2021/03/01 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.95: グリーン成長戦略(その2)
漸くグリーン成長戦略の紹介の2回目。今回は経産省が着目した14の産業とその課題を簡単に紹介します。14の重要分野は以下の通りです。
(1)洋上風力産業
(2)燃料アンモニア産業
(3)水素産業
(4)原子力産業
(5)自動車・蓄電池産業
(6)半導体・情報通信産業
(7)船舶産業
(8)物流・人流・土木インフラ産業
(9)食料・農林水産業
(10)航空機産業
(11)カーボンリサイクル産業
(12)住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業
(13)資源循環関連産業
(14)ライフスタイル関連産業
洋上風力、燃料アンモニア、水素、原子力はエネルギー源のグリーン化を目指し、自動車や船舶などはその産業自体のグリーン化を目指し、半導体・情報通信はそれを触媒にしたグリーン化を目指すなど種々雑多なものの寄せ集めです。あえて哲学を言えば、温室効果ガス削減に役立つ産業、現在大きく温室効果ガスを排出しているがその削減が見込まれる産業、日本の技術力や製品の競争力が高まれば海外に売れ込めそうな産業、といった視点で14産業が選ばれた感じでしょうか。
以下、それぞれのポイントを簡単に紹介します
(1)洋上風力産業
・「大量導入やコスト低減が可能であるとともに、経済波及効果が期待されることから、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札」です。事業規模数千億円、部品数数万点と波及効果の大きさも魅力です。
・「魅力的な国内市場を創出することにより国内外の投資を呼び込み、競争力があり強靭なサプライチェーンを構築」し、「更に、アジア展開も見据えた次世代技術開発、国際連携に取り組み、国際競争に勝ち抜く次世代産業を創造して」いきます。
(2)燃料アンモニア産業
・「燃焼してもCO2を排出しないアンモニアは、石炭火力での混焼など、水素社会への移行期では主力となる脱炭素燃料」です。年間11.7兆円規模のマーケットが見込まれます。
・「混焼技術を早期に確立し、東南アジア等への展開を図るとともに、国際的なサプライチェーンをいち早く構築し、世界におけるアンモニアの供給・利用産業のイニシアティブを取る」ことを目指します。
(3)水素産業
・「発電・輸送・産業など幅広い分野で活用が期待されるカーボンニュートラルのキーテクノロジー」です。
・「今後は新たな資源と位置付けて、自動車用途だけでなく、幅広いプレーヤーを巻き込む」ことや「導入量拡大を通じて、水素発電コストをガス火力以下に低減させ、化石燃料に対して十分な競争力を有する水準」を目指します。2050年に2,000万トン程度が目標です。
(4)原子力産業
・「実用段階にある脱炭素の選択肢」で、「国内での着実な再稼働の進展とともに、海外で進む次世代革新炉開発に、高い製造能力を持つ日本企業も連携して参画し、多様な原子力技術のイノベーションを加速して」いきます。
(5)自動車・蓄電池産業
・「自動車は、電動化を推進する。日本は、この分野でのリーダーを目指さなければならない」「蓄電池は、自動車の電動化や再生可能エネルギーの普及に必要となる調整力のカーボンフリー化の要である」「2050年の自動車のライフサイクル全体でのカーボンニュートラル化を目指すとともに、蓄電池産業の競争力強化を図る」とされます。
・乗用車新車販売で遅くとも2030年代半ばまでに電動車100%実現を目指します。
・なお、ここで電動車は「電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車」と比較的幅広い車を含みます。この点では現実路線でしょうか。
(6)半導体・情報通信産業
・「カーボンニュートラルは、製造・サービス・輸送・インフラなど、あらゆる分野で電化・デジタル化が進んだ社会によって実現される。したがって、デジタル化・電化の基盤である、半導体・情報通信産業は、グリーンとデジタルを同時に進める上でのカギである」とされます。
・「デジタル化によるエネルギー需要の効率化(グリーンbyデジタル)」と「デジタル機器・情報通信の省エネ・グリーン化(グリーンofデジタル)」の二つのアプローチを車の両輪として推進します。
