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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/05/09 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.87 : 2つの国債問題


大震災関連の記述を続けてきましたが、この間、国際金融資本市場では、ぐっちーや前橋さんが取り上げられたように、重要な事件が2つ発生しました。1つはポルトガルによる支援要請、もうひとつは米国債格下げ騒ぎです。お二人の記事に付け加えることは余りないのですが(この分野、ぐっちー、前橋の二枚看板を持つGucci Postの力は凄いと思います!)、感想を記したいと思います。
前者については、その後フィンランドの選挙でEUノーの意思表示が出たことも受け、ギリシア国債のスプレッドが再上昇するなど、欧州周縁国のソブリン問題に解決の兆しはなかなか見えません。これまで何度か書いたように、ユーロはとても難しい仕組みです。明らかな違いを持つ多くの加盟国の間で通貨が統一されることは、為替相場変動を通じた経済調整の道を閉ざします。また、欧州中央銀行が決定する一本の政策金利しか存在しないことは、その金利水準対比で景気が良い国の更なる拡張と、悪い国の更なる悪化という形で、国ごとの違いを拡大する効果を持ちます。そのうえ財政は統一されていないので、景気が良い国から悪い国への所得支援もできません。

この難しさを打破するためには、統一を諦めるか、財政の統一にまで踏み込むか、何れかの方向しかありません。今回のソブリン危機を受け、共通の支援の枠組みを設ける形で後者の方向に一歩踏み出した訳ですが、「本当に助けてくれるのか」との疑念が生じるたびに、欧州不安が再燃する構図が続きます。非欧州人からみれば統一を諦める方が簡単(例えばドイツがマルクを復活させると、マルク高、ユーロ安になり、ユーロ残留諸国がドイツへの輸出増により景気を回復させる道筋が生まれます)とも思いますが、第二次世界大戦後、統一を最大の価値として進めてきた欧州人からみると受け入れられないのでしょう。このため、欧州問題は長期にわたり注視し続けるしかないと思います。

米国債格下げについては、ぐっちー、前橋さんが口を揃えて「格付会社の終焉」と書かれたことがとても面白かったです。確かに最大の格付需要家である米国からみると「何なんだ」とみえるのかもしれませんね。また、基軸通貨の格下げは何を意味するのかという問題提起も重要と感じました。

私は日本国債について少なくともぐっちーより悲観的ですが、米ドル、米国債については、ドルがポンドに代わったような世代交代はいつか来るにせよ、当面、ユーロにしても、人民元にしても、日本円にしても対抗馬となることは難しく、結局弱含みながらも持ちこたえると考えています。その意味で、格付機関の気持ちは分かるが、あまり市場に影響はもたらさないだろうと読んでいます。

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One comment on “Vol.87 : 2つの国債問題
  1. ベルドン より
    問題・・

    ECは・・
    第二次世界大戦の結果を・・凝縮させた代価・・
    堅持する為に・・しがみつくEC諸国を・・引きずりながら・・ゴールを目指せる・・総力が・・ドイツに湧いてこなければ・・破綻するような問題は起こらない・・のでは・・?
    英がECに加盟しなかった・・解答が・・その時・・顕れるのでは・??

    格付会社の終焉・・
    何時なのか・が・難しい・・・

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