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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/09/13 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.122: 金融行政方針


今回は毎年恒例の金融庁金融行政方針の紹介です。

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初の理系出身長官誕生
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金融行政方針は中島現長官(昭和60年大蔵省入省)の3代前、森長官(55年)時代に作成・公表が始まり、遠藤長官(57年)、氷見野長官(58年)と引き継がれてきました。役所は人事異動がある7月に事務年度がスタートしますが、人事異動後内容や文章を練り、8月末に公表されます。

中島長官は旧大蔵省(金融庁は大蔵省の機能を分離する形で平成10年に発足しました)としては異色の東大工学部卒業の経歴を持ちます。役所は法案を担ぐことも多いのでどうしても法学部出身者が中心となりがち。技官制度がない大蔵省で理系出身者は肩身が狭い思いをしたかもしれません。ただ、個人的にも面識がある中島長官は、淡々と様々な仕事をこなしトップの地位に上り詰めました。金融の世界はテクノロジーと表裏一体なので、一段と実力を発揮できたのかもしれません。更に言えば、役人の仕事は様々な利害を分析し甲乙を付け判断を下すので、本来理系向きな面もあるかもしれません。

そうした長官の下での方針なので、これまた異色の国際派の経歴を持つ氷見野前長官の方針が注目されたのと同様、内容に注目が集まりました。

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代わり映えのしない内容?!
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蓋を開けてみると、従来とさほど変化のない内容でした。長官が代わった途端役所の仕事が変わる訳もないので、当たり前と言えば当たり前ですが。

ポイントは以下の3点です。全体を貫く標語は「コロナを乗り越え、活力ある経済社会を実現する金融システムの構築へ」です。

1.コロナを乗り越え、力強い経済回復を後押しする
・「新型コロナウイルス感染症による深刻な影響を受けた経済社会を、金融機関が金融仲介機能を発揮して力強く支えぬく」「ポストコロナの活力ある経済の実現を目指して、金融機関等による事業者の経営改善・事業再生・事業転換支援等を促す」ことが骨子です。

2.活力ある経済社会を実現する金融システムを構築する
・「経済社会・産業をめぐる変化を成長の好機と捉える」「国内外の資金の好循環を実現する」「金融サービスの活発な創出を可能とする」がキーワードです。

3.金融行政をさらに進化させる
・「金融育成庁」「データ分析の高度化を通じたモニタリング能力の向上」「専門人材の育成」がキーワードです。

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何を目指すのか?
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去年の全体を貫く標語は「コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く」でしたので、言葉は少し違いますが、目指すところは変わっていないと思います。

そのうえであえて探せば以下の点が前年との変化で、中島長官の「思い」と感じました。

「地域経済全体の活性化」が一段と強調され、地域企業のための経営人材マッチング促進、金融機関職員の兼業・副業の普及・促進がうたわれています。

グリーン国際金融センターインベストメント・チェーンなど「新語」が登場しました。前者はわが国でグリーン債市場を活性化させる取り組み、後者は成長資金の供給を含め資金が投資家から企業に円滑・有効・安全に流れる仕組みのブラシュアップを意味します。

マネロン対策強化、サイバーセキュリティ確保、システムリスク管理態勢強化が強調されたこと。マネロンについては最近報道されているようにFATF(Financial Action Task Force)の審査に不合格となり、金融界全体として対応改善が急務です。サイバーセキュリティは金融機関に限らず日本の弱点です。そしてみずほの度重なるシステム障害でシステムリスクにも目を配らざるを得ません。

このようなところでしょうか。

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