Taperingの件はぐっちーに完敗でした（笑）。後任のイエレンの決断の負担を少しでも和らげてあげようという親心を読めなかった私が未熟でした。

さて。

自分は何を伝えようとしてきたのだろうか。

実際には、それほど大きく構えず、淡々と解説記事を書くことが多かったように思います。その中で心掛けたことは、「世の中の様々な意見を上手くマッピングできないか」ということでした。余りうまくいった例はありませんが、ひとつ自分でも気に入っているのは、TPPについて書いた時のことです。TPP賛成反対を１つの軸に、円高円安をもう1つの軸に、

・TPP賛成と円安賛成は、いずれも日本が輸出産業に支えれていると考える点で一貫している
・TPP反対と円高賛成は、いずれも日本が既に内需国家になっていると考える点で一貫している
・TPP反対と円安賛成は、上記の点で不整合である。ただ、弱体化した日本を保護したいとの気持ちでつながっている
・TPP賛成と円高賛成は、上記の点で不整合である。ただ、日本に自信を持ち、あるいは市場メカニズムを信じる気持ちでつながっている

と整理してみました。最近は世論も大分変化しましたが、当時はTPP賛成＋円安賛成の経済界の意見と、TPP反対＋円安賛成の保守的政治家の意見の2つをよく聞くように感じ、なぜそうしたねじれが生じるのだろうか考えたことがきっかけでした。数回前のGvsPも、ある意味で同様の試みでした。

そのうえで、時々自分の意見を明記したことがあります。その際のモティーフの多くは「日本」に関わるように思います。

「日本」については、いろいろな感じ方があると思います。

（タイプ1）「日本」など気にせず、ユニバーサルに生きる
（タイプ2）「日本」など気にせず、個人の幸せに生きる
（タイプ3）「日本」の古典的な価値観を強く意識する
（タイプ4）「日本」のソフトパワーを強く意識する
（タイプ5）「日本」の国力（経済力や軍事力）を強く意識する

このほかにもあると思いますが、自分は職業柄タイプ5に属すように思います（私にはぐっちーはタイプ4にみえます）。このようにタイプを整理した理由は、ひとつには、タイプ3とタイプ5が相反するトレードオフの関係になりつつあると感じるからです。

このコーナーを書き始めた頃（民主党政権誕生直後）、自民党の威信は地に落ちていました。その際、このコーナーで、ある自民党支持者との概略以下のような会話を紹介しました。

（私）日本のGDPを維持するためには、生産性の向上と労働人口の維持が必要です。このためには、女性の労働参加率の向上、外国人労働者への更なる活躍の場の提供（さらには移民受け入れ）も考える必要があります。
（支持者）女性や外国人の地位を引き上げるくらいなら、日本のGDPが減り、日本が衰退しても構わない。

この支持者の方は、上記の分類でタイプ3に属します。タイプ3の方は「愛国者」です。しかしその国の愛し方は、経済的には誤った帰結、すなわち日本経済の没落を意味しかねません。タイプ5も別の意味で「愛国者」です。しかし、国力を維持するためには、古典的な価値観に反する改革も辞さない点で、タイプ3と異なります。人口増加期には気にする必要もなかった2つのタイプの違いが、少子高齢化という現実を突きつけられるなかで、鮮明化し始めているように思います。

この問題を、タイプ5からタイプ2やタイプ4に飛ぶことで解消できないのか。この点を記して、次回でこのコーナーを閉じようと思います。