2022/04/25 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.150: IMF世界経済見通しと月例経済報告
紹介する予定だった4つのレポート等のうち3つ(IMF世界経済見通し、日銀金融システムレポート、内閣府月例経済報告)が先週公表されました。流石に3つを同時に解説することはtoo muchなので、今回はIMF世界経済見通しと内閣府月例経済報告に絞ります。来週は注目される日銀金融政策決定会合を扱い、金融システムレポートは5月9日に回します。16日はお休みを予定します。
War Sets Back the Global Recovery
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日本時間18日夜に公表されたIMF世界経済見通しの表題がWar Sets Back the Global Recoveryです。この一言で今回のレポートの内容は尽きていますが、少し数字を紹介します。
世界全体の経済成長率は、昨年+6.1%と2020年のコロナ禍による落ち込みから立ち直った後、2022年+3.8%、2023年+3.6%と予測されました。前回1月時点(=ウクライナ侵攻前)の予測対比で2022年-0.8%、2023年-0.2%の下方修正です。
このうち先進国は2021年+5.2%、2022年+3.3%、2023年+2.4%で、2022年-0.6%、2023年-0.2%下方修正。中でもユーロ圏は2021年+5.3%、2022年+2.8%、2023年+2.3%で、2022年-1.1%、2023年-0.2%と下方修正の大きさが際立ちます。米国は2021年+5.7%、2022年+3.7%、2023年+2.3%で、2022年-0.3%、2023年-0.3%の下方修正。日本は2021年+1.6%、2022年+2.4%、2023年+2.3%で、2022年-0.9%下方修正、2023年+0.5%上方修正です。
新興国・途上国は2021年+6.8%、2022年+3.8%、2023年+4.4%で、2022年-1.0%、2023年-0.3%下方修正。うちロシアは2021年+4.7%、2022年-8.5%、2023年-2.3%とGDPは落ち込み、2022年-11.3%、2023年-4.4%の大きな下方修正。中国は2021年+8,1%、2022年+4.4%、2023年+5.1%で、2022年-0.4%、2023年-0.1%下方修正です。全人代で出された今年の成長見通し(目標)+5.5%を下回っていることは注目です。
燃料と食料を中心とした物価上昇が下方修正の背景で、2022年の物価上昇率は先進国+5.7%、新興国・途上国+8.7%と予想され、1月予測からそれぞれ+1.8%、+2.8%の上方修正です。物価上昇はコロナ禍で弱っていた新興国・途上国にとくに大きな影響を与え、GDPがコロナ禍前のトレンドを下回り続けることが予想されています。
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現状判断は上方修正
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次に21日に公表された内閣府月例経済報告。現状判断は直観と逆に前月から上方修正されました。まん延防止等重点措置解除後の持ち直しを評価した格好です。基調判断は前月は「持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さがみられる」でしたが、今月は「新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和される中で、持ち直しの動きがみられる」です。需要項目では個人消費と公共投資が上方修正されました。
・基調:景気は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和される中で、持ち直しの動きがみられる
・個人消費:このところ持ち直しの動きがみられる
・設備投資:持ち直しの動きがみられる
・住宅建設:このところ弱含んでいる
・公共投資:このところ底堅い動きとなっている
・輸出:おおむね横ばいとなっている
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先行き判断は維持
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先行きの基調判断は前月と全く同じ。これだけ「悪い円安、悪い物価上昇」が話題になる中でやや奇異に思えますが…
・基調:感染対策に万全を期し、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、ウクライナ情勢等による不透明感がみられる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約等による下振れリスクに十分注意する必要がある。また、感染症による影響を注視する必要がある
・個人消費:感染対策に万全を期し、経済社会活動が正常化に向かう中で、持ち直していくことが期待される
・設備投資:企業収益の改善等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:当面、弱含みで推移していくと見込まれる
・公共投資:補正予算の効果もあって、底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:海外経済が改善する中で、持ち直していくことが期待される。ただし、海外経済の動向や、供給面での制約等による下振れリスクに注意する必要がある
このように内閣府の判断はコロナ禍の影響という国内要因に引きずられ、ウクライナ侵攻による世界経済の変動には鈍感に見えます。この点を日銀がどう判断するか。黒田総裁の頑固さが維持されるか。27、28日に開催される金融政策決定会合に注目しましょう。今回はこの辺で。
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