2010/10/04 00:00 | by Konan | コメント(2)
Vol.56: 日本振興銀行破綻
Vol.53で「当面マイペースで」と書きました。ただ、民主党代表選挙、尖閣諸島問題、為替介入、バーゼル規制決定など様々なことが起きました。また、定例物として日銀の主要レポートを取り上げる時期にもなります。このため、「時差」は大きくなりますが、当面、週1回ペースを維持しようと思います。
今回は、そうした中で日本振興銀行の破綻について感想を記したいと思います。
このコーナーを書き始めてすぐの頃、預金保険について取り上げました。昨年11月2日のVol.8です。簡単にまとめると、預金保険は、銀行が経営破たんしても、預金者は一定金額(日本の場合1人1千万円まで)まで保護されるという制度です。1千万円を越える部分は、破綻銀行の債務超過の状況に応じ支払われます。日本では、預金保険制度が出来た昭和46年以降、全ての預金取扱金融機関の破綻処理において、公的資金も用いながら1千万円を越える部分まで全額保護してきました。バブル崩壊後の金融・経済危機の中、預金切捨てを行うと、信用不安が増殖し、社会不安が生じ、金融・経済が大混乱に陥ってしまう恐れがあったためです。今回、ようやく、制度の本則に戻り、預金切捨てが行われた訳です。
今回の決定の説明をみると、振興銀行が如何に特殊な銀行であるか、強調されています。ご案内のように旧経営陣は全員逮捕されましたし、この銀行は定期預金しか扱わず、決済サービスを全く提供していません。このように「特異」な存在なので、預金切捨てを行ったとしても、他の「普通」の銀行には波及しないだろうという一種の「安心感」の下、ペイオフに踏み切れたのではないかと思います。実際、報道等をみても、殆ど混乱や波及はないようです。
ただ、冷静に考えてみると、1千万円以上の預金を1つの金融機関に預けている人にとり、「この金融機関は大丈夫か?」と改めて問い直す機会が与えられたとも言えます。また、そういう「見つめ直し」行動が広がると、静かな預金流出の事態が全く起きないとも言い切れないと思います。その意味で、もう少し長い目で破綻、預金切捨ての影響をみていく必要があると思います。
もうひとつは、中小企業金融の問題。振興銀行は、自ら格好良くビジネスモデルを打ち出したものの、結局自力で中小企業金融を開拓する実力が無く、他の事業金融会社の融資を買うという、ある種「汗をかかない」行動に出ました。ところが、売主の事業金融会社に騙され(その会社は融資を振興銀行のほか、他の金融機関に二重に売却していました)、結果的にアウトになったわけです。
この問題、日本では袋小路に入ってしまいます。中小企業のようにミドルリスク市場に入るためには、信用コストに見合った金利をとる必要があります。しかし、亀井さんではないですが、中小企業から高い金利をとることは、日本ではタブーです。このためペイしないから貸さない、という悪循環に陥ります。要は「少し金利が高くても、借りられるだけでまずは良い。そこで経営が安定すれば、それに見合い金利が下がる。それをインセンティブに頑張る」という借手側の行動がない限り、問題は解決しません。
この問題、考えてもなかなか出口がみえません。「それが日本なのだ」と諦めるしかないのか、画期的な出口があるのか、考え続けたいと思います。
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2 comments on “Vol.56: 日本振興銀行破綻”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
画期的な出口・・
それが・・
分かれば・・首相の経済顧問・・
財務省・・金融庁・・を・・顎で・・
が
参考・・?
聖堂騎士団・・
金融経営・・エルサレムは一握り・・名前も書けない・・騎士の方々・・
何故・・簿記が・・騎士に出来たのか・・経営・金融・・各国の財務大臣を・・兼ねられたのか・・謎が・・謎・・
ヒントが・・出口が・・あるのか・?・・・
振興銀行は確かに特殊ケースではあったので結果ペイオフは大きな問題を引き起こさずに済みました。但し、他の決済性預金を扱う金融機関については慎重であるべきでしょう。特に日本では振替等の機能が高度に発達していることも考慮すべきと思われます。
ペイオフについては利息保護の問題(高い金利を保護するべきか)や相殺(借り手の相殺をどこまで保護するか)は再考すべき問題のように思います。
利息制限法と最高裁判決については一律に金利で制限するのは問題でしょう。少額貸金についてはコストを勘案するべきでしょう。一方で明らかに暴利となるようなケースは返済総額が当初金額に比して妥当でない(何倍以上にもなるようなケース)ように思われます。
日本の金融機関はリスクテイク能力(審査)が低く、小規模金融に対する見識はほとんどない一方、借り手のリテラシーも低い(エクイティ知識や返済意識等)ので、中小企業金融は二重に問題があると思われます。どちらかに偏った議論ではなく、あるべき姿(金融理論に基づいたリスク中立的世界やおかしなダブルスタンダードも双方ともことなると考えていますので念のため)を真摯に考えることがまず必要かと思います。
概して日本では既存の金融機関や過剰な規制に問題があるように思われます。