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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/09/26 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.166: 日銀金融政策決定会合と為替介入


この連休もまた台風でしたね。その連休前(22日)、日銀金融政策決定会合終了後、円ドル相場145円台を受け24年ぶりの円買い・ドル売り介入が行われました。今回はその紹介です。

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金融緩和継続
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今回、新型コロナ対応金融支援に関する部分を除き、超緩和的な金融政策は維持されました。ECBやスイス中銀がマイナス金利政策を終了したため、日本が唯一のマイナス金利政策採用国になりました。因みに、新型コロナ対応については、政府の政策でも所謂ゼロゼロ融資が終了に向かう中、日銀もコロナ対応に特化した特別な金融支援を段階的に終了しつつ、中小企業の資金繰りに万全を期すため、元々日銀が持っている金融機関に対する資金供給の枠組み(共通担保資金供給オペと呼ばれます)を拡充する措置が決定されました。

金融緩和継続については、最早解説の必要は無いほど予想通りでした。金融政策を決める政策委員会メンバーの交代に伴い今回は反対意見も出ず、全員一致の決定になったほどの「既定路線」です。一言で言えば、「緩和を止めたら日本経済が失速するので、円安批判を受けてでも緩和は続ける」とのスタンスです。為替相場については、「為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある」と触れられた程度です。余程の事態が起きない限り、来年春の黒田総裁退任までこの政策が続くと思います。

この決定を受け円高が一段と進みましたが、為替介入については最後に触れます。

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景気判断は維持
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今回のように展望レポートが無い月(3、6、9、12月)と有る月(1、4、7、10月)とではスタイルが異なるため、比較が難しい面はありますが、景気の基調判断は現状・先行きともに維持されました。需要項目別では、とても微妙ですが、個人消費・公共投資・輸出が上方に、住宅投資が下方に修正されました。

(現状)
・基調:資源価格上昇の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している
・個人消費:感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加している
・設備投資:一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
・住宅投資:弱めの動きとなっている
・公共投資:横ばい圏内の動きとなっている
・輸出:供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している

(先行き)
・ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる

(リスク要因)
・内外の感染症の動向やその影響
・今後のウクライナ情勢の展開
・資源価格や海外の経済・物価動向
・金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響

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為替介入実施!
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冒頭に書いたとおり、24年振りの円買い・ドル売り介入が実施されました。個人的にも良く知る神田財務官の顔をよく見掛けるようになりましたね(笑)。介入直後に一旦5円ほど円高方向に動いた後、143円台まで戻し金曜日のNYを終えました。

今回は財務省主導であることが明確でしたが、介入は日銀が行うと思っている方も少なくないと思います。為替介入は政府(財務省、実質的には財務官)が意思決定し、政府の資金である外為特会のお金が用いられます。ただ、介入の実務、具体的には為替ディーラーとのやり取りや外為特会の資金を動かす仕事は、政府の「代理人」、有り体に言えば「手足」として日銀が行います。

黒田総裁もかつて「財務官」でした。黒田総裁は「Aという仕事はXという組織が担うべき」との責任分担論に極めて厳格で、今回の円安に関しても、金融緩和を止める余地がない以上、対策は政府の責任で行うしかないと割り切っていたと思います。その期待に20年後輩の神田財務官が応えた訳です。

今回は日本の単独介入です。ただ、報道によれば米国財務省も日本の介入を容認しているようです。今回のようにドルが絡む介入の場合、その通貨を掌る米国の理解を得ておくことが不可欠です(ユーロならECBです)。インフレに苦しむ米国はドル安を望みません。ただ、日本単独の介入の効果には限界があり、ドル高局面の大転換にはつながらないと高を括っていると思います。

なお「円買い・ドル売り介入には資金面での限界がある」と報道されます。自国通貨で無いドルの調達には政府と言えども限界があるので、円売り・ドル買い介入と比べ難しさがあることは事実です。ただ、外為特会の運用はこうした事態に備えて流動性を高めており、具体的にはNY連銀への預け金や超短期の米国債への運用を厚くしているので、介入原資が直ぐに底をつくことも無いと思います。

そうは言っても、「利上げ」の米国と「緩和維持」の日本なので、145円をひとつの防衛線としつつも、円安基調が解消するとは思えないですね。

今回はこの辺で。来週は内閣府月例経済報告の紹介です。

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