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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2023/08/07 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.202: IMF世界経済見通しと月例経済報告


今回は、1週間遅れで申し訳ありませんが、IMF世界経済見通し(7月25日公表)と内閣府月例経済報告(26日公表)を紹介します。

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改善したが冴えない世界経済
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今回の世界経済見通し(World Economic Outlook)の表題は「Near-Term Resilience, Persistent Challenges」、日本語訳は「短期的な強靭性 続く課題」です。簡単に言えば、前回4月時点では直前にシリコンバレー銀行やクレディスイスが破綻したこともあり、見通しには暗い雰囲気が漂っていました。今回は金融システム懸念がかなり後退し、2023年の成長見通しも+0.2%ポイント上方修正され+3.0%になりました。これが短期的な強靭性の意味合いです。ただ、インフレ懸念はなかなか払拭されず、成長率は2022年を下回り、景気後退懸念も消えません。この意味で課題は続きます。

世界全体の経済成長率は、2022年+3.5%から2023年+3.0%へと鈍化した後、2024年は+3.0%と横這い予想です。2023年は+0.2%上方修正、2024年は据え置きです。

このうち先進国は2022年+2.7%、2023年+1.5%、2024年+1.4%で、2023年+0.2%上方修正、2024年据え置き。米国は2022年+2.1%、2023年+1.8%、2024年+1.0%で、2023年+0.2%上方修正、2024年-0.1%下方修正。ユーロ圏は2022年+3.5%、2023年+0.9%、2024年+1.5%で、2023年、2024年とも+0.1%上方修正。日本は2022年+1.0%、2023年+1.4%、2024年+1.0%で、2023年+0.1%上方修正、2024年据え置きです。なお、2023年はドイツで-0.3%のマイナス成長が見込まれます。

新興国・途上国は2022年+4.0%、2023年+4.0%、2024年+4.1%で、2023年+0.1%上方修正、2024年-0.1%下方修正。うち中国は2022年+3.0%、2023年+5.2%、2024年+4.5%で、2023年、2024年とも据え置きです。

世界のインフレ率は2022年+8.7%から2023年+6.8%、2024年+5.2%と鈍化していくことが予想されますが、コロナ前(2017~2019年)の+3.5%を上回り、また、2023年は-0.2%下方修正ながら2024年は+0.3%上方修正です。変動の激しいエネルギーと食料を除くコアインフレ率も高止まり、2022年+6.5%、2023年+6.0%、2024年+4.7%です。

前回4月に比べて景気の下振れリスクは低下しましたが、それでもリスクのバランスは下振れ方向に傾いています。主なリスク要因として、長引くインフレ、中国の緩慢な回復、地政学的な分断の進行などが挙げられます。

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月例経済報告は判断維持
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月例経済報告の景気基調判断は、現状・先行きともに維持されました。需要項目では公共投資が少し上方修正されました(「底堅く」から「堅調」に修正)。

(現状)
・基調:景気は、緩やかに回復している
・個人消費:持ち直している
・設備投資:持ち直している
・住宅建設:底堅い動きとなっている
・公共投資:堅調に推移している
・輸出:底堅い動きとなっている

(先行き)
・基調:雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある
・個人消費:雇用・所得環境が改善する下で、持ち直しが続くことが期待される
・設備投資:堅調な企業収益等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:底堅く推移していくと見込まれる
・公共投資:関連予算の執行により、堅調に推移していくことが見込まれる
・輸出:底堅く推移することが見込まれる。ただし、海外景気の下振れリスクに留意する必要がある

今回はこの辺で。

なお、4回前の「月例経済報告と骨太」に頂いた質問には、次回お答えします。遅くなって申し訳ありません。

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