プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2024/10/07 06:30  | メルマガ |  コメント(0)

第268号 非の打ち所がない米雇用統計


先週は雇用関連指標の公表が相次ぎました。9月の雇用統計以外の統計については、以下のメルマガで配信していますのでご覧ください。今週も、統計とともにマーケットへの影響なども見ていきますのでお付き合いください。

第267号 9月雇用統計プレビュー(10/4)
 

●先週のマーケット
・就任早々曲がる首相発言
●今週の米国経済統計(予想)
●先週の米国経済統計(結果)
●経済統計分析
1. ISMインデックス
 ・ISM製造業 9月
 ・ISMサービス業 9月
2. 雇用統計 9月
3. 雇用統計総論
 ・10月データは波乱含み
 ・市場の利下げ見通し後退
●あとがき

それでは、さっそくまいりましょう。

***************
あとがき
***************

石破政権の誕生以降、日本株は連日1000円幅で動くようなボラティリティにさらされています。前書きでもふれたように、就任後にこれまでの主張を大きく方針転換し、私見としながらも本来では考えられない金融政策にまで踏み込んだ「利上げする環境にない」発言をしたことから日本株は上昇。そして、就任早々の衆議院解散によって政策への期待感の醸成がなされることで株買いに向かいやすく、株価が強含むと言われる選挙アノマリーの時間帯に日本株は入っていきます。米国の大統領選があることを考えると、そんなに単純な動きになるとは思えませんが引続き注視していきましょう。いずれにしても日米ともに選挙が市場のテーマになってきます。

そんな石破新総裁の所信表明演説が、先週行われました。

第二百十四回国会における石破内閣総理大臣所信表明演説(10月4日付、首相官邸)

5つの「守る」を改めて表明、「ルール」「日本」「国民」「地方」「若者や女性の機会」を守るとしています。40分ほど行われた演説ですが、終始野党からヤジは酷かったですが、与党の援護射撃が聞こえなかったのは、ヤジに掻き消されたのか、与党内の支持が弱いのか、どちらでしょう?

その「国民」を守るの中で「最低賃金を2020年代に全国平均時給1500円に」と言うものがあります。現在、最低賃金の全国平均は時給1054円。これは、7月の厚生労働省の審議会で決着したものです。つまり、あと5年あまりでここから年90円近くのペースで時給を引き上げるというもので、これは率にして年約8%引き上げていくというもの。はたして現実的なのでしょうか?

以下は最低賃金の引き上げ率の推移ですが、今年度は過去最大となる時給にして50円の引き上げを決定していますが、直近9年だけで見ても年平均+2.8%、コロナ禍を例外として除いてもおおむね年+3%%程度です。それが、年+8%とは・・・?!日本経済のカギを握る個人消費の回復を重視するためには、物価上昇を上回る賃上げが欠かせないとして設定した金額のようですが果たして。

さて、その個人消費はなかなか上向きません。家計(部門)にお金が回らないから消費が増えないと言われて久しいわけですが、先月日銀が発表した2024年4〜6月期の資金循環統計(速報)からは、家計の資産状況が見えてきます。

6月末時点の家計の金融資産は前年同期比で+4.6%の2212兆円(3月末時点2186兆円)となったとのことで、6四半期連続で過去最高を更新しています。株高や円安が家計の金融資産残高を押し上げた模様で、投資信託は前年比+27.1%の128兆円、株式等は+15.6%の301兆円となり、それぞれ過去最高を更新しています。一方で、現預金も前年比+0.8%の1127兆円でした。構成比の内訳は、現預金が51.0%、株式等が13.6%、投信は5.8%、保険・年金等が24.6%でした。

この結果からは、株高と円安で名目の家計の金融資産は増え続けていることがわかります。しかし、名目で金融資産が増えても将来不安だからと消費を増やさない。それはなぜなのか?

たしかに、名目で円資産評価額が増えれば、購買力も上がっているように感じますが、同時に資産増に寄与した円安は物価高も招いており、実質の購買力は上がっておらず家計の消費が増えないのは当然でしょう。こういう状況もあり、物価上昇を上回る賃上げを目指すという政策は理にかなっているように見えますが、貯蓄と賃金がほぼ日本円の環境においては、円安が続く限り、消費を上向かせるのは容易ではないでしょう。さらに、その影響は、日本人の労働の価値や、円の賃金で買えるモノの量や質、などといった日本人の生活の豊かさに直結する部分に効いてきます。

石破内閣ではこれまでの岸田内閣が推し進めた「成長戦略を継承」し、貯蓄から投資への流れを加速させるとしていますが、新首相がこのあたりの実体経済にまで目配りができているのか、よく目を凝らしていきましょう。

さて、そんな中、先般の豪雨で被害に遭った能登半島に小泉選対委員長が乗り込み、週末には、石破首相も現地入り。先の大雨を、地域を限定しない「激甚災害(本激)」として指定する見込みとのこと。どうも選挙対策にしか見えませんが、支援の範囲や額が広がり地元の方の復旧に寄与するのであれば、応援していきたいところです。北陸地方では、冬に向けて厳しい季節がやってきますし、そうなる前にできるだけ整備を進められるようにと願うばかりです。

週末、西日本は30度超えの地域もあり、何とも気温の変動が激しい日が続きます。皆様、季節の変わり目、くれぐれも体に気を付けてお過ごしください!

The Gucci Post(Copyright 2024 グッチーポスト株式会社)
編集部お問合せ
メール
ブログ
X(旧Twitter)
Facebook
※本メルマガの内容は、筆者の個人的な見解であり、他のいかなる個人の見解を代表ないし代理するものではなく、他の個人または組織がその内容に対して責任を負うことはありません。
※本メルマガは投資を推奨するものではありません。


この記事の全文を読むには、メルマガを購読している必要があります。
ログインしてご確認ください。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。