プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/04/04 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.148: 短観+JDさん


今回は4月1日に公表された日銀短観を紹介します。その後、JDさんの3月25日のメルマガ「ロシアのウクライナ侵攻:国際政治の理論からの考察」へのコメントを記します。

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業況判断悪化、仕入価格上昇
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今回の短観では業況判断が悪化しました。コロナ禍を巡る状況が改善する一方、ウクライナ侵攻を契機とした資源価格高騰や不確実性の増大が影を落としました。

・業況判断は数字が大きいほど良く、「良い」「悪い」の回答が拮抗するとゼロ、マイナス幅の拡大は業況悪化を表します。以下の仕入価格・販売価格等も同じですが、理論的には-100(「良い」との回答ゼロ)から100(「悪い」との回答ゼロ)の間で数字は動き、0が拮抗点です。
・最も注目される大企業製造業は、前回17の後、今回14、先行き見通し9と悪化しました。中小企業製造業も前回-1 今回-4 先行き-5と同様です。
・大企業非製造業は、前回10 今回9 先行き7とやや悪化です。コロナ禍の影響を最も受けた宿泊・飲食サービスは前回-51 今回-56 先行き-38となり、調査時点でまん延防止等重点措置が解除されたことを受け、先行き改善が(水面下のままですが)期待されています。中小企業非製造業は前回-3 今回-6 先行き-10です。
・全ての企業の業況判断は、前回2 今回0 先行き-3とやはり悪化傾向です。

仕入価格は上昇傾向です。販売価格も上昇ですが仕入価格の上がり方に追い付きません。この影響もあり、とくに製造業では2022年度減益予想です。

・仕入価格・販売価格は、数字が大きいほど「上昇」の回答が多いことを示します。
・大企業、中小企業とも同じ傾向なので中小企業で説明すると、製造業は前回60から今回70に跳ね上がり、先行きも72です。販売価格も前回16 今回23 先行き32と「上昇」の回答が増加傾向ですが、仕入価格上昇に追い付いていないことがみてとれます。72は大半の企業が仕入価格上昇に直面していることを示す極めて高い(最大である100に近い)数字です。
・非製造業は、仕入価格で前回40 今回48 先行き55、販売価格で前回7 今回12 先行き20です。製造業と同じ傾向です。
・経常利益でみると、中小企業全体で2021年度+16.8%増益後、2022年度は-1.4%の減益が見込まれます。とくに製造業は-4.9%減益予想です(非製造業は横ばい予想)。

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設備投資計画微増、人手不足続く
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GDPに影響する設備投資(ソフトウェア・研究開発を含み土地投資を除くベース)は、全体で2021年度+5.2%の後、2022年度+3.2%増が予想されています。ただし、2021年度については前回調査比-3.3%下方修正されました。また、2022年度についても、とくに中小企業非製造業は-13.2%と現時点で弱気の計画です。今一歩力強さに欠けます

雇用人員判断(マイナスが大きいほど不足)は全体で前回-22 今回-24 先行き-26と不足感が継続しています。

資金繰り判断(プラスが大きいほど楽)は全体で前回12 今回10と「楽」超継続です。

短観の紹介は以上です。なお、日銀ホームページでは、短観と同じ4月1日に「理事の発令について」との記事が掲載されました。内容は内田眞一理事の再任です。1998年の日銀法改正以降再任された理事は中曽宏、雨宮正佳の2人のみ。2人ともその後副総裁となり、来春退任する黒田総裁の後任候補として名前が挙がっています。内田理事の再任は、この総裁選びが事実上始まったことを意味します。

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JDさんへのコメント
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さて、「世界情勢ブリーフィング」には毎週(時に週2回)JDさんの素晴らしい記事が掲載されます。ブログやメルマガ無料版ではその一部しか読めませんが、有料メルマガでその全貌を読むことができ、さらにグッチーポスト・オンラインサロン(参加者限定)で毎月JDさんの講演を聞くこともできます。3月25日の「ロシアのウクライナ侵攻:国際政治の理論からの考察」については、その後の講演会で詳しく解説されました。

無料の私の媒体(ブログ、メルマガ)でのネタバレは避けつつ、この記事へのコメントを記そうと思いました。JDさんの記事は、「ロシアとウクライナのどちらが悪いかに関し、侵攻の原因は何だったのかという客観的な事実分析の視点」から、「国際政治の理論」という思考の枠組みの中の「リアリズム」「リベラリズム」「構成主義」の3つの考え方に基づき分析を行っています。

この3つの考え方によると、ウクライナ侵攻の出口・解決策はどうなるのでしょうか?

実は私は昔この分野を勉強し国際関係論の修士号を取得しました。既に錆びていますしJDさんの足元にも及びませんが、「リアリズム」と聞いた時、balance of power(以下BOP)を思い浮かべました。これが誤解でないとすると、如何にBOPを回復するかポイントとなります。ロシア(プーチン大統領)からみると、NATOの拡大は自らの安全を脅かしBOPを崩す行為として許容できません。BOPの回復にはNATOの縮小、ロシアの拡大、緩衝地帯の設置の何れかが必要です。NATO縮小は最早考えられません。ロシア拡大に関しては、クリミア半島やウクライナ東部で議論の余地はあるかもしれませんが(これもウクライナからみれば許容し難い)、それ以上はあり得ません。そう考えると、ウクライナ中立化が鍵となり、それに付加してロシアから見た安全装置を設けることが出来るか(例えばNATO軍配置のあり方等)が論点になると思いました。

「リベラリズム」についてはinterdependenceを思い浮かべました。振り返ると、メルケル前首相の戦略はこのリベラリズムに則っていたように思えます。ノルドストリーム2が今回の局面で話題になりますが、ロシアとドイツ(EU)の経済面での相互依存度を高めれば、お互いを傷付けることはないだろうとの発想と思います。残念ながらこの期待は裏切られました。リベラリズムは現実の世界ではリアリズム・構成主義に劣るということかもしれません。別な見方をすれば、ロシア(プーチン大統領)は「EUはロシアのエネルギーに依存しているので、強い制裁は行えないだろう」と高を括り、侵攻を行ったとの説もあります。プーチン大統領が「EUはリベラリズムに基づく」と見切り、その裏をかいたとの見方です。この見方の真偽はさて置き、今更リベラリズムに基づく解決は難しいように思えます。あえて言えば、「制裁解除」と「撤退」を同時に行うということでしょうか…

「構成主義」は最も理解が難しい考え方と思いました。このため余りコメントできませんが、誤解で無いとすれば、プーチン大統領が世界観を変える、ないし退く以外に出口が見出せない印象も受けます。バイデン大統領の不規則発言が物議を醸したように、選挙で選ばれた大統領の進退を軽々しく口にすべきでないのかもしれませんが、ロシア国内で政権批判が高まるか否か注目したいと思います。

JDさんのコメント期待します!

来週11日は諸般の事情で休載します。今月はIMF世界経済見通し、日銀金融システムレポート、内閣府月例経済報告、日銀金融政策決定会合と続くので、その後は連投になると思います。

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