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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/07/25 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.98: G-SIFI


前にこのコーナーで、SIFI問題(Systemically Important Financial Institutions=システム上重要な金融機関)を取り上げたことがあります。その問題の検討が大分進んだようなので、簡単に紹介します。1月前ですが、6月25日の総裁・監督機関長官会合で内容が決定し、今般市中協議が開始されました。

おさらいをすると、金融危機の反省を踏まえ、銀行に対する規制強化の検討が進められ、昨年「バーゼル3」と呼ばれる強化策がまとまりました。銀行に対する自己資本比率規制強化や流動性比率・レバレッジ比率規制導入がその骨子で、2013年から2019年にかけ段階的に導入されます。この規制強化は、海外活動を行う全ての銀行を対象としたものですが(日本で言えば、海外支店を1つしか持たない地銀も対象になります)、「この規制強化だけでは不十分」ということで、とくにSIFIに絞り、さらに厳しい規制を上乗せする議論が続いてきたわけです。今回の国際金融危機では、TBTF(Too Big To Fail=大きすぎて潰せない)ということで、欧米の大銀行が政府により救済されました。そうした銀行が再び危機に陥り政府救済が必要となる事態を避けるため、これらに対する自己資本比率規制を普通の銀行規制に上乗せする形で強化しようという考え方です。
今回の結論では、「どの銀行がG-SIFIか」(GはGlobalを指し、SIFIの中でもとくに世界的に影響が大きい銀行を意味します)具体的な銀行名は明らかにされていませんが、「どうやってG-SIFIかどうか判断するか」というG-SIFIの決め方と、「G-SIFIになったらどの程度自己資本比率規制が上乗せされるか」という点が定まりました。具体的には、世界から28の銀行がG-SIFIとして選ばれ、G-SIFIさの度合いに応じ、2.5%(最大)から1.0%(最小)の上乗せが行われることになっています。1%は小さくみえますが、G-SIFIともなると資産規模は100兆円を超えてくるので、1兆円の増資を意味しますから、結構大変です。JPモルガンチェースをはじめ世界有力行が反対姿勢を示すことも理解できないではありません。

金融危機が起きると大変な影響が出ます。他方、危機を防ぐため規制を強化すればするほど、平常時における銀行活動に制約がかかる結果、経済成長にマイナスの影響が出てしまいます。この2つのバランスをどう図ればよいか、本当に難しい問題です。一方で、「危機を起こさない」ことはとても大事で、そのためには規制をある程度強くせざるを得ないと思います。他方、危機の原因を銀行行動だけに求めることも不公平で、金融政策の失敗のような点がむしろ重大かもしれません。この点では、規制強化一辺倒では問題は解決できないことも事実と思います。

本当に悩ましい問題です。

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One comment on “Vol.98: G-SIFI
  1. ベルドン より
    G-SIFI

    倫理が失われていては・・
    いかな機構も・・システムも・・
    上手く動かないのでは・・・?

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