(7)船舶産業
・「ゼロエミッションの達成に必須となるLNG、水素、アンモニア等のガス燃料船開発に係る技術力を獲得するとともに、国際基準の整備を主導し、我が国造船・海運業の国際競争力の強化及び海上輸送のカーボンニュートラルに向けて」取り組みます。
(8)物流・人流・土木インフラ産業
・「全ての社会経済活動の基盤となる物流・人流システムと土木インフラは、国民の生活に不可欠なものであり、カーボンニュートラルを」目指します。
・「カーボンニュートラルポートの形成、スマート交通の導入、自転車移動の導入促進、グリーン物流の推進、交通ネットワーク・拠点・輸送の効率化・低炭素化の推進、インフラ・都市空間等でのゼロエミッション化、建設施工におけるカーボンニュートラルの実現に総合的に取り組むことで、物流・人流・土木インフラ産業での2050年のカーボンニュートラル実現」を目指します。
(9)食料・農林水産業
・「木の文化の浸透や、森林及び木材・農地・海洋が巨大なCO2吸収源として期待されるなど、それ自身が吸収源となる重要な産業」であることに加え、「作業最適化等によるCO2削減、適正施肥によるN2O削減等の温室効果ガス排出削減についても取組が進むなど、カーボンニュートラルに向けて多くの潜在的な強みを有して」います。
・「スマート農林水産業等の実装の加速化によるゼロエミッション化、農畜産業由来のGHGの削減、農地・森林・海洋における炭素の長期・大量貯蔵等、吸収源の取組を強力に推進し、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」します。
・「世界のGHG排出量のうち農林業等由来の排出が1/4を占めている現状を踏まえ、我が国の優れた技術の国際展開、国際的な議論・ルールメイキングへの積極的な関与により、世界のカーボンニュートラルに貢献」します。
(10)航空機産業
・「国際航空において急速に低炭素要求が強まりつつある中、国際民間航空機関は2019年比でCO2排出量を増加させないことを制度化」「グリーンによる技術の変わり目を、我が国航空機産業の競争力を飛躍的に強化するチャンスと捉え、複合材、電動化、水素や代替燃料など複数の要素における技術的優位性の確立」を目指します。
(11)カーボンリサイクル産業
・「カーボンリサイクルは、CO2を資源として有効活用する技術で、カーボンニュートラル社会を実現するためのキーテクノロジー」です。
・「日本に競争力があり、コスト低減、社会実装を進め、グローバル展開」を目指します。
(12)住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業
・「住宅・建築物は、民生部門のエネルギー消費量削減に大きく影響する分野」です。
・「カーボンニュートラルと経済成長を両立させる高度な技術を国内に普及させる市場環境を創造しつつ、くらし・生活の改善や都市のカーボンニュートラル化を進め、海外への技術展開」も見込みます。
(13)資源循環関連産業
・「リデュース、リユース、リサイクル、リニューアブルについては、法律や計画整備により技術開発・社会実装を後押し」しています。「廃棄物発電・熱利用、バイオガス利用については、既に商用フェーズに入っており普及や高度化が進んで」います。
・「今後、これらの取組について、国・地方脱炭素社会実現会議等における議論を踏まえつつ、技術の高度化、設備の整備、低コスト化等により更なる推進」を図ります。
・「循環経済への移行も進めつつ、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロ」にします。
(14)ライフスタイル関連産業
・「国・地方脱炭素実現会議等における議論を踏まえつつ、住まい・移動のトータルマネジメント、ナッジやシェアリングを通じた行動変容、デジタル技術を用いたCO2削減のクレジット化等を促す技術開発・実証、導入支援、制度構築等に」取り組みます。
・これらにより2050年までにカーボンニュートラルで、かつレジリエントで快適なくらしを実現」します。
羅列になり申し訳ありません。項目により主務官庁が異なるせいか、文体や粒度が異なり、まさに寄せ集め感満載の文章です。今回はここで終えますが、また立ち返りたいと思います。
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