2011/08/08 00:00 | by Konan | コメント(3)
Vol.100: 二重ローン問題
問題設定を単純にするために、「住宅ローンを借りて家を建てた方が、借金がまだかなり残った段階で、大震災により家を失ってしまった。地震保険にも加入していなかった」というケースを取り上げてみます。
両極端の答えは、「すべて自己責任。何ら支援は行わない」と「借金を棒引きし、新たな家も無償で提供する」ということになります。この両極端の間のどこが適切な答えかという問題設定になると思います。
次に債権放棄に伴い貸し手には損失が生じます。それが収益や自己資本の範囲でカバーできれば問題ありませんが、仮に経営に問題が生じるとすれば、改正された金融機能強化法を用い、国から資本注入を受けることになります。
更に、新しい家を建てるための住宅ローンの融資が必要ですが、従前のローン返済の免除を受けたことが新たな融資を受ける障害とならない仕組みが必要ですし、公的支援(公的金融機関による低利融資、地公体による保証等)により、その条件を緩やかにすることが考えられます。
以上のように、貸し手サイドの問題は比較的簡単に整理できますし、現在進められている二重ローン対応も、基本的にこうした考え方に沿っています。
1.自己責任
過去のローンの解消だけで十分な救済である。過去の震災や偽装構造計算書問題等の事例との対比でみても、これ以上の対応はかえって不公平である。
2.救済
被災地域の方は、地域経済の崩壊に直面しており、新たな借金返済の原資となる収入を安定的に得ることは極めて難しい。従って、新たな家を無償で提供するべきである。
3.中間的考え方
個々人の事情により返済能力も異なる。新たな家を震災直前の住宅ローン残高と同額の新規借入れで購入する(差額は支援)ことを基本に、深刻な事例では支援額を増やし、逆に想定より良い方向で返済能力が回復すれば、返済額を増やす調整を行う。
個人的には3.のような考え方が適当に思います。しかし、1、2それぞれの立場から見ると「甘すぎ」「厳しすぎ」との批判が生じます。また、どこまで個々の事情に応じたきめ細かい対応が可能か、実務的にも難点があります。
このように、二重ローン問題は本当に難しい問題で、これまで取り上げることをためらっていたのはこのためです。今回も結局十分整理することができませんでした。様々な価値観がぶつかり得る問題を官だけで解決することが難しいという典型例かもしれません。こうした問題こそ政治の決断が求められます。政治がこうした決断を的確に行い得る状況に早く復してほしいと思います。
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3 comments on “Vol.100: 二重ローン問題”
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正に・・
政治の問題・・
しかし・・
政治家は・・
行政の問題に・・
二重の問題・・・
安全な土地に住まいを作る
それは自己責任じゃ?
イッパイ住んでるし、良いと思った…
そんな子供じみた話じゃ無いでしょう?
という視点は、二重ローン問題解決の条件として、とても重要だと思います。 今回の大震災はもとより、霧島も300年ぶりに噴火しましたし、日本全体の地殻活動が何年も前から活発になっていると感じているのは、私だけではないような気がします。 せっかく軌道に乗せようとしても、将来に不安があれば、投入する資金や労力、時間が無駄になってしまうおそれがありますので、液状化や活断層等々、全国的なマップの作成が急務なのではないでしょうか。
現在、ロンドンで起きた暴動が、イギリス各地に飛び火しているようですが、世界情勢がこのように不安定だと、来年のロンドン・オリンピックも心配になってきますね。 東京がオリンピック開催地として立候補するというのも、現実的でないような気がします。 もし、予想されている地震が起きたら、開催が危ぶまれるだけでなく、収拾がつかなくなる可能性があるので、リスクが大きすぎますよね。
それと「国連」。 日本は、大震災からの復興という大きな課題がありますので、国連活動は、これまでのようにはいかないんじゃないでしょうか。 これまでも、日本の立場以上に、日本は役割を果たしてきましたので、しばらく休止してもよいと思います。