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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2009/11/16 00:00  | by Konan |  コメント(0)

Vol.10: いざなぎ景気越え回顧


今回は、今後の経済政策のあり方を考えるうえでのひとつの手がかりとして、2002年初から2007年秋まで続いた、「戦後最も長期にわたる!」景気回復局面について、簡単に復習しておきたいと思います。その際、いろいろな見方があるでしょうが、ここではGDP(国内総生産)に絞ってみたいと思います。

読者の殆どの方はGDPの概念に熟知されていると思いますが、私のようにもともと経済学部出身ではないものにとって、意外に分かりづらい(よく言えば、奥が深い)点もありますので、はじめに、いくつかリマインドしておきたいと思います。

まず、GDPは「ある期間に国内で生産された富=付加価値」という概念です。つまりストックではなくフローの概念です。また付加価値ですので、例えば小麦粉などの材料を全て輸入し、国内でパンを作ったという例の場合、例えば材料費が25円、パンが100円とすれば、国内で価値が加わった75円分がGDPに計上されます。

次に、生産と言いながら、実際は需要面から捉えられることが多いと思います。要は、生産された富は必ず誰かが消費(需要)してくれると考え、消費(需要)サイドから計数を把握するわけです。上記のパンの場合、個人に消費されれば個人消費に計上されるという形です。自動車の場合、国内で個人に買われる(個人消費)より、海外の人に買ってもらう(輸出)方が重要になっています。国が買ってくれれば公共投資のような公的支出です。他方、国内で消費されても、輸入品の場合、生産は国外ですから、その分はGDPから差し引きます。ちなみに、GDPの55%が個人消費、16%が設備投資、輸出も16%、公的支出は21%、このうち公共投資は4%程度、という比率を占めます(2007年度、実質)。

第3に、名目と実質について。上記のパンの例はとても分かりやすい名目の話しです。ところで、物価が全て2倍に上がったとしましょう。パンは200円、材料50円、付加価値150円と名目ではなりますが、それで経済が成長したと考えることには違和感があると思います。そうした物価の変動の影響を除去し、「要するにパン1個生産した」と考える概念が実質で、経済の状況をみる場合、名目GDP以上に、実質GDPが重視されます。

以上を前置きとして、景気回復期に重なる2002年度から2007年度の6年の間のGDP成長率から何が言えるか、特徴を整理したいと思います。

第1に、この間、実質GDPは累計で12.1%成長したのに対し、名目では4.5%成長でした。6年で12%ですので、1年平均で2%程度成長していた(それしか成長しなかった)ということ、名目との差である7.6%分、累計で物価が下がってしまったということが示されます。今回の景気回復は戦後最長なのに実感がないとよく言われましたが、年2%という数字、あるいは身近な名目値(上記の例では、パン屋さんからすれば、100円という売り上げ金額が1個という数字より身近に感じられると思います)がそれ以上に伸びていない、ということが背景にあります。

第2に、この12%の成長は何によってもたらされたのか?寄与度分析をすると、最大の功労者は輸出で、12.1%のうち、実に7.7%を占めます。次は、やや意外なことに個人消費で4.1%分。ただ、考えてみると、この間デジタル家電が普及し、また、経済のサービス化が進み、遊興に限らず、教育や介護等、サービスの利用が進んでいることを考えれば、またGDPのうち半分以上が個人消費であることを考えれば(少しの伸びでもGDP全体を押し上げる)、納得できることかもしれません。その次は企業の設備投資で3.7%分。製造業の国内回帰などと言われた時期、確かに設備投資は伸びていたわけです。他方、公的投資は、この間−2.6%分とマイナスの寄与です。公的投資自体は6年間で4割減少で、その寄与度が−2.6%ことになります。なお、公的支出全体では−0.7%分の寄与度なので、投資以外の支出はそれなりに膨らんでいたということにもなります。なお、この他の項目では、差し引き項目である輸入の寄与度は−2.8%、住宅投資は−0.6%です。

以上をまとめて、以下の3点を感じています。第1に、やはり輸出が最大の原動力であり、小泉改革だけで日本の景気が回復した訳ではないということ。中国をはじめとする、その後サブプライム危機につながった世界的な経済ブームが、日本経済の最長の成長を支えていたということです。第2に、それでも小泉改革が無意味であったとまでは言い切れないかもしれないということ。公的投資4割減という思い切った改革が自民党政権の下でも現に行われたという事実、そのマイナスのインパクトを乗り越え、まがりなりにも経済は成長したという事実、GDPには出てきませんが、金融が不良債権問題を克服し、経済成長を支えるため必要な金融仲介機能を発揮できる態勢を何とか整えることができたということ(この点は異論もあり得るところですが)、など、軽視できないと思います。最後に、「それでも2%しか成長できない日本なのか」という点。今後の鳩山政権の下での成長戦略に関する議論を注視していく必要があります。

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