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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/03/25 00:00  | by Konan |  コメント(0)

Vol.185: 今更ながら六重苦(その2)


前回に続き六重苦について。2回目の今回は、電力、環境対応に関し感想を記そうと思います。前回の円高に比べとても複雑なテーマと感じます。

産業界の主張自体はとてもシンプルです。まず、原発の稼働が大飯を除き停止するような状況では、いつ電力不足、最悪の場合ブラックアウトが生じるか不安である。そんな中で国内に産業を維持することは難しい。また、原発廃止の方向になると、火力発電に頼らざるを得ないが、電力料金引上げという直接の負担に止まらず、原発依存度引上げにより何とか対応しようとしていた温室効果ガス削減負担が、重く産業界にのしかかってくる。とても耐えきれない。何とかして欲しい、という感じと思います。振り返ると、鳩山総理の時代、軽々に温室効果ガス25%削減を謳い、菅内閣で原発依存度を引き上げないととてもクリア出来ないと気付き、しかし福島第一で悲惨な事故が起き、脱原発に舵を切り、そうした迷走に産業界が腹を立て、自民党政権復活を切に願った構図とも言えます。

このように産業界の主張はとてもシンプルで分かりやすいのですが、この主張に乗るかどうか考えると、途端に悩ましくなります。冒頭「複雑なテーマ」と書いたのはこうした理由からのものです。まず、このコーナーでも何度か書いたように、脱原発を目指すか否か、そもそも難問です。私は「依存度ゼロとも25%とも決めきれないので、中間の15%支持としか言えない」とかつて白状しました。その気持ちに変わりはありません。敦賀原発が仮に活断層の上に乗っていれば、再稼働は止めて欲しいと思います。他方、あの危機を乗り越えた女川をすぐに廃炉すべきかと問われると、そうでないように思います。四国では伊方の存続にサポートが多いとも聞きます。仮にそうであれば、四国4県の決断として伊方を残すことがあっても良いと思います。いずれにしても、分裂した未来の党のような単純な脱(卒)原発でも、産業界が主張するような依存度25%維持でもないような気がします。

この問題の2つ目の難しさは、環境問題を無視して良いとはさすがに言い難いことです。地球温暖化論、かつてゴア元副大統領が一世を風靡した「不都合な真実」論がどこまで正しいか、確信は持てません。他方、私の世代のように、水俣病や光化学スモッグなどの問題と並走して生きてきた世代にとり、「良い環境を維持したい」という切実な思いを切り捨てる勇気は持てません。実際、中国の大気汚染問題には多くの人が懸念を感じていると思います。鳩山元総理の温室効果ガス削減の主張は例によって受け狙いだったと思いますが、他方、何らかの行動が必要なことも確かと思います。

第3に、現実的な視点もあります。例えば、環境問題は中国への圧力の点で有力な手段となり得ます。中国が環境も意識し安定的な成長経路に移行して行くこと、あるいは、日本企業がその過程で環境技術を売り込むことは、日本にとって悪い話とは限りません。また、日本車が世界を席捲するに至ったひとつの背景は、そのエコ対応力の凄さです。環境対応の負荷が世界に及ぶと、日本の製品や技術を普及していく面で却って有利に運ぶと考える余地もあるかもしれません。

更に、現在世界ではシェールガス革命が進行しています。シェールガス・オイルの石炭との価格競争力が劇的に改善し、石炭を代替すれば、二酸化炭素削減の有力な手段となり得ます。また、この革命に伴う燃料価格全般の低下は、わが国の産業界が嫌っていた原発依存度引下げや環境対応負荷に伴う負担を緩和する効果も持ち得ます。

とりとめもない文章になってしまいました。産業界のシンプルな主張は、迷走した民主党政権のエネルギー政策への批判として理解し得るものです。他方、危険な原発の稼働を止めたり、環境問題への対応を何がしか進めていくことも不可避です。結局のところ、中間的で現実的な解を見付けていかざるを得ないし、その中で、産業界としても技術面での貢献を行う余地があり、そのことが自らにも良い意味で返ってくる可能性を見出していくしかない、ということでしょうか。

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