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2025/02/17 06:30  | メルマガ |  コメント(1) NEW !

第289号 トランプ関税に身構える市場


トランプ政権がスタートし、関税の話題が出ない日はありません。「関税」と一言で言っても、実際には様々な「税」について米国政府は精査しており、今後は国や地域ごとに個別の細かい交渉と対応が繰り返されることが予想されます。

こうした話題のテーマから、トランプ就任後初の議会証言を行ったパウエルFRB議長についても取り上げます。今週もさっそく参りましょう。

●先週のマーケット
・高まる節約思考
●今週の米国経済統計(予想)
●先週の米国経済統計(結果)
●経済統計分析
1. 米インフレは予想外に上振れ
 ・CPI 1月
 ・PPI 1月
2. 米小売売上は予想外に下振れ
3. 新規失業保険申請件数
4. トランプ相互関税発表
5. パウエルの議会証言
●あとがき

それでは、さっそくまいりましょう。

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あとがき
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今週もここまでお付き合いくださいましてありがとうございました。

先週はCPI、PPI、小売売上とインフレ関連データに振り回された1週間でしたが、こうしたイベントを通過して、目先注目なのは2月26日に予定されているエヌビディア(NVDA)の決算

マグニフィセント7の決算は、エヌビディアを除いて既に終了しています。今回の決算ではこれらのメガテック企業の巨額の設備投資が話題になっており、過剰なAIへの投資、そしてその投資が思ったように売上高の増加に結びついていないことに投資家は懸念を抱いています。株価のパフォーマンスもこれを反映するように、メタ・プラットフォームズ以外は冴えない状況です。

こういった状況の中で迎えるエヌビディアの決算は過剰なAIへの投資を正当化できるのかをはかる上で自ずと注目が集まります。エヌビディアの成長性にケチがつくような結果となると、半導体関連は勿論、マグニフィセント7にも影響がでる可能性があるので要注意。エヌビディア決算は乗り越えねばならないイベントです。

そんな2月後半戦ですが、過去のデータからは、S&P500 にとって年間で3番目にパフォーマンスが悪い2週間と言われています。だからかどうかはわかりませんが、先週はバフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイがS&P500に連動するETFをすべて売却したということも話題になりました。ポートフォリオ全体から見た金額は大した額ではなく、この投資行動に警戒をする声も聞こえてきますが、投資ルールに沿って売却しただけで、割高であるという以外大きな示唆はないと思われます。

実際、買っている株の銘柄もあるわけで、株式投資に凄くベアというわけではないが、米国債のイールドが4%を超えている中で、S&P500のバリュエーションが釣り合うのか、という視点は売却する上であったかもしれませんね。

さて、冒頭で触れたコメの価格に関連して、先週末、農林水産省が政府備蓄米の放出を巡る入札の実施概要を発表しました。米価格は前年比1.7倍で、市場最高値を更新しています。そこで、放出によって、流通の目詰まり解消をすることを目的としているようですが、こうした米の流通円滑化を目的とした放出は初めてです。

今回の放出量は合計21万トンで、まず第1弾として15万トン(2024年産米を10万トン、2023年産米を5万トン)供給します。3月上旬に入札をし、半ばから引き渡し、早ければ3月下旬には小売店の店頭に並ぶ見通しです。

備蓄米売却は競争入手で、対象者には制限があり、主に国内の主要な米流通業者(JA全農など大手卸・集荷業者)が対象で、既存の流通網を活用して市場に行き渡らせる狙いがあります。さらに、売り渡し予定価格についても政府は基準価格水準を設定する見込みで、これは仮に市場相場とかけ離れた低い価格で放出すれば米価暴落を招きかねずそれを予防するための対策。つまり、値崩れを起こさないような価格で政府は売り渡すわけで、米価格高騰の解消をするつもりがあるのか疑問です。

加えて、今回は「買い戻し」条項が付されており、政府が備蓄米を売り渡す代わりに、原則1年以内に同等・同量の国産米を政府が買い戻す権利(または業者の義務)を設定します。先日、JAなどが出資する農林中央金庫が去年4月から12月までの決算を発表し、外国債券の運用で巨額の損失を計上したことから、最終的な損益が1兆4000億円余りの赤字を出した、なんて記事を見たばかりに、これはJA全農などに損をさせない仕組みなのでは?という邪推が湧いてきます。

そもそも供給が減っているのは、作付面積の減少(供給不足)が一番の理由でしょう。

1995年 210.6 万ha
2000年 176.3 万ha
2005年 170.2 万ha
2010年 162.5 万ha
2015年 150.5 万ha
2020年 146.2 万ha
2024年 135.9 万ha (推定値)

メディアなどでは、異業種の転売ヤーが価格を釣り上げているなどといったことも言われており、実際にそうした可能性もゼロではないのでしょうが、米を保管・管理するのには莫大なコストがかかり、転売ヤーでは限界がある。こうしたことに加え、海外で日本の米が人気で輸出の需要が高まっていること、昨年の南海トラフ地震の際には「買い溜め」が起きたことも、需給をひっ迫させる要因にはなっています。複合的な要因で供給が細り、結果的に価格が高騰したと、私は見ています。よって、政府の備蓄米放出で、多少心的効果で値が下がることはあっても、大きな値上がり解消にはつながらないでしょう。

さて、先週、トランプ大統領は、Truth Socialの投稿でロシアのプーチン大統領と電話会談したことを明かし、ロシア・ウクライナ戦争終結に向けた協議を近く開始するとしました。その後、バンス副大統領やルビオ国務長官らがミュンヘンでゼレンスキー大統領と会談し、ロシアとの和平交渉にウクライナも参加することを表明。さらに今週、米当局者とロシア当局者がサウジアラビアで協議を開始することも伝えられました。

実際にこの話が具体化、あるいは本当に戦争終結となれば、欧州圏は復興需要を享受することが想定され、外国為替市場では、さっそくユーロ買いが進みました。東欧のマイナー通貨まで買われており、マーケットでは一気にウクライナロシア間の停戦期待が高まっていますが、今後どうなるのか?注目していきます。

というわけで、今週もよい1週間をお過ごしください。

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One comment on “第289号 トランプ関税に身構える市場
  1. ベルモット より
    世界の貿易量

    世界すべての貿易赤黒を足せばゼロになる、この理屈が正しければ、アメリカ貿易赤字が黒転すると、その膨大な赤字は誰が引き受けるのだろう。
    正しくないのか。。

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