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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/05/16 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.88: 日銀展望レポート


今回は、4月28日に公表された日銀展望レポートの紹介です。このコーナーでも何度か取り上げてきましたが、当レポートの位置付けを説明すると、毎年4月末と10月末の2回公表される、日銀のもっとも重要なレポートです。先々2年間ほどの経済・物価の見通しや金融政策運営の基本的考え方が示されます。今回は、とくに大震災後初めての展望レポートとなり、世間からの注目もひと際高くなりました。また、この日の会合で、当面の政策運営に関し西村副総裁という執行部の一員から更なる緩和策が提案され、否決されたことでも注目を集めました。

このレポートは、基本的見解と呼ばれる部分だけとっても20頁近く、さらに翌日に公表される背景説明資料は、図表を含めると大部です。このため、初心者には「どこを読めばよいか」分かりづらくなっています。ただ、レポートの中には金融政策を決定する政策委員会メンバー9人の経済・物価見通しの中心値やレンジが数字として示された部分があり、日銀の意図に反してしまうかもしれませんが、私はこの部分がもっとも単純に日銀の見方を示していると受け止めています。

今回のレポートをみると、実質経済成長率については、2010年度+2.8%成長後、2011年度について1月時点(展望レポートの中間時点の1月、7月にミニ展望が行われます)での+1.6%成長見通しが大きく下方修正され、+0.6%成長が見込まれました。2012年度は+2.9%成長と急回復が見込まれています。物価について、消費者物価指数の見通しをみると、2010年度マイナス0.3%下落後、2011、12年度連続で+0.7%上昇が見込まれています。

大震災の影響については、その不確実性の大きさが強調され、また、「短期でみると供給能力の制約になる、しかしそれを越えると復興需要が成長をけん引する、中長期的に大震災が日本の成長期待にどのような影響を与えるか要注目」と、時間の経過により影響が異なるとの趣旨も記載されています。ただ、私はむしろ今回の見通しは相当強気と感じました。ひとつには、基本的に大震災の供給制約問題について、今年度半ば(9、10月頃)には落ち着くとみていること、もうひとつは、「大震災は基本的に国内の供給ショックの問題であり、海外需要の強さに影響はない。この点はリーマン危機直後と違いずっとマシ」といったトーンが色濃く出ていることがとくに印象的でした。

紹介はこの程度にとどめます。私もこのレポートのように日本経済が年度半ばには問題を克服し、順調な成長パスに戻ることを願っています。ただ、先週取り上げた欧州の問題の不透明さ、また、大震災が予想以上に民間企業の投資判断に影響を与える可能性があることなど、慎重に下振れリスクを意識する必要があるとも感じているところです。

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One comment on “Vol.88: 日銀展望レポート
  1. ベルドン より
    レポート

    一万円札を・・
    刷りまくるぞ・・
    と腕まくりした以上・・
    心配なのは・・
    印刷機の故障ではありませんか・・?!

    それとも・・
    日銀展望に合わせられる・・宰相出現の願望か・・?!

    日銀で・・讃美歌を歌いましょう・・・!

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