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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2010/09/27 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.55: 日銀と政府


今回も日銀について。政府との関係に焦点を当てたいと思います。今回も基本条文から。

第3条第1項:日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。

第3条第2項:日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。

第4条:日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。

日銀の独立、政府との関係についてよく報道されますが、条文そのものをご覧になられる機会は余りないかもしれません。上記に日銀HPの日銀法のURLも載せておきました。

基本的には3つのことが書かれています。

第1に、金融政策に関し日銀に「独立性」を与えること。法律用語では「自主性」という言葉が使われています。今回は立ち入りませんが、世界の歴史の教訓を踏まえ、金融政策の判断は中央銀行という政府とは別個の組織を作りそこに委ねた方がよいという考え方が、1998年の法律改正により初めて日本に持ち込まれました。

第2に、「独立」とは言っても、政府と無縁ではないこと。第4条に書かれたように、政府との密な連絡、十分な意思疎通が求められます。また、第19条も見て頂くと分かるように、金融政策決定会合には政府から2名出席し意見を述べ、場合により議決の延期を請求することも出来ます。ただし、議決権は与えられていません。

第3に、「説明責任」が重要であること。中央銀行に判断を委ねるといっても独善であってよいはずはなく、しっかり説明し、批判を受け、その批判を踏まえ判断の軌道修正を図っていく「謙虚さ」が求められます。これと関連し、第54条では、国会での説明責任に関し、より詳細な条文が規定されています。

政府と日銀の関係について、実は上記以外に言うべきことは思い当たりません。大変良く出来た法律と改めて思います。枠組みとして、「日銀の判断の尊重」「とは言っても政府と密接に連携を取れ」「そしてちゃんと国民に説明し、誤りに気付けば改めよ」という考え方は至極真っ当と思います。また、そうした枠組みの良さを無視するような形で法改正議論が出ていることも、大変悲しいことです。

他方、よく「器は出来たが魂が入っていない」ということがあります。3つ感想を記します。

第1に、政府との意思疎通について、「総理と総裁が会う」だけでスクープ報道になるような環境はばかげています。上記のように意思疎通は法律で求められています。騒がれることが馬鹿らしいとすれば、以前の経済財政諮問会議のように、ある種定例化してしまうことも、結果的には良いことかもしれません。

第2に、日銀に独立性はあると言っても、国民の批判に晒されることが法律の前提になっています。しかし、金融政策に関しては、一部の学者を中心とした狂信的とも思える批判以外、余り真っ当な取り上げ方がなされないと思います。残念ながら日本の経済・金融学界、あるいは経済部記者の層は厚いとは言えず、もう少し活性化されないものでしょうか。一例を挙げれば、日銀が90年代以降編み出した政策が、現在欧米の中央銀行に採用されています。かつて「日銀が無能だから失敗した」と非難されましたが、実際には、欧米の中央銀行は「そうか。日銀のようにやるしかないんだ」と気付き、政策対応を行っています。要は日米欧の中銀は横並びです。しかし、日本では、引続き日銀と、FRB、ECB、BOEは別物のように取り扱われ、日銀は駄目、欧米は良いかのように言われます。これはフェアとは思えません。

第3に、日銀が謙虚なのか?例えば量的緩和政策の自己評価が十分なされたのか?量的緩和政策については、プラス面、マイナス面の評価が日銀自身によりなされていることは事実です。しかし、物事にプラス、マイナスがあること自体は至極当然で、むしろ、「どういう場合マイナスを捨象してでもプラスを取りに行くのか」といった更なる考察を行い、外に問うていくことが必要ではないでしょうか。

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One comment on “Vol.55: 日銀と政府
  1. ぺルドン より
    言い回し・・

    形を変えた・・
    日銀批判・・
    いや・・
    忠告かな・?・・・

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