2023/06/26 06:30 | by Konan | コメント(1)
Vol.198: 月例経済報告と骨太
今回は22日に公表された内閣府月例経済報告を簡単に紹介し、その後に1週間遅れですが、16日に閣議決定された骨太方針(正式には経済財政運営と改革の基本方針)2023に触れます。
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景気判断維持
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月例経済報告の景気判断は、先月二段飛びで上方修正された後、現状・先行きともに一言の修正も無く維持されました。二段飛びの後は変えづらいですよね(笑)。
(現状)
・基調:景気は、緩やかに回復している
・個人消費:持ち直している
・設備投資:持ち直している
・住宅建設:底堅い動きとなっている
・公共投資:底堅く推移している
・輸出:底堅い動きとなっている
(先行き)
・基調:雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある
・個人消費:雇用・所得環境が改善する下で、持ち直しが続くことが期待される
・設備投資:堅調な企業収益等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:底堅く推移していくと見込まれる
・公共投資:補正予算の効果もあって、底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:底堅く推移することが見込まれる。ただし、海外景気の下振れリスクに留意する必要がある
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ごった煮の骨太方針
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毎年のことですが、骨太方針は総花的・ごった煮です。ただ、来年度予算編成の基礎をなし、総花的である分、政府の政策の全貌が分かるメリットがあります。
章立てを並べると、以下の通りです。
第1章 マクロ経済運営の基本的考え方
第2章 新しい資本主義の加速
第3章 我が国を取り巻く環境変化への対応
第4章 中長期の経済財政運営
第5章 当面の経済財政運営と令和6年度予算編成に向けた考え方
このうち、ビジネスにも直結し得る内容は第2章に概ね盛り込まれています。具体的には、以下の通りです。
1.三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」の強化、分厚い中間層の形成・・・三位一体は「リ・スキリングによる能力支援向上」「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」「成長分野への労働移動の円滑化」を指します
2.投資の拡大と経済社会改革の実行・・・この中に、サプライチェーン強靭化、GX、DX、スタートアップ、インパクト投資、イノベーション、インバウンド戦略などの言葉が並びます
3.少子化対策・こども政策の抜本強化・・・例の「異次元」の話です
4.包摂社会の実現
5.地域・中小企業の活性化
上記のほか、言葉としては第4章の中の「デジタル時代の行財政改革」が、マイナンバー問題も絡み話題になりました。
私自身は岸田政権の政策の方向性自体は間違っていないと思います。ただ、岸田内閣に限らず歴代政権を含め、「財政の制約が無ければ多くの政策に同時並行的に取り組むことが出来るかもしれないが、そうした状況ではない」「しかし、政策は総花的で焦点を絞り切れない」「官の推進力が低下し、民にも自分事として認識されない」などの理由で、大きな成果を上げないまま日本が衰退してきたことが現実と思います。
これを打ち破るだけのパワーが岸田内閣にあるとは思えません。小泉政権や安倍政権くらいパワーを持ち、郵政民営化一本槍や金融政策依存でなく、もっと地道に政策を進めていればと思いますが、完全に後の祭りです。
悲観的なトーンで終わり失礼しました。
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One comment on “Vol.198: 月例経済報告と骨太”
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日本衰退の理由について「財政の制約が無ければ多くの政策に同時並行的に取り組むことが出来るかもしれないが、そうした状況ではない」とありました。
この括弧書きの中身はCRUさんの御見解でしょうか。
もしそうであるならばCRUさんが根拠にされている「財政の制約」とは制度的な制約でしょうか、それとも国債発行の持続可能性という意味での経済的実務的な意味での制約でしょうか。
前者であれば制度を変えればいいのですが岸田政権にはそのような馬力がないということになりますし、後者であれば正面から実質的な「財政の制約」とは何かという議論になると思います。