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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2023/04/10 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.189: 日銀短観


黒田さんが退任し、植田さんが総裁に就任した日銀。今回は3日に公表された短観を簡単に紹介します。製造業の業況判断悪化が目立ちました。

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製造業業況判断悪化
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業況判断は数字が大きいほど良く、「良い」「悪い」の回答が拮抗するとゼロ、マイナス幅の拡大は業況悪化を表します。以下の仕入価格・販売価格等も同じですが、理論的には-100(全社「悪い」と回答)から100(全社「良い」と回答)の間で数字が動き、0が拮抗点です。

最も注目される製造業大企業は、前回7 今回1 先行き見通し3とかなり悪化しました。製造業全体では前回2 今回-4 先行き-3です。

非製造業大企業は、前回19 今回20 先行き15です。コロナ禍の影響を最も受けた宿泊・飲食サービスは前回0 今回0 先行き13。非製造業全体は前回10 今回12 先行き6です。

全ての企業の業況判断は、前回6 今回5 先行き2です。

原材料価格高騰や海外経済減速の影響を受けた製造業が悪化し、コロナ禍の影響から脱し観光客も増えた非製造業が改善した構図です。

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仕入価格判断は横這い
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仕入価格・販売価格とも、「上昇」の回答が「下落」の回答を上回る構図に変化はありませんが、仕入価格判断の数字自体は横ばってきました。販売価格面では先行き値上げ期待が垣間見えます。

大企業、中小企業とも同じ傾向なので中小企業で説明すると、製造業の仕入価格は前回76 今回72 先行き69。販売価格は前回38 今回37 先行き42。非製造業は、仕入価格で前回60 今回60 先行き62、販売価格で前回26 今回27 先行き34です。

仕入価格判断が横ばってきたと書きましたが、注意が必要なのは引続き「上昇」の回答が「下落」の回答をかなり上回っており、この傾向が長く続いていること。要は「上がり方は鈍ってきたが、仕入価格水準が下がった訳でなく、1年前に比べかなり高いまま」という点です。このことが、上記の業況判断に影を落とすとともに、経常利益でみても全体で今年度-2.6%の減益を見込みます。

ただし、投資意欲は旺盛です。GDPに直接リンクする設備投資(ソフトウェア・研究開発を含み土地投資を除くベース)は、全体で2022年度+11.0%とかなり伸びた後も、2023年度+4.4%の増加が計画されています。

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目立つ人手不足
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雇用人員判断(マイナスが大きいほど不足)は全体で前回-31 今回-32 先行き-34と不足感が強まっています。非製造業中小企業に限ると前回-41 今回-43 先行き-46と、不足感が際立ちます。この人手不足問題が、日本経済が直面する最大の課題かもしれません。

なお、金融システムの動揺が気になるこの頃ですが、「資金繰り判断」「金融機関の貸出態度判断」に変調は見られず、全体で前者は前回10 今回9、後者は前回16 今回16です。

今回はこの辺で。今日は植田総裁就任会見が開かれると思います。楽しみですね。

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