2020/04/08 17:30 | 米国経済 | コメント(2)
米国雇用市場を占う経済統計
長期にわたり好調だった米国経済が、新型コロナウイルスの影響をどの程度受けるのかが注目されています。
米国のGDPの70%が個人消費ということを考えると、当然それに直結する、米国の雇用市場に対する影響は重要です。その状況をあらわす米国の雇用関連の統計結果には、ここ数週間、過去最高の水準まで悪化したものも多く、注目を集めています。
米国の雇用関連の統計として思い浮かぶのは、毎月の労働省労働統計局(BLS;Bureau of Labor Statistics )が発表する「雇用統計」です。
しかし、今回の新型コロナウイルスが想定を超えたスピードで経済に波及していることで、毎週、米国労働省(DOL;Department of Labor)が発表する「新規失業保険申請件数」(Initial Jobless Claims)は普段にもまして注目を集めています。
この「新規失業保険申請件数」に関しては、ぐっちーさんもその有効性を幾度となく説いており、メルマガではお馴染みの定点観測として取り上げることも多いため読者の方はご存知かと思います。
まず、この新規失業保険申請件数を取り上げる理由は、先行指標としては十分に機能することは証明されており、雇用市場の突発的な変化を見るにはうってつけの数字だということです。
全体の様子を見るためには、平準化するために4か月平均などでみる必要がありますが、突発事故は把握できるのでその意味では、今回のような新型コロナウイルスの影響を見るうえでは極めて有意義な観察項目といえます。
日本と違い米国の場合、自分で仕事を辞めておいて失業保険を申請するというケースはほとんどありません。要するに、先日のような過去最高水準の失業保険申請者数が増えたということは、本人の意思と関係なく仕事がストップした、またはクビになった、ということをあらわしています。
これは雇用主である経営者が将来的にシリアスだと考えているわけで、これが長く続く、ということは雇用市場に深刻な影響を及ぼします。ゆくゆくは、失業保険期間が切れてしまったような長期失業者(通常は26週で切れる)の増加といった問題につながることになるため、新たなレイオフなどの不穏な動きはないか、というような点を見るうえで「新規失業保険申請件数」の定点観測は地道ですが、重要といえます。
前回のメルマガのコメント欄で、ここにきて、なぜある時点での「新規失業保険申請件数」が議論されるのかという質問がありました。今回のような先の見えない新型コロナウイルスという未知の感染症リスクから派生する米国経済のリスクを推し量る上では、先行指標としての重要性がお分かりいただけるのではないでしょうか。
一方で、失業保険の「受給者数」がなぜ議論されないのか、というご質問もありましたのでふれておきます。実は今回の新規失業保険申請件数の発表の中でも、「失業保険継続受給者数」として発表されています。
結果は、失業保険継続受給者数は3月21日までの1週間で302万9千人となり、前週から124万5千人の急増。これまでの最高水準は2013年7月6日に記録した307万9千人で、今回の水準はそれ以来の高水準。
ということで、こちらも、記録的な悪化をしているわけですが、ご覧いただいてお分かりの通り、データが「新規失業保険申請件数」(3月28日終了週分)に対し一週間遅れとなっています。したがって、重要な数字ではあるものの、先行指標ととしてみるうえでは物足りないということです。
また、「継続受給者」が失業保険期間が切れて「長期失業者」に移行し、労働市場から新たに退出させられているような動きは重要で、それは雇用統計で観察していくということになります。
いずれにいたしましても、今回の新型コロナウイルスに関しては、日本も同様に経済に対する影響が長期化するリスクが懸念されています。
長期化しないとなれば、わざわざ失業保険申請などせずに、次の仕事を見つければいいのであって、長期化しそうだという見通しが強まればそれだけ失業保険申請者が増えることになりますので、ここは注意が必要で「新規失業保険申請件数」に注目が集まるのは当然と言えます。
この指標は、毎週日本時間木曜日21:30に発表になりますので、今週は4/9です。
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2 comments on “米国雇用市場を占う経済統計”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
丁寧にご解説いただきありがとうございました。
失業保険継続受給者数は毎週報告されていること、ただしその報告値は新規失業保険申請件数よりも一週間分遅いこと、これらには高い相関性があることなど大変勉強になりました。
報告書の中には過去一年分のチャートやデータが記載されていることも恥ずかしながら本日初めて知り、改めて原典に当たることの大切さを認識いたしました。
世界中の中央銀行が日銀のマネをしますね。これまで日銀の金を (多分ですよ、よく理解していないが)日本国内で使わずに、外国が使てきたが、もう日銀が出せないので、同じことヲ自国の中央銀行がすることになったようですね。
中国ウイルスはきっかけに過ぎないとみている。
いいか悪いかは別として、日銀の先進性がしめされたのではないか?
その先は何が起きるか?
大戦争だとみている。一面現在はその前哨戦とみてもいいのでは。
現在の通貨は実質MMT理論による通貨に過ぎないと思っているが、間違いでしょうか。あれは正貨に替える必要がなく,又その正貨が何かは別として、それがあるとした仮想によってなりたっていたが、ここへきてその仮想を正貨に替える必要が生じたわけで、果たしてそれが回収できるか。
政府中央銀行はどのようにして回収するか?
金融機関の倒産の時どのように処理されるかを見ればある程度分かるが、それによる社会の混乱についてはわからない。
これが問題となる。見たところ。威張って書くが政府はいまだ事態を把握していないようですね。
来年の財政を考えていないから。考えたなら即座にすることがあるとおもうがなあ。