プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2010/11/22 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.63: 国際金融規制


今回は、10日前にソウルで行われたG20サミットでの論点のひとつとなった、金融規制について。

復習になりますが、今回の世界的な金融危機の反省を踏まえ、「2度と危機を起こさない」という覚悟で、銀行に対する規制強化の議論が進んできました。そして、9月には銀行に対する最低自己資本比率規制の強化や流動性比率規制の導入などを柱とする方策が決定・公表され、今回のサミットで承認を受けました。規制強化を急激に進めると景気に悪影響が及びかねないことから、2019年まで時間をかけて規制が強化されていきます。

この話しは、国際的に活動する全ての銀行を対象としたものですが、最近、「システミックに重要な金融機関をどう扱うか」という論点が急浮上してきました。日本でも、メガバンクの株価がその話題で上下するほどです。

この「システミックに重要な金融機関」は、英語ではSystemically Important Financial Institutions、略してSIFIsと呼ばれます。例えば今回の危機では、米国において200を超える地方金融機関が破綻していますが、それで国際金融システムが混乱を来たした訳ではありません。しかし、リーマン1社が破綻しただけで、国際金融システムは混乱を極めた訳です。このリーマンのように「大きくて複雑で国際金融システムとの連関が深い金融機関」がSIFIsです。SIFIsと対の言葉がtoo big to fail(TBTF。大き過ぎて潰せない)。SIFIsは「当局には自分を潰す勇気は無いだろう」と開き直るモラルハザードの問題を抱えており、それを何とかしなければというのが、SIFIs問題の根幹です。

SIFIs問題、あるいはTBTF問題を解決する一番直截な手段は、金融機関を小さくするか、SIFIsでも潰せるような破綻処理制度を整備するか、何れかです。英語に即せば、bigでなくする(例えば投資業務を切り離す、会社を分割する)、ないしfailできるようにする訳ですが、前者はさすがに行き過ぎ、後者は難しいということで、結局のところ今回のサミットで打ち出された方策は、「SIFIsの中でもとくに国際的な影響が大きいGlobal SIFIs(G-SIFIs)に追加的に資本を持たせよう」という考え方です。最低基準に更に上乗せした資本を持たせ、潰れないようにしてしまおうというものです。

この考え方は現実的ですし一理あります。ただ、銀行にとってみると、最低基準達成だけでも相当な増資が必要なのに、追加が必要な訳ですから、なかなかきついものがありますし、株価にも影響してきます。例えば日本の3メガ銀行はG-SIFIsなのかどうか次第で、株価は相当違ってきます。それが来年半ばまでに決定されるというスケジュールも今回示されました。日本をはじめ銀行株に投資されている方は、是非この情報を追い続けることをお勧めします。

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One comment on “Vol.63: 国際金融規制
  1. ぺルドン より
    G20

    善き隣人同盟・・
    テーブルの下で・・足を蹴りあう関係・・
    蹴りあいながら・・
    追加資本・・
    対処療法・・外科手術経験なし・・先送りは・・官僚の知恵・・G20・・

    G-SIFIs・・更に巨大に・・生き残る道・・
    生存本能であります・・・

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