうとしても土台無理な話です。
ところで、人民元問題は、まだ人民元の決定を市場に委ねていない、日本で言うと精々1ドル308円の頃と同じ状況の問題です。基本的には、人民元とドルを換える際、中国政府部門を介在せざるを得ない仕組みが維持されているため、人民元相場は中国政府の意のままに動きます。これは介入以上に強力な仕組みですが、考え方としては、「市場の中で介入により相場を動かそう」という思想と「為替を市場外で決めてしまおう」という思想は同じ方向です。尖閣問題で対立を深めた日中ですが、ほぼ時期を同じくして、為替問題では同じ歩調をとっている訳です。そうした日本が、G7、G20のような場で中国を批判する資格はありません。また、人民元を問題視する米欧その他の国々が、わが国の介入を支持する訳もありません。
それでも介入を継続する本当の意味は、中国にエールを送ることで、貸しを作り、尖閣のような問題を有利に進めることかもしれません。菅総理はそこまで考えているのでしょうか?
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2 comments on “Vol.59: 為替介入と人民元”
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首相は・・
最初の・・三分の一・・
官房長官は・・
三分の二・・
最後の三分の一・・未到達・・・
何も考えてないとおもいます^^)/