2010/07/05 00:00 | by Konan | コメント(1)
Vol.43: 日銀の成長支援
今回は、日銀が今般開始する成長基盤強化支援のための資金供給について取り上げようと思います。4月末に検討開始がアナウンスされ、6月半ばにその詳細が明らかにされました。8月末頃から実際の資金供給が始まるようです。
制度の概要を簡単に整理すると、民間金融機関が日本経済の成長力向上に役に立つような融資を行う場合、その融資実行額の範囲内で、日銀がバックファイナンスを行うというものです。バックファイナンスの期間は1年間、ただし3回までロールオーバー可能なので、最長4年間資金供与を受けることが出来ます。担保は通常の資金供与同様、国債等優良なものが求められますが、金利は1年間を通じ資金供給時(ロールオーバー時を含む)のO/N金利水準と、とても有利です。
成長力強化に役立つ融資の多くは、通常の融資に比べリスクを伴います。例えば農業向けなど典型例と思います。そうしたリスクを取りやすくするためには、本来日銀がエクイティを供給すれば良いのですが、恐らくそれはやり過ぎということで、「最長4年。金利0.1%(利上げ局面ではもう少し高くなりますが)」という有利な資金供給をインセンティブにしようとしたと考えられます。
さて、この新たな施策は結構批判されています。批判のタイプは3つに分類できると思います。
第1は、「中央銀行が何でも屋になることは危険」という批判です。日本では90年代の危機以降、世界でも数年前から、各国中央銀行は「非伝統的」金融政策を展開しています。必要に迫られてのことですが、「度を過ぎると、政治が過度に中央銀行に期待するようになってしまい、中央銀行に独立性を与えた意味が無くなる」との心配も生じます。
第2は、「目くらましはけしからん」という批判です。この批判は、「日銀はデフレ対策のためやるべきことをやっていない。それをやらずに、違うことに手を出すのは、本来やるべきことをサボろうとしているため」との考えに基づくものです。今回の日銀の政策は、最近白川総裁が強調する「デフレは金融政策だけで解決できる問題ではない。日本経済の成長性が高まること無しで、問題は解決しない」という考え方に拠るものと言えますが、第2の批判派からみると「デフレは金融政策を上手く運営すれば解決できるはず」ということになります。
第3の批判は、第1、第2と違い、プラクティカルなものです。例えば「民間金融機関には成長力を掘り起こすような融資能力は無い。従って、民間金融機関融資のバックファイナンスだけでは力不足」とか「このため、バックファイナンス対象となる融資の範囲を広げようとするかもしれないが、それが行き過ぎると単なる低利資金供給による金融機関の収益支援にとどまってしまう」といった批判です。
私は、どちらかと言えば第3派に近い感覚です。第1、2派ともに余りに理念的で、現実を直視しているように思えません。例えば第1派については、「国が破れて中央銀行が残る」ことはあり得ないはずと感じますし、第2派については、「金融政策だけで問題が解決するほど楽な状況ではない」と感じます。そうした中、「金融政策で出来ることはやってみよう」と様々な政策に取り組むこと自体は、ポジティブに評価したいと感じます。ただ、民間金融機関がリスクを取って本気で成長力強化に向けた融資に取り組むのに必要十分なインセンティブまでは与えていない、従って政策効果は乏しいだろうというのが、私の見立てです。この見立てが裏切られるほど、民間金融機関、そして日本企業が頑張ってくれるといいのですが。
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One comment on “Vol.43: 日銀の成長支援”
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第四派・・如何なる政策・対策があろうと・・
日銀は・・政府の代役を・・務められない・・
つまり
国民が・・大衆が・・信頼する・・
政府が・・誕生しなければ・・総て机上論にすぎない・・
彼らはヘルメット・・マスク・・鉄パイプがあれば・・大衆を指導出来る・・と信じてから・・変わっていないのであります・・まだ・・内閣府で・・スクラム組んで・・行進中であります・・過激・刺激だったか?!(笑)