2022/03/21 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.146: 日銀金融政策決定会合
今回は17、18日に開催された日銀金融政策決定会合を紹介します。FED利上げ直後、ウクライナ情勢の影響も受ける中、久し振りに注目されました。日銀の公表文のスタイルは展望レポートも合わせて公表される月(1、4、7、10月)とその他(3、6、9、12月)で異なるため、前回(1月)との対比が難しい面がありますが、景気の見方がやや下方修正され、先行きへの警戒感も強まりました。他方で、黒田総裁は超緩和的な金融政策を継続する方針を明確にし、円安傾向が強まりました。
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現状判断はやや弱めに
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景気の現状判断では、まん延防止等重点措置の影響を受け個人消費が下方修正されました。基調判断も「持ち直しが明確化している」から「基調としては持ち直している」と心持ち弱めの表現になりました。
・基調:新型コロナウイルス感染症の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している
・個人消費:感染症の再拡大によるサービス消費を中心とした下押し圧力の強まりから、持ち直しが一服している
・設備投資:一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
・住宅投資:横ばい圏内の動きとなっている
・公共投資:高水準ながら弱めの動きとなっている
・輸出:供給制約の影響を残しつつも、基調としては増加を続けている
また、ウクライナ情勢を受け、以下の一文が挿入されました。
「ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、国際金融資本市場では不安定な動きがみられるほか、原油などの資源価格も大幅に上昇しており、今後の動向には注意が必要である。」
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先行きの判断は維持
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先行きに関しては「資源価格上昇の影響を受けつつも」との言葉は加わりましたが、判断が維持されました。
・基調:新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、資源価格上昇の影響を受けつつも回復していくとみられる
物価については「当面、エネルギー価格が大幅に上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、プラス幅をはっきりと拡大すると予想される」「マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくと考えられる」とされています。この点は後述します。
リスク要因は以下が挙げられています。
・変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響
・ウクライナ情勢が、国際金融資本市場や資源価格、海外経済の動向等を通じて、わが国の経済・物価に及ぼす影響についてのきわめて高い不確実性
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黒田総裁は政策維持を強調
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金融政策決定会合終了後、総裁は記者会見で記者の質問に答えます。その公式な記録は翌営業日(今回で言えば22日)日銀ホームページに掲載されますが、日経はじめ各紙でその概要が掲載されます。
今回の会見では、物価や円安への質問が多かったようです。物価に関しては以下のように説明しました(以下日経より)。
・急激な輸入物価上昇は資源輸入国の日本には好ましい物価上昇ではない。
・ただスタグフレーションの恐れが日米欧にあるとはおもっていない。
・持続的な物価上昇をめざし、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けることが適当だ。
・物価上昇の大半が輸入価格で、金融を引き締める必要もないし適切でもない。
・物価が2%程度になる可能性もあるが、現在の金融政策を修正する必要性を意味していない。
前々回・前回のこのコーナーでも触れたように、日銀に限らず中央銀行は中長期的なトレンドとしての物価安定を目指します。一時的な要因による物価の変動にいちいち金融政策で対応することはしません。総裁は「目先物価上昇率は上がる。しかし、それは携帯電話通信料下落の影響の剥落と輸入価格上昇によるもので、トレンドではない。トレンド・基調は強まってはいるが2%には達しない。なので金融政策は変えない」と主張している訳です。この判断が正しいか、それともFEDのように修正を迫られていくか、総裁任期残りの1年間の最大の課題になります。
なお、円安に関しても「安定的な推移のなかでの円安が経済・物価にプラスとなる基本的な構図は変わっていない」と“擁護”します。この点はいつかこのコーナーで取り上げようと思います。
今回はこの辺で。
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