2012/10/29 00:00 | by Konan | コメント(2)
Vol.164: マイナス金利?
世間は石原慎太郎都知事の辞職・国政進出の話題で盛り上がりましたが、今回はその話題は無視して、久し振りに金融政策ネタを書いてみようと思います。金融政策の世界ではよく「ゼロ金利制約」という言葉が用いられます。例えば、インフレに直面すれば、金利を無限大に引き上げることが出来るので(この表現、数学的に不正確かもしれませんが、感覚的には理解頂けると思います)、その対応は比較的容易だが、デフレの場合、金利はゼロまでしか引き下げることが出来ないので、対応に限界が生じてしまう(従ってデフレに陥らないことが大事)、といった文脈です。
ところが、実際の市場では、欧州危機の中で信用力の高い商品(例えばドイツ国債)に資金が集中する結果、市場金利がマイナスになってしまう現象が、時折見られるようになりました。また、金融政策にマイナス金利を採用する動きも出始めているとの報道も目にします。
金融政策の対象となる政策金利は、オーバーナイト(一晩だけお金を借りる際の金利)や精々一週間と言ったとても短い金利なので、仮に中央銀行が実際にマイナス金利政策を始めたとしても、長めの金利までマイナスになる訳ではありません。ただ、これまでゼロ金利制約が言われ続けた中で、仮にマイナス金利が実現するとすれば大きなブレークスルーであり、デフレ問題の克服に光明が見える可能性もあります。
単純に考えれば、金利を下げれば下げるほど景気を支え物価を上げる効果があるとすれば、それをプラス金利の領域で止める必要は無く、マイナス金利に突入させれば、政策効果が大きくなるようにも思えます。お金を借りる立場を考えるとより明確です。借金すると利息を払うことが常識です。マイナス金利では、借金すると利息を「もらう」ことになります。こんなに美味しい話しはありません。企業は借金を増やして設備投資を行い、個人は住宅ローンを借りて家を建てるようになります。景気刺激効果は抜群です(ここでは、議論を分かりやすくするために、マイナス金利政策により、借入金利のような長めの金利もマイナスになってしまうと仮定して話しを進めています)。
ただ、私自身、ここまで議論が単純か自信を持てません。今度は預金者を考えてみます。これまでは預金をすれば何がしか利息をもらえました。マイナス金利の下では預金をすると銀行に利息を取られてしまいます。自衛策は預金を引き出し、たんす預金することです。そうであれば利息を取られることはありません。銀行から見ると預金取り付けが生じることになります。企業や個人に金を貸すどころか、自らの倒産を心配する必要すら出てきます。要は金融システムの崩壊です。
これまでプラス金利が常識だったため、マイナス金利に対する想像力が欠落しているだけで、実際にはこうした心配は杞憂で、バラ色の世界が待っているのかもしれません。あるいは、私の心配には相応の根拠があり、「ゼロ金利制約」は歴史の知恵に基づく根拠ある考え方なのかもしれません。私にはこれ以上書く力はありません。学界や中央銀行界でこうした議論が深められ、私たち素人にも分かりやすく説明してもらえることを期待しています。
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2 comments on “Vol.164: マイナス金利?”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
誰でも・・
考えるのは・・そのマイナス金利・・負担するのは・・誰・?
最終貸し手・・中銀・?
経済上向けば・・増税になる・・最終利益者・・政府・?
最終利益者・・国民なら・・国民・?
エイズウイルス撲滅の新薬・・劇薬・・毒薬・?
副作用・?
人体実験・・臨床中・・・(笑)
まったく異なる話題で申し訳ありません.
待遇悪化 東電のコスト削減も影響か(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20121105/2010_costcut.html
除染手当、作業員に渡らず 業者が「中抜き」か 福島(朝日)
http://www.asahi.com/national/update/1105/TKY201211040400.html
本来,復興や原発処理に使われなければならないお金が,別のことに使われたり,中抜きされていたりの報道を見ることがあり,不快に感じています.
復興に携わる労働者,とくに原発処理に関わる作業員の方への手当は,「特別減税」という形で行うことはできないものなのでしょうか.
素人考えですが,これなら一番ダイレクトに本人へお金が渡る仕組みではないか,と思います.