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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2023/12/18 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.217: 日銀短観改善


今回は13日に公表された日銀短観を簡単に紹介します。業況判断改善継続が特徴でした。

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業況判断は引続き改善
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業況判断は数字が大きいほど良く、「良い」「悪い」の回答が拮抗するとゼロ、マイナス幅の拡大は業況悪化を表します。以下の仕入価格・販売価格等も同じですが、理論的には-100(全社「悪い」と回答)から100(全社「良い」と回答)の間で数字が動き、0が拮抗点です。

最も注目される製造業大企業は、前回9 今回12 先行き見通し8と3回連続で改善しました。とくに自動車は前回15 今回28 先行き17と、先行き慎重とは言え大幅改善です。いわゆる供給制約の緩和や輸出企業には有利な円安が、他の悪材料をおさえた格好です。製造業全体では前回0 今回5 先行き2です。前回までマイナスだった中小企業の判断が今回プラス圏内に入った(前回-5 今回1 先行き-1)ことも話題となりました。

非製造業大企業は、前回27 今回30 先行き24と改善で、バブル期以降では最高水準です。コロナ禍の影響を最も受けていた宿泊・飲食サービスは前回44 今回51 先行き39と絶好調。半数以上の先が「良い」と回答した格好です。非製造業全体は前回16 今回18 先行き12です。

全ての企業の業況判断は、前回10 今回13 先行き8でした。

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仕入価格は落ち着き方向
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仕入価格・販売価格とも「上昇」の回答が「下落」の回答を上回る構図に変化はありませんが、判断の数字自体は低下傾向です。

大企業で説明すると、製造業の仕入価格は前回48 今回43 先行き38。販売価格は前回32 今回26 先行き20。非製造業は仕入価格で前回43 今回41 先行き44、販売価格で前回27 今回26 先行き28です。

注意が必要なのは、引続き「上昇」の回答が「下落」の回答をかなり上回り、かつ、仕入価格判断の数字が販売価格判断の数字を超える(=仕入価格上昇に直面した企業の全てが販売価格を引き上げられた訳ではない)傾向が長く続いていること。また、中小企業では、傾向は大企業と同じですが、仕入価格判断は製造業56、非製造業54と50を上回り、半数以上の企業が引続き上昇に苦しんでいます。

ただし、経常利益は6.8%上方修正され、全体で今年度+4.0%の増益見込みに転じました。また、設備投資意欲は引続き旺盛です。ソフトウェア・研究開発を含み土地投資を除くベースは、全体で2023年度+12.6%の増加が計画されています。

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目立つ人手不足
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雇用人員判断(マイナスが大きいほど不足)は全体で前回-33 今回-35 先行き-38と不足感がさらに強まっています。非製造業中小企業に限ると前回-44 今回-47 先行き-52と不足感が際立ちます。この人手不足問題が、日本経済が直面する最大の課題と言えるでしょう。

なお、金融面では「資金繰り判断」「金融機関の貸出態度判断」に変調は見られず、全体で前者は前回11 今回11、後者は前回16 今回15です。

今回はこの辺で。

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