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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2023/07/10 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.199: 日銀短観


今回も手短かに。3日に公表された日銀短観を紹介します。久方ぶりの製造業の業況判断改善が話題になりました。

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製造業大企業7期振り改善
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業況判断は数字が大きいほど良く、「良い」「悪い」の回答が拮抗するとゼロ、マイナス幅の拡大は業況悪化を表します。以下の仕入価格・販売価格等も同じですが、理論的には-100(全社「悪い」と回答)から100(全社「良い」と回答)の間で数字が動き、0が拮抗点です。

最も注目される製造業大企業は、前回1 今回5 先行き見通し9とかなり改善しました。とくに自動車は前回-9 今回5 先行き9と大きな改善です。製造業大企業の業況判断改善は7四半期振り。2年近くの間、半導体などの供給制約や原材料価格上昇に悩まされた状況から、ようやく抜け出た格好です。製造業全体では前回-4 今回-1 先行き2です。

非製造業大企業は、前回20 今回23 先行き20です。コロナ禍の影響を最も受けていた宿泊・飲食サービスは前回0 今回36 先行き33と超大幅な改善。非製造業全体は前回12 今回14 先行き10です。

全ての企業の業況判断は、前回5 今回8 先行き7です。

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仕入価格は落ち着き方向
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仕入価格・販売価格とも「上昇」の回答が「下落」の回答を上回る構図に変化はありませんが、仕入価格判断の数字自体は低下してきました。

大企業、中小企業とも同じ傾向なので中小企業で説明すると、製造業の仕入価格は前回72 今回66 先行き58。販売価格は前回37 今回36 先行き32。非製造業は仕入価格で前回60 今回57 先行き57、販売価格で前回27 今回27 先行き30です。

仕入価格判断の数字が低下してきたと書きましたが、注意が必要なのは、引続き「上昇」の回答が「下落」の回答をかなり上回り、販売価格判断の数字を超える(=仕入価格上昇に直面した企業の全てが販売価格を引き上げられた訳ではない)傾向が長く続いていること。このため、経常利益は全体で今年度-5.8%の減益を見込みます。

ただし、設備投資意欲は旺盛です。ソフトウェア・研究開発を含み土地投資を除くベースは、全体で2023年度+12.4%の増加が計画されています。

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目立つ人手不足
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雇用人員判断(マイナスが大きいほど不足)は全体で前回-32 今回-32 先行き-35と強い不足感が続いています。非製造業中小企業に限ると前回-43 今回-43 先行き-48と、不足感が際立ちます。この人手不足問題が、日本経済が直面する最大の課題と言えるでしょう。

なお、金融システム面では「資金繰り判断」「金融機関の貸出態度判断」に変調は見られず、全体で前者は前回9 今回11、後者は前回16 今回16です。

今回はこの辺で。

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