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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2024/06/17 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.237: 日銀国債買入れ減額!


今回は先週13・14日に開催された日銀金融政策決定会合の紹介です。前回は「日銀国債買入れ減額?」と題して書きましたが、半分当たり、「?」が「!」に変わりました。ただ、今回の日銀の決定は一種の予告にとどまり、詳細な決定は次回7月に持ち越されました。このため日銀はハト派的と受け止められ、会合直後はむしろ長期金利低下・円安方向で市場は反応しました。

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減額していく方針を決定
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以下が公表文の抜粋です。

次回金融政策決定会合(中略)の後については、金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう、長期国債買入れを減額していく方針を決定した。市場参加者の意見も確認し、次回金融政策決定会合において、今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定する。

ポイントは以下の通りです。

・目的は長期金利がより自由な形で形成されるようにすること。
・詳細な決定は次回(7月30・31日)。その先1~2年程度の減額計画が決定される。
・その前提として、市場参加者の意見も確認する。

また、日経報道によれば、会見で植田総裁は以下のように発言しました。

・減額する以上、相応の規模になる。
・7月に減額と利上げを同時に決定することはあり得る。

前回書いたように、日銀は毎月の買入れ額以上に、保有残高が金利形成に与える影響に注目しています。買入れ額が保有国債の償還額を下回れば、保有残高は減少します。次回会合では、少なくとも今後1~2年程度の償還予定が示され、買入れ減額も踏まえ保有国債残高がどの程度減少するか示されるはずです。

また、この減少は日銀バランスシートの資産側の動きですが、負債側では金融機関が日銀に預ける当座預金の残高も見合って減少するはずです。米国のQTでは、資金決済を円滑に行う上で重要な役割を果たす当座預金残高をどこまで圧縮できるかも注目されています。

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景気判断は据え置き
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今回のように展望レポートがない月(3月、6月、9月、12月)とある月(1月、4月、7月、10月)とでは表現が異なり比較が難しい面もありますが、判断はこれまでとほぼ不変でした。

(現状)
・基調:一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
・個人消費:物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の下押しが続いているものの、底堅く推移している
・設備投資:緩やかな増加傾向にある
・住宅投資:弱めの動きとなっている
・公共投資:横ばい圏内の動きとなっている
・輸出:横ばい圏内の動きとなっている

(先行き)
・海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる

(リスク要因)
・海外の経済・物価動向
・資源価格の動向
・企業の賃金・価格設定動向
・金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響

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普通の金融政策は難しい?!
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3月の利上げに続き、バランスシートの縮小に動き始めた日銀。植田総裁就任1年2か月で大きく状況が変化しました。FRBの過去の出口戦略=リーマン危機から脱した後の正常化過程=が参考になるとはいえ、欧米中央銀行が利下げ局面に入った・入ろうとしている中での引き締めとなること、日本では為替が円安になっても円高になっても非難されることから、とても難しい局面が続くと思います。日銀史上最高の知的レベルを誇る植田・氷見野・内田体制の今後に注目したいと思います。

今回はこの辺で。

